2020年4月5日
この記事のカテゴリー : 延命工法
著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大
マンションの管理組合や住民の方にとって、業者から出された配管工事の内容が、自分たちのマンションに適したものか?見積り額は高いのか妥当なのか?
それを判断するのは、大変難しいことではないでしょうか。
このページでは、多くの方が悩まれる配管交換や延命工法の違いや金額についてみていきましょう。
工法について見ていく前に、まず知っていただきたいのが配管の汚れについてです。実際に配管はどれくらい汚れて、劣化しているかご存じでしょうか?経年による配管内の劣化状況を内視鏡カメラで撮影しました。下の薄緑色の枠をクリックしていただくと、状況事例をご覧いただけます。
配管交換と延命工法の費用面については、それぞれ以下をご覧ください。
・配管交換の費用面
⇒費用比較
⇒お風呂の水道管を全て交換すると いくらかかる?
⇒マンションの受水槽を撤去し直結増圧ポンプに変更すべきかどうかの留意点
・延命工法の費用面
⇒マンションの配管の延命工法の費用と保証内容を比較してみました
配管を交換すべきかどうかは、
・築年数
・配管の材質
・修繕積立金の過不足状況
・何年住み続けるかの方針
・専有部の範囲が管理規約上どう規定されているか
⇒マンションの専有部の配管を修繕積立金で交換するには
⇒築25年以上のマンションの配管の交換工事の優先度は共用部と専有部のどちらが高いか?
といった要件で、かなり変わってきます。
交換するにしても、いつ頃、行えばいいのか、サビだけでなく、配管の洗浄費用をいかにおさえるべきか等、総合的に判断していく必要があります。
築20年あたりから理事会として、配管交換の検討を始めるところが多いので、こちらをご参考にしてください。
⇒築20年マンション 配管保全の費用比較 3つの保全方法で概算してみました
ある程度、築年数が経ったら、配管は全面的な交換工事を行うのが理想的といえます。
ただし、修繕積立金不足や工期の長さ、専有部での作業があることから、住民の合意を得るのが難しく、交換工事は2度も3度も行えないのが現状です。そこで、延命工法を併せて取り入れて、配管を長持ちさせるための配管保全を図ることは、大変有効な手段になるといえるでしょう。
延命工法には、ライニング工法、外部電極法、磁気式、セラミック式、脱気式などたくさんの種類があります。種類が多くて、それぞれの違いや働きもはっきりわからず、「提案された工法は現状にマッチしているのだろうか?」と不安が募ります。こういったお悩みは築年数を問わず、どの管理組合でもお持ちです。
では、実際に配管の延命工法を選ぶ場合ですが、給水管ではサビだけでなく、スライム(ヌメリ)やスケール(カルキ)に対する除去効果を見ることが重要です。また、排水管では高圧洗浄の頻度が削減できるかどうか、配管内の詰まりを抑制できるかどうかを検討する必要があります。
下の表は、これらのポイントを踏まえて整理した延命工法の概要一覧です。なお、それぞれの工法の原理については、こちらをご覧ください。⇒マンションの給排水管の代表的な工法の原理と留意点
ライニング工法
まずはじめにライニング工法ですが、更生工事といわれています。下のイメージ図のように、サビを研磨剤でこそぎ落として、むき出しになった鉄管と水が接触しないように、配管内にエポキシ樹脂を塗布する工法です。
給水管と排水管にそれぞれ別に施工する必要があります。
エポキシ樹脂は生成方法によっては、環境ホルモン(ビスフェノールA)が溶出される懸念(欧州化学物質庁、18の高懸念物質の認可対象物質リストへの収載を勧告)があり、給水管に対しては、あまり実施されなくなっています。
健康には影響がないという検証結果もあるので、給水管への施工を検討されるのであれば、健康上の問題についてよくご確認ください。
排水管に対しては、施工直後は新品同様にサビや詰まりが改善されます。年月が経過すると塗布した樹脂がはがれて、鉄管と水が接触する部分が腐食し始めます。
ライニング工法の保証期間は10~15年のため、施工後、マンションに住み続ける居住期間と保証期間が同程度であれば、有効な工法といえます。保証期間後も住み続ける場合は、再度、何らかの延命対策が必要になります。長く住み続ける場合には、ライニングでなく配管を交換したほうが合計費用が安くなる場合もあります。なお、施工後に、5年間は高圧洗浄不要としている場合もありますが、配管内の詰まりを抑制できるわけではないので、実際には高圧洗浄の頻度を減らすことは難しいといえます。
外部電源法
外部電源法は配管に防食電流を供給して腐食を防止する工法です。給水管を半永久的に保全できる工法といえます。施工後にサビが徐々に剥離するため、施工前にクエン酸洗浄を行うことが多いです。排水管への効果はないため、改めて排水管向けの延命工法を検討する必要があります。
15年~30年程度で、電流を配管内に流すための消耗品(写真参照)を交換する必要があります。
オゾン法
オゾン洗浄ともいわれ、主に給水管の保全工法です。給水管に付着した有機物や水溶性の赤さびをオゾン水で分解し、剥離させます。施工直後は、柔らかいサビ、スライム、スケールの除去が可能です。継続的な保全効果はないため、定期的に実施する必要があります。メーカーとしては5~10年サイクルでの実施を推奨しています。洗浄の回数を重ねると、それなりの予算になることを考慮する必要があります。
セラミックス流動式
セラミックス流動式は、装置内のセラミックス球を水流により流動・衝突させることで、水を改質し給排水管を保全する工法です。給水管のサビ、スライム、スケールと排水管のサビの除去、高圧洗浄などの頻度削減、排水管の詰まりの抑制と全ての項目で効果を期待できます。
ライニング工法やオゾン法のように、施工直度に配管がきれいになるわけではありません。施工後に管内のスライムが徐々に剥離されるので、気になる場合は蛇口に浄水器をつければ除去できます。予算的に余裕があるのであれば、施工前にクエン酸洗浄やオゾン洗浄で、スライム等を一気に除去してから装置を設置するとよいでしょう。空室等で、極端に水の使用量が少ない配管への効果は弱まります。配管の劣化部分を回復させたり、水漏れリスクをゼロにするわけではありません(物件によっては、装置設置を条件に、経年劣化による水漏れをカバーできる保険が適用できます)。
※動画では、装置内のセラミックスは、衝突・流動による自浄効果で、常にきれいな状態を保てている様子がご覧いただけます。なお、10年以上経過した装置でセラミックスの重量を測定したところ、重量の変動がなく、流動・衝突により、セラミックスの微粒子が水中に混じることはないと、確認済みです。またセラミックスの成分が水に溶出しないことも公益社団法人日本水道協会にて確認済みです。
脱気工法
気体分離膜により水中の酸素を除去して、サビの進行を抑制します。給水管向けの工法で、排水管への効果はありません。装置費用と装置を保守するランニングコストが必要です。故障時のサポート体制等をご確認ください。
セラミックス固定式
装置内にぎっしりと封入されたセラミックスと水が触れることで、水を改質し配管を保全するといわれています。給水管向けの工法で、排水管への効果は保証されていません。流動式のように、「セラミックスの衝突・流動により不純物が、セラミックスに付着しにくくなる自浄効果」はなく、数年でセラミックスの表面に不純物が付着してドロドロになってしまうことがありますので、そのような心配はないか良くご確認ください。
セラミックス固定式では赤錆を黒錆に変えて黒錆を保護被膜にすることで、防錆できるとうたっているところがあります。「黒錆化による防錆効果の有効性について」で解説していますので、詳しくはこちらをご参照ください。
磁気式
給水管向けの工法で、排水管への効果は保証されていません。
全ての装置が当てはまるわけではないと思いますが、国民生活センターで特定の装置は効果がないと注意喚起してことと、セラミックス固定式で述べた「黒錆化による防錆効果の有効性については、同じようにこちらを参考にしてください。
簡単に、それぞれの延命工法についてお話しましたが、お住まいのマンションの配管の種類、排水管の立管の場所、修繕積立金は十分か否か、これから何年住み続けるかなど、要件により適切な工法は異なります。
配管保全センターでは、お客様ごとに異なる要件を考慮しつつ、どの工法が最適なのかを評価・提案させていただいております。
また、各社から提示された見積もりが妥当かどうかについても、住民の立場にたって、評価し、また必要に応じてお見積りもご提示させていただいております。
いつでもお気軽にお問い合わせください。