マンションの給排水管の代表的な延命工法の原理と留意点

2020年3月11日

各工法の原理と留意点

マンションの給排水管は、古くなれば取り換えるのがベストの選択ですが、予算の関係で延命工法をご検討なさる場合のご参考にしてください。
各工法、それぞれ留意点がありますが、営業時にはあまり説明がない恐れもありますので、ご自分のマンションで該当する工法の説明を受ける際に、担当の営業の方にご質問してみてください。

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給排水管に対する代表的な延命工法の原理と留意点
図1

参考文献:「管更生技術調査報告書」 特定非営利活動法人日本管更生工業会

ライニング工法

給水管なら給水管、排水管なら排水管にそれぞれ施工を行う必要があります。

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ライニング工法(更生工事)のイメージ
図2

配管の肉厚の厚さは、図2のように一様に腐食するわけではなく、深く腐食しているところ、浅く腐食しているところがあり、肉厚としては厚いところと薄い所がバラバラに存在します。
空気圧を利用して研磨剤を配管内に送り込んで、錆コブをこそぎ落とそうとしても、どうしても錆は多少残ってしまいます。
その上にエポキシ樹脂を塗布することで配管と水が直接、接することは施工直後はありませんが、樹脂の劣化により、水が管内に浸透してくると再び残っていた錆が腐食を始めます。
樹脂と配管の間で錆が成長して樹脂がこぶのように膨れ上がって(ブリスター)配管内が閉塞していく恐れがあります。
また、ブリスターができなくても錆による腐食が進行して肉厚が薄くなり漏水事故を誘発してしまう恐れもあります。
ライニング工事の保証期間は10年~20年程度ですが、そのあとは、かなりの確率で再度、保全工事を行う必要があることを念頭に、長期的な配管保全計画をご検討されることをお勧めします。

発がん性物質といわれている環境ホルモン(ビスフェノールAの)がエポキシ樹脂から溶出されるということが一時期、特に問題視されました。
1990年に溶出試験を実施した結果、「体重50kgの人が毎日15,625L(一升瓶で8,680本)の水道水を摂取した場合、安全基準を超える」
という判断となっています。

その後の動きとしては、給水管でなく健康上問題視されない排水管に対してライニング工事を行うケースが増えている傾向ではあると思われます。

外部電源法

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電位の概念図
図3

鉄と水との境界には電位が生じています。
①図3のように、鉄(Fe)が水に浸かると鉄(Fe)は電子を鉄の表面に残してわずかにFe2+(鉄イオン)になります
②電子に釣り合う鉄イオンが鉄の表面に滞留し平衡状態になります
③その結果、電子と鉄イオンとの間に電位が生じます

pH0(H+の活量が1)の水溶液に、1気圧で水素ガスを吹き込んだ「標準水素電極(SHE)」を0Vとして基準にすると鉄の電位は-0.44Vになります。

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25℃の水の電位ーpH図
図4

図4は水温25度のときに鉄の電位とpHの関係で、鉄がさびやすいかどうかを図式化している表です。
通常の水道水では、-0.44の電位だとすると、鉄は領域Ⅱの腐食態にあり、水道水と接触することで腐食しやすい環境下にあります。

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外部電極の設置イメージ
図5

図5の左側の写真イメージのように配管に外部電極を設置、電流を流し続けることで、鉄の電位を領域Ⅰの不活態まで下げ、鉄が腐食することを防ぎます。(図4の左側のグラフ)

効果は外部電源の前後15メートルが原則で、マンションの立管に効果が及ぶ間隔で設置し、また各世帯の水道メーター周りにも設置します。

電気代は世帯あたり年間50円程度で、低価格です。
図5の左側の写真の部品を定期的に取り換える工事が必要となるので、取り換え工事を何年に1度程度で実施する必要があり、その施工費用がいくらかについてもご確認ください。

電流を流し続けられる環境下では、図5の左側のグラフの不活態の環境下ですので、給水管の内部腐食に関してはほぼ半永久に効果が出せると考えられます。
排水管への効果はありません。

オゾン法

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オゾン洗浄によりスライムを除去
図6

オゾン(O3)で管内を殺菌・脱臭・スライム(浮き錆)を除去します。
ここで言うスライムとは、図6でスライムと示されたピンクと黄色の領域です。
茶色の腐食生成物は除去されません。
洗浄後、残された茶色の部分である腐食生成物は、水道水と接触し続けることで再び、図6の①の酸素濃淡腐食により鉄管を腐食し続けます。
オゾン法を施工する業者としては5年~10年の間隔で洗浄を行うことを推奨していますが、世帯当たりの費用がそれなりに高額なため、水漏れを長期的に防ぐための予算として見合うかどうかを念頭に検討されることが必要であると思われます。

排水管への効果はありません。

薬剤添加法

リン塩酸やケイ酸塩を添加することで防錆します。

薬剤を添加するという工法のため、鉄濃度が飲料適用レベル0.3mg/lを超えた場合、あるいは超えると予想された場合にのみ添加が認められている工法です。

注入する薬剤の濃度管理を行うことが必要となっています。

排水管への効果はありません。

カルシウム法

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図7

炭酸カルシウムを溶解することで、水道水のpHを高めアルカリ性にします。
図7に示すように領域Ⅲの不動態領域に持っていくことで防錆します。

鉄を除く力はないので錆が多量の場合は除去が必要となります。

ランニングコストが高めなので、メンテナンス費用の確認が必要です。
また、故障時のサポート体制が充実しているかについても確認が必要です。

 

排水管への効果はありません。

脱気工法

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脱気工法の原理
図8

図8に見るように錆を進行させる要因の一つである酸素を除去することで防錆します。

カルシウム工法と同様に、ランニングコストが高めなので、メンテナンス費用の確認が必要であり、故障時のサポート体制が充実しているかについても確認が必要です。

おいしい水の条件として水道水中には5mg/l以上の酸素が必要といわれており、その観点での留意も必要と思われます。

 

排水管への効果はありません。

 

 

 

セラミクス流動式

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ゼータ電位とセラミクス流動型のセラミクスのゼータ電位例
図9

セラミクスの粒を水流で衝突・流動させ、水素放出性(還元性)を向上させることで防錆する工法です。
活水化の効果が蛇口から出た後も持続するため、マンションの根本に1台設置するだけで排水管への効果もあります。

図9の左側にゼータ電位のイメージ図を示しています。
水中の物体は、表面が帯電しており、その電荷を打ち消すように、水中で逆の電荷が滞留してきて、物質との境界あたりに電位差が生じます(ゼータ電位)。(ゼータ電位がマイナスの電位になるのかプラスの電位になるのかは、その物体の材質やpHに依存します。)

セラミクス流動式のセラミクスについては、図9の右側のようにpH7あたりで-12mVの電位となります。セラミクスの表面がマイナス帯電、セラミクスの表面に近い水の領域がプラス帯電の状態です。(電気二重層を形成します)

 

 

動画はセラミクス流動型装置の模型です。セラミクスがどのように流動しているかがご覧いただけます。(動画をクリックして再生してみてください)

下の図10のように、セラミクスが流動することで、セラミクス同士が衝突し、電気二重層の外側のプラス電荷が押し出され、装置を出た水は、若干プラス帯電した水になっています。
(セラミクス同士が衝突してもセラミクス自体、硬いので衝突により粉体が装置から押し流されることはありません→設置後15年経過した装置のセラミクスの状態検証

プラス帯電した水になるイメージ

図10

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図11

若干、プラス帯電した水では、図11のように通常の水と比べ、水分子の水素が放出されやすい状態になっており、
・相手を還元する能力が向上(抗酸化力の増加、錆・スケールの剥離促進、給排水管のバイオフィルムの表面の剥離 等)
・他物質を溶解する能力が向上(洗浄力増加、バイオフィルムへの浸透力増加 等)
といった特徴を持った人間にも配管にも望ましい水になっています。

ちなみに、図11で「水素結合性が増す」と「他物質を溶解する能力が向上する」と記述していますが、その部分を少し補足すると、以下の図12に示されたイメージになります。
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図12

水分子は酸素側が「マイナスの極性」、水素側が「プラスの極性」を帯びています。この極性があるため酸素側はプラスの物質に近寄る性質があり、水素側はマイナスの物質に近寄る性質があります。
図12で塩(塩化ナトリウム:NaCl)を溶かすイメージを示していますが、Cl-には水素側が近付き、Na+には酸素側が近付くことでCl-とNa+が引き離されていきます。この引き離されてCl-とNa+がバラバラになることが溶解するということになります。
セラミクス流動処理水は、水素結合性が高くなっており、言い換えるとCl-とNa+に引き離す能力が増しているということが言えます。ということで「水素結合性が高くなる」⇒「引き離す能力が増す」⇒「他物質を溶解する能力が向上する」ということになります。

【関連ブログ】
マンションの配管の延命工法の費用と保証内容を比較してみました
専有部の配管保全費用の自己負担を軽減するエルセとは

なお、この装置では、セラミクスと水が接触する面積が多ければ多いほど、効果も高くなります。
下の図13に家庭用の装置でどの程度の面積が水と接触するのかがイメージできる計算式を記載しています。
縦10m横14mのシートを水が、およそ5秒かけて接触(摩擦)していることになり、相当広い面積での処理が行われていることがお分かりいただけます。

※水については解明されていない領域がほとんどで、今回の原理は推測の範囲内です。実績としては排水管への効果も十分に認められており、今後、解明分野が増え次第、随時、ご報告していきます。

図13

オゾン法で記載した図6のスライムをごく微量ずつ剥離し、また全て茶色の腐食生成物も剥離していきます。
微量ではありますが、スライムの剥離が気になる方で、予算に余裕のある方はオゾン洗浄等との併用を実施されたりしています。
予算に余裕がない方でも設置当初に安価な浄水器をつけておけば、安心いただけるかと思います。

根本設置の場合、空室等で利用水量が極端に少ない場合は効果が弱まる可能性があります。(今までの実績で1日2回転する受水槽経由で、お風呂を追い炊きして捨てても排水管への効果を期待できると考えられます)

※「水」についての研究は未解明な部分も少なくなく、上記はあくまで推論といえます。今後も大学等の研究機関との協力体制を継続していきます。

セラミクス固定式

図13

セラミクスと水道水を接触させることで水を改質します。
図13にメンテナンスフリーだと言われていたセラミクス固定式の装置を1年後に開放してみた写真を記載しています。
ドロドロの水が出てきて、セラミクスの表面にもドロドロが付着しており、効果があるとは思えない状況でした。
全てのセラミクス固定式で、このようなドロドロ状態になるかは、調査が必要ですが、固定型はセラミクス流動型のようにセラミクス同士の衝突で自浄作用がないため、ある程度の期間がたつと効果が薄れるおそれがあると考えられますので、そのあたりは特にメーカーにご確認ください。

また、セラミクス流動型と同様に、根本設置の場合、利用水量が極端に少ない場合は効果が弱まる可能性はあります。

黒錆に対する有効性は、こちらをご覧ください。

排水管への効果はありません。

磁気式

磁場エネルギーで水を改質するといわれています。
国民生活センターのホームページによると、「磁気活水器」に対する苦情相談件数は、2003年度以降2008年7月11日登録分までで4,650件あり、その中で「安全・衛生」「品質・性能・役務品質」に関するものは、あわせて534件あります。
黒錆化の有効性をうたっている装置もありますが、同様に黒錆化についての有効性はこちらをご参考にしてください。

排水管への効果はありません。

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マンションの給水管・排水管を取り巻く現状
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動画:18分46秒 マンションの給排水管の代表的な延命工法の原理と留意点 脱気、セラミクス、磁気