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築25年以上のマンションの配管の交換工事の優先度は共用部と専有部のどちらが高いか?

2019年10月26日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大

水漏れ事故の発生頻度

各配管の材質等でも変わるので、一概には言い切れませんが、水漏れ事故の発生頻度は専有部のほうが一般的には高く、配管の交換の優先度が高いと言えます。
しかしながら、専有部の保全費用は修繕積立金ではカバーされない管理組合が多く、配管の交換は各区分所有者の判断に委ねられてほったらかしになっているマンションが多いのが現状です。

水漏れ事故の発生頻度修繕積立金の扱い
共用部太くて肉厚が厚いので専有部より水漏れ頻度は少なめ ※1適用
専有部細くて肉厚が薄いので共用部より水漏れ頻度は高め適用外(各自が負担)

※1 パイプシャフト内の水道メーターまわりは異種金属接触腐食による漏水事故が多いですが、漏水しても階下に損害を与える可能性は低いです。

当初は、管理組合が加入している火災保険の特約で、経年劣化であっても保険金が支払われるケースもありますが、何度も同じマンションで同様の水漏れ事故を起こしていると、保険料の大幅値上げでは済まず、保険への継続加入を拒否されたり、事故発生時に保険適用の拒否をされたりしてきますので、階下への賠償金額が数百万円に及ぶ場合は、区分所有者の負担がとても大きくなってしまいます。

なお、築25年以下のマンションの場合は、配管の材質がステンレスやポリブデン・ポリエチレン等、さびにくい材質が使われているケースが多いので、配管の材質をきっちりと確認して配管保全の優先度を決めることが肝要です。

【関連動画】


⇒12分59秒:マンションで使用される給排水管の耐用年数一覧

専有部の配管の交換の優先度を判断する材料

配管各種で、耐用年数がありますが、その年数を過ぎても交換されずにそのままになっているマンションが多いのが現状です。

以下のような現象が起き始めているのであれば、配管の交換時期としては、極力早めたほうが無難ではあります。
・給湯管からの水漏れが増えた
・赤水のクレームが増えた
・高圧洗浄業者から洗浄を断られた
・高圧洗浄時に大量の鉄さびが採集された
・お風呂や洗面所等での排水の水はけが悪くなった

専有部の配管の交換を行うための留意点

前述のように、専有部は修繕積立金ではカバーされないため、全室更新する方針であれば、管理規約の変更(総会にて区分所有者総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上の賛成が必要です)を行う必要があります。

また、すでにリフォームを済ませてしまっている区分所有者については、組合が定める配管の交換方針と同レベルであれば、一部費用を還元したり、同レベル以下であれば改修工事をするといった合意も必要となります。

さらに、今回の配管の交換のタイミングで内装工事も行いたい区分所有者に対しては、一定以上のレベルの内装であればその部分の費用は区分所有者負担とし、その費用は各業者と区分所有者が個別に行うといった取り決めも必要です。

配管の交換工事のタイミングに柔軟性を持たせる工夫をする

世帯数が多いマンションで、全室の配管の交換工事を行う場合、それだけの工事の量をこなせる配管業者は限られ、かなり高額な見積になる可能性が高いといえます。

最近では、災害による改修工事のニーズが非常に高く、どの配管業者も忙殺されており、さらに見積額が高額になる要因となっています。

 

露出配管にせず、床下や天井裏に配管を行う場合は、各区分所有者がリフォームを行うタイミングで一緒に配管工事もしてしまうことで、見積額を抑えることが可能となります。

早めに更新工事を行うことが無難ではありますが、前述のような諸事情で、なかなか工事に取り組めない場合は、延命装置(例として給排水管保全装置「エルセ」)を使い、なるべく水漏れのリスクを抑え、各区分所有者のリフォームのタイミングで配管工事を行うといった工夫を行うことも肝要です。

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