更新工事・更生工事

築30年マンション 築60年までの配管修繕費用を6~8割削減する方法

2021年9月10日
この記事のカテゴリー : 更新工事・更生工事

築30年あたりのマンションの長期修繕計画では、配管の保全費用として漏水の可能性の低い「共用部」にお金をかけ、漏水の可能性が高い「専有部」は対象外にしているところが、ほとんどといえます。

築年数が古くなるにつれて、専有部での漏水が多発するようになり、専有部の保全のための一時金の拠出や近隣トラブル等、さまざまな問題に直面していくことになります。こういった状態になってしまうのは、大事な修繕積立金を費やす優先順位が共用部に偏りすぎているためともいえます。

今回の投稿記事では、漏水リスクの高い「専有部の給水管、排水管への保全効果」を期待でき、かつ、投資費用としては、「かなり割安となる配管の延命装置」を使って、どの程度、修繕費用を削減できるのかについて、シミュレーションしてみました。

結果としてはタイトルにあるように、築30年あたりの一般的な長期修繕計画と比較して6~8割の費用削減を期待できるという結果になりましたが、どのような方針で、そうなったのかを順を追ってご説明しますので、是非最後までご覧ください。

シミュレーションを行うにあたっての前提条件

今回のシミュレーションを行うにあたっての前提条件を、まずご説明します。

期間は築30年から築60年までの30年間で、世帯数としては、わかりやすくするために100世帯とします。

配管の材質としては、築30年あたりのマンションの配管の典型的な材質とします。具体的には、
共用部 給水管 ライニング鋼管
    排水管 鋳鉄管
専有部 給水管 ライニング鋼管
    給湯管 銅管
    排水管 ライニング鋼管
です。専有部の排水管は塩ビ管の場合も多いのですが、今回のシミュレーションでは、錆びるリスクもあるライニング鋼管が使われているものとします。

また、築30年あたりのマンションでは、築25年あたりまでに、既に給水管に対して共用部、専有部とも更生工事が実施されていることが多いので、今回のシミュレーションでも、給水管に対しては更生工事済としています。

更生工事や更新工事の世帯あたりの費用については、業者の選択や部屋のレイアウト等で大きく変動するため、あくまでも便宜的な価格としてご覧ください。

また、受水槽や高架水槽、各種ポンプを考察に入れると複雑になるので、配管のみでシミュレーションします。

なお、専有部の配管の保全費用も検討対象としています。本来、専有部は管理組合の保全検討対象の管轄外で、長期修繕計画にも記載されていないことが多いのですが、今回のシミュレーションでは、将来的に管理組合主導で更新しなくてはいけなくなる場合も多いと予想されるので、あえて検討対象としています。

今回のシミュレーションで導入する延命装置

今回は、給水管と排水管の両方に保全効果を期待できる延命装置として流動式セラミックス方式のエルセを導入すると想定してシミュレーションしました。

流動式セラミックス方式のエルセについては、他の投稿記事でもご紹介しておりますので、下のリンクをご覧ください。
専有部の配管保全費用の自己負担を軽減するエルセとは
納入実績・導入事例
マンションの給排水管の代表的な延命工法の原理と留意点

エルセは累計3万8千件の導入実績があり、その中で、連続稼働年数も30年以上の事例が多数あります。排水管への効果を検証した内視鏡写真も多数あり、延命装置として信頼できる製品といえます。

給湯管の保全について

シミュレーションを行うにあたり、給湯管で使われている銅管の特徴について、お話しておきます。

銅管では、潰食(かいしょく)という現象がよく起こりますが、これは銅管内のお湯が気泡となってエルボー部にぶつかり続け、鉄よりも柔らかい銅管に小さな孔を空ける現象のことで水漏れの原因となります。

配管の延命装置としては、電流式や脱気式、セラミックス方式等とさまざまありますが、どの延命装置でもこの潰食という現象を抑えることはできません。

今回のシミュレーションでは、この給湯管で使われている銅管に関しては築30年からの30年間で、全世帯の5割程度で漏水事故が起きると仮定しています。

たとえば洗面台へ向かう給湯管の銅管に漏水が起きたあとで、今度はキッチンに向かう給湯管の銅管でも漏水が起きる可能性が高いので、シミュレーション上は、銅管から漏水が起きた場合は、その世帯の銅管を全て取替える前提にしています。また、その際に、給湯管とほぼ同じ場所に配管されている給水管も同時に取替えると工事費用を抑えることができるので、給水管の取替えも一緒に行うこととしています。

なお、銅管だけ更生工事で配管内を樹脂でライニングしておくという考え方もありますが、30年間で結局、更新工事で取替える必要が出たりすると、修繕費用が余計にかかってしまいます。そこでここでは、給湯管に対して更生工事は行わずに、取替え工事を行う前提としました。このあたりはケースバイケースとなります。

各ケースで全世帯の何割が配管を更新する必要があるか

表①

表①は、一般的な長期修繕計画に従って更新工事を行った場合と、延命装置エルセを導入した場合に、それぞれの配管が築30年からの30年間で、どの程度の割合で更新することになるかを表わしました。

①一般的な長期修繕計画案

①の一般的な長期修繕計画案では、共用部については、給水管・排水管とも一斉更新するので、漏水リスクはゼロと仮定しました。
専有部については、管理組合として一斉更新することなく、各区分所有者に保全を任せることになります。その結果、あらかじめ配管を取替える世帯はなかったと仮定しています。
専有部の給水管は錆びやすく、給湯管は潰食が起きやすいので、全世帯の8割で漏水事故が発生すると仮定しています。
また、専有部の排水管については、詰まりや錆びによる漏水が全世帯の8割で発生すると仮定しました。

②エルセ(予算確保ケース)

②のエルセ(予算確保ケース)というのは、エルセを導入したと仮定したケースです。
エルセの導入効果により漏水事故が全く起こらない可能性もありますが、長期修繕計画では予算を計上していないと、あとあと外部腐食や地震、鋳鉄管のガスによる腐食、また屋外の埋設された給排水管の漏水等の不測の事態が起きた場合に、予算不足で困ることになります。ここでは極力余裕をもった予算を計上しておいて、使わなければ他の修繕費用にあてるといった方針での予算案となります。
ご参考までに、その他に漏水となる原因としては、異種金属接触腐食、地盤沈下、施工不良、凍結、ウォーターハンマー、排水桝の破損、高圧洗浄のコードによる破損 等です。
なお、共用部の給排水管は一斉更新せず、エルセの保全効果で、漏水が起こる配管が全体の3割まで抑制できたと仮定しています。
専有部の給水管・給湯管については、給水管の漏水はかなり抑制できると想定していますが、給湯管の潰食には効果がないので全世帯の7割で漏水が発生すると仮定しました。各世帯の水道メーター周りの配管と水道メーターとの異種金属接触腐食や、蛇口と配管との異種金属接触腐食そのものについては、エルセでの効果は期待できませんが、異種金属接触腐食でできた錆びコブにさらに酸化により成長する錆びコブに対しての抑制効果は期待できます。
専有部の排水管については、エルセの導入効果で一般的なケースが8割であるのと比較して4割まで抑制できたと仮定しています
なお、配管保全センターでは、エルセを設置した多くのマンションで漏水が発生した場合に、連絡が来る体制になっており、また、エルセを長期間設置したマンションでの内視鏡調査も行っております。今回の漏水確率については、それらの結果と経験測を元にした推測値となっていますので、その点をご承知おきください。

エルセの効果に関する投稿記事について、リンクを貼っておきますので、ご興味ある方はそちらもご覧ください。
エルセ設置後、 20年経過の築40年物件を内視鏡調査しました
排水管の詰まり対策 コスト5分の1以下に抑える工法とは
排水管 詰まり対策 カチカチに固まった尿石も除去 エルセ 排水管の延命効果の実力
延命装置 導入事例集
エルセ設置後の検証データ

③エルセ(ベストケース)

③エルセ(ベストケース)ですが、エルセ導入によるベストな結果として漏水が起こらなかった場合の費用を示しています。
それでも給湯管に関しては、築60年までに5割の世帯で漏水すると想定しています。

 

シミュレーション結果

それでは、今までご説明した条件や仮定をもとに、シミュレーションを行った結果がこちらになります。

①一般的な長期修繕計画案では、共用部で1億2千万円、専有部で8800万円の合計2億800万円になりました。

②エルセ(予算確保ケース)では、共用部で3100万円、専有部で5900万円の合計9000万円で、①のケースから約6割の費用の削減を期待できるという結果になりました。

※各配管の費用を便宜上、特定の会計年度のみに掲載しています。実際には、築60年までの期間内に発生すると予測されます。

③エルセ(ベストケース)では、共用部で700万円、専有部で2500万円の合計3200万円で、①のケースから約8割の費用の削減を期待できるという結果です。なお、エルセの導入費用は700万円としていますが、受水槽の有無や、ファミリータイプが多いかどうか等で変わりますのでこちらも参考価格になります。

※給湯管の取替え費用を便宜上、35年度のみに掲載しています。実際には、築60年までの期間内に発生すると予測されます。

考え方によっては、エルセ導入の700万円程度の投資で、1億円以上の費用削減を期待できるということで、導入の検討をされる意義は十分にあると言えます。

専有部含めてすべての配管を取替えるのが理想ですが、特に排水管の取替えは非常に高額になるので、困っている組合さんがたくさんいらっしゃいます。
延命装置により、極力、漏水リスクを抑えて、大切な修繕積立金になるべく余裕を持たせておけば、マンションの売却時に重要事項説明に記載する修繕積立金の金額もより多い額となります。
水漏れが多すぎると、資産価値にも影響してきますが、修繕積立金の残額とのトレードオフになるので、無駄遣いせずに、最適な保全に努めていきたいものですよね。

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