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築20年マンション 配管保全の費用比較 3つの保全方法で概算してみました

2020年4月17日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大

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配管の保全方法の違いでトータルの費用に大きな差が出ます

上のグラフは配管保全にかかる長期的なコストを、築20年から80年までと、築20年から60年までの2パターンで、保全方法①~③を比べた結果です。一般的に築20年前後のマンションでは、専有部内の給水管と排水管は錆びない材質を使っている場合が多いのですが、錆びはつかなくても給水管にはヌメリなどが付着しますし、排水管には食用油や食品カスが付着して配管の閉塞が起きてきます。このような付着や閉塞は年々増加するため、築20年あたりから、将来を見据えた配管保全を考えることが望ましいといえます。早い時期から配管保全を実施することで、保全方法③のように長期的な保全コストに大きな差が出るようになります。

参考:築20年前後のマンションの専有部の配管

築20年前後の築年数の浅いマンションの専有部では、以下の写真のような給水管・給湯管・排水管が用いられています。これらはすべてサビない材質ですが、ヌメリや食用油、食品カスなどの付着により閉塞が起きてきます。

  • 給水管(青色)・給湯管(赤色):ポリエチレン管またはポリブデン管
  • 排水管:塩ビ管各種

では、配管保全の概算を居住期間と保全方法でわけてみていきましょう。

今回の概算は、
・築20年から築80年までの60年間住み続けた場合
・築20年から築60年までの40年間住み続けた場合
のそれぞれについて、下の3種類の保全方法について行いました。
・保全方法① 排水管の交換と高圧洗浄のみ行った場合
・保全方法② 排水管の交換と高圧洗浄に加えてライニング工法を取り入れた場合
・保全方法③ 排水管の交換と高圧洗浄に加えてセラミックス流動式を用いた場合

これからそれぞれの保全方法ごとにシミュレーションしていきますが、全体的には、以下のような世帯あたりの概算となります。

築80年まで住み続けた場合</h4/>

築60年まで住み続けた場合

保全方法によってかなりコストが違ってきます。

排水管は錆びない塩ビ管でも閉塞します。閉塞させないための配管保全が必要です

  • 食用油や食べかすが固着して閉塞した排水管
  • 費用についてみていく前に、排水管の保全はなぜしなければならないのかについて、とても重要なポイントとなりますので触れておきます。

    皆さんは、調理後の油はどうされていますか?「油を排水管に捨てるなんて、とんでもない。捨てたことはありません」と答えたとしても、食器を洗う際に、お皿に残った油はそのまま排水口に捨てているのではありませんか? 少量であっても捨てられ続けた油は、排水管に付着して次第に大きな塊となり、高圧洗浄をしないと除去できなくなります。

    最近は、業者間の競争で高圧洗浄費用が安価に抑えられることが多く、作業効率を高めるために洗浄時間を削ったり、排水管の奥のほうまで洗浄しなかったりするケースが増えています。その場合、毎年、高圧洗浄をしていても、洗浄が不十分な状態となります。最悪のケースでは、排水管内で固まった油に食べかすが付着して、写真のように排水管がほぼ閉塞状態になってしまいます。

住居内の排水管は、立管といってトイレやキッチンの壁の中に2~3本通っています。これを交換するとなると、壁や床を剥がす必要がでてきます。そうすると排水管の取り替えには、壁や床のメンテナンス費用も含めて、1世帯あたりおよそ80万円程度かかることになります。
最近では、買い替えよりも永住志向が高まるなか、仮に築80年まで住み続ける場合、築20年からだとあと60年間、排水管を保全していく必要があります。適切な保全をしていないと、上の写真のようなに閉塞を起こし、60年間で2回も交換工事を行う必要が生じるかもしれません。

1.築80年まで住み続けた場合 配管保全の費用シミュレーション

それでは、築20年から築80年までの60年間で、保全方法①~③について、世帯あたりの排水管の保全費用を計算してみましょう。

保全方法① 高圧洗浄と排水管の交換工事のみ行った場合

まずは、保全方法①(下の表の赤枠の項目)についてです。費用を計算する上での前提条件は以下としました。

・排水管の交換工事を2回実施
・高圧洗浄を毎年実施

上の費用の内訳:

単価/世帯回数合計/世帯
排水管交換工事80万円2160万円
高圧洗浄4千円(※1)6024万円
合計184万円

※1:世帯数により高圧洗浄の金額も変わります 例)10世帯で6千円/世帯、200世帯で3千円/世帯など

  • 高圧洗浄のコードによる排水管のエルボー部分の破損イメージ
  • なお、毎年、高圧洗浄を行うことにより、排水管内が食用油などで閉塞するリスクは抑えられますが、排水管の破損リスクは高まります。高圧洗浄を繰り返し行うと下のイラストのように、高圧洗浄のコードが排水管のエルボー部分にあたって破損しやすくなります。

保全方法② 排水管の交換と高圧洗浄に加えてライニング工法を取り入れた場合

次に保全方法②(下の表の赤枠の項目)についてです。築20年前後のマンションでも、排水管の立管に錆びる材質が使われていることが、まだまだあります。立管が錆びてしまった場合に、よく用いる延命措置としてライニング工法があります。>
ライニング工法では、保証期間(10~1年程度)後に、排水管の交換を行う可能性が高いので、費用を計算する上での前提条件は以下としました。

・排水管の交換工事を1回実施
・高圧洗浄を毎年実施

上の費用の内訳:

単価/世帯回数合計/世帯
排水管交換工事80万円180万円
高圧洗浄4千円6024万円
ライニング工法20万円120万円
合計124万円

 

保全方法③ 排水管の交換と高圧洗浄に加えてセラミックス流動式を用いた場合

マンション全体で受水槽の手前や増圧ポンプの後ろに1台設置するセラミックス流動式の延命装置を取り入れた場合、以下のような排水管の保全効果が期待できます。※1

・高圧洗浄の回数を最低限にして、高圧洗浄の費用を抑え、エルボー部分の破損のリスクも抑える
・排水管内の食用油などの固着を防ぎ、排水管の交換回数をできる限り削減する

※1 実際の導入事例

⇒セラミックス流動式延命装置により排水管の保全効果を検証した事例(9件)
排水管の漏水事故が毎年発生していたマンションにセラミックス流動式延命装置を導入した事例

それでは、セラミックス流動式の延命装置を取り入れた場合(保全方法③)に、築20年から築80年までの60年間で、世帯あたりの排水管の保全費用を計算してみましょう。
下の表の赤枠の項目をご覧ください。ここでは、費用を計算する上での前提条件は以下としました。

・排水管の交換工事を1回実施
・高圧洗浄を2年に1度実施

上の費用の内訳:

単価/世帯回数合計/世帯
排水管交換工事80万円180万円
高圧洗浄4千円3012万円
延命装置本体と設置工事費用 ※215万円115万円
合計107万円

※2:装置は全世帯で1台のみの設置。世帯当たりの費用はファミリータイプ/ワンルームタイプ、受水槽の有無等で変わります(6万~16万円/世帯が目安となります)

なお、保全方法③の場合、①②と比較して、以下のようなリスクを抑えられるといえます。
・高圧洗浄のコードの擦れによる排水管のエルボー部分の破損リスク
・排水管が詰まって水があふれ階下に数百万円の損害賠償を支払うリスク

■給水管・給湯管のオゾン洗浄を取り入れた場合の費用比較

また、給水管・給湯管については、スライム(ヌメリ)やスケール(カルキ)が付着するため、オゾン洗浄を実施する管理組合さんが多いといえます。

①②については、10年に1度、オゾン洗浄を仮に1世帯5万円で行うとすると、築80年までで6回実施してトータルで1世帯で30万円を支払うこととなります。
③については、スライム・スケールの付着防止も期待きるので、オゾン洗浄を実施しないですむ場合もあります。

これを反映して費用比較をしたのが下の表になります。

 

■ 給水管を交換した場合の費用比較

さらに、マンションの給水管の立管に錆びる材質を使っている場合、保全方法①②では、1~2回の給水管の交換が必要になると考えられます。
保全方法③の場合は、防錆効果も期待できるので、0~1回になると考えられます。
仮に保全方法①②は給水管の交換を2回、保全方法③では1回実施すると仮定した場合に以下の表となります(1度の交換費用を世帯あたり40万円と仮定)。

配管の材質、劣化状況、保全方針により、最適な保全方法は異なりますが、費用目安としては、上の表のようになるものと思われます。

2.築60年まで住み続けた場合の費用シミュレーション

では次に、築60年まで住み続けるという前提で、再度、同様の試算をしてみます。

保全方法① 高圧洗浄と排水管の交換工事のみ行った場合

まずは、築80年と同様に延命工法は用いず、配管の交換と高圧洗浄のみを行う保全方法①についてです。費用を計算する上での前提条件は以下としました。

・排水管の交換工事を1回実施
・高圧洗浄を毎年実施

上の費用の内訳:

単価/世帯回数合計/世帯
排水管交換工事80万円180万円
高圧洗浄4千円(※1)4016万円
合計96万円

保全方法② 排水管の交換と高圧洗浄に加えてライニング工法を取り入れた場合

次にライニング工法を取り入れた保全方法②についてです。費用を計算する上での前提条件は以下としました。

・排水管の交換工事を1回実施
・高圧洗浄を毎年実施

上の費用の内訳:

単価/世帯回数合計/世帯
排水管交換工事80万円180万円
高圧洗浄4千円4016万円
ライニング工法20万円120万円
合計116万円

保全方法③ 排水管の交換と高圧洗浄に加えてセラミックス流動式を用いた場合

最後にセラミックス流動式を用いた保全方法③についてです。費用を計算する上での前提条件は以下としました。

・排水管の交換工事をせずに済む
・高圧洗浄を2年に1度実施

上の費用の内訳:

単価/世帯回数合計/世帯
排水管交換工事80万円00円
高圧洗浄4千円208万円
延命装置本体と設置工事費用 ※215万円115万円
合計23万円
築80年の場合と同様に、上記の費用の差額とは別に、保全方法③の場合は保全方法①②と比較して、以下のリスクを低く抑えられる可能性があります。・高圧洗浄のコードの擦れによる排水管のエルボー部分の破損リスク
・排水管が詰まって水があふれ、階下に数百万円の損害賠償を支払う必要が生じるリスク■給水管・給湯管のオゾン洗浄を取り入れた場合の費用比較保全方法①②については、10年に1度、オゾン洗浄を仮に1世帯5万円で行うとすると、築60年までで4回実施して、トータルで1世帯20万円支払うこととなります。
保全方法③では、スライム・スケールの付着防止も期待できるので、オゾン洗浄を実施せずに済むとすると、①~③の合計費用は以下となります。■給水管の交換をする場合の費用比較マンションの給水管の立管に錆びる材質を使っている場合は、保全方法①②の場合では、0~1回の交換が必要になると考えられます。
保全方法③では、交換をしなくても持ちこたえられる可能性が高いと考えられます。
保全方法①②で給水管の交換を1度、③では実施しないとすると、費用は以下となります(1度の交換費用を世帯あたり40万円と想定)。築80年の場合と同様に、配管の材質、劣化状況、保全方針により、適切な工法はマンションにより異なりますが、費用目安としては、上の表のようになるものと思われます。以上のことから、セラミックス流動式の延命工法は、給排水管の交換回数や、高圧洗浄とオゾン洗浄の回数を減らすことができ、最もコストを抑えて効果が得られる配管保全方法であるといえるでしょう。さらに、セラミックス流動式の延命工法の導入が早期であればあるほど、コストや水漏れリスクを抑えることが期待できるといえるでしょう。【関連ブログ】
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