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排水管の横主管の取替え いくらかかる?

2023年11月24日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

マンションの排水管の素材として、これまでよく用いられてきたのは、鋳鉄管です。

鋳鉄管は鉄素材の配管で、肉厚で半永久的にもつと言われてきましたが、最近、築20年経過していない新しいマンションでも横主管といわれる場所にある鋳鉄管の劣化による漏水のご相談をよくお受けします。

横主管というのは、排水管の立管のことではなく、各階の排水が集まる1階の天井裏や地下にあるタテではなく横向きに配管された排水管です。

マンションの屋内の排水管のイメージ図を下のイラストに示しましたが、横主管は、赤い線の部分にあたります。 

下の左側の画像に、ボロボロに劣化した鋳鉄管の横主管の例を示しました。

この配管は築55年のマンションのものですが、手で触ると配管がボロボロに崩れ落ちてしまうほど、劣化しています。

原因としては、右側のイメージ図で示したように、横主管内に堆積した廃棄物や汚物から発生する硫化水素などのガスが挙げられています。

ガスの化学反応により、配管が腐食してボロボロになると考えられています。

ちなみに、築10年から築20年の大型のマンションから横主管ではなく、排水管の立管も劣化が激しいというご相談を、最近よく受けますが、立管の話はまた別の機会にお話させていただく予定です。

築20年程度のマンションからも、「鋳鉄管の横主管の劣化が激しく、取り替えを検討しており、いくらくらいかかるのか教えてもらいたい」という問い合わせが多くなってきましたので、今回は、排水管の横主管のみを取り替えるとして、その際にどれくらいの費用がかかるのかについてお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。

動画

 

横主管のある場所の例

横主管を取り替える際の費用は、さまざまな要因で大きく変わります。

それぞれのマンションごとに、ケースバイケースと言ってもいいほどですが、どういったことが費用に大きくかかわるのかについてお話します。

まず、横主管がマンションのどこにあるかということが、費用に大きく影響します。

下に横主管のある場所の例を示しました。

① はマンションの地下駐車場の天井に横主管が露出配管されている例です。横主管を取替えるにあたって、スペースが広く、配管が露出していることもあり、かなり作業はしやすい環境といえます。

ご参考までに、約50世帯のマンションで、駐車場の天井に露出している横主管だけを取り替える作業の費用ですが、排水管立管との接続箇所が約20カ所、5日間の工程で、500万円程度となりました。

② は、マンションの1階の天井を剥がした天井裏に横主管がある例です。

マンションのエントランスの天井の排水管を取り替える場合は、床が汚水で汚れないように気を付けながら作業する必要があります。剥がした天井は内装復旧をします。

また、1階がコンビニや飲食店といったテナントが入ってる場合は、テナントへの営業保証費用を支払う必要が生じたり、商品を汚さないように作業をする必要がでてきます。

③ は、地下ピット内に横主管があるケースです。

左下の画像のようにマンションの屋外の1階に入り口があり、ここから地下に入っていき、作業することが多いです。

マンションによっては、屋外に地下ピットへの入り口がなく、専有部内の床に入り口があるといったケースもあります。

真ん中の画像は、腹ばいにならないと作業ができないほど狭いスペースでの作業となり、作業効率はかなり落ちます。鋳鉄管の口径が太い場合は、重量もかなり重くなり、腹ばいの体制での作業は相当大変なものになる場合もあります。

右側の画像の地下ピットの入口からは、4mの新規配管を切断して短くしないと地下ピットまで運べません。

切断した配管を運び込んで地下ピット内で再接続して配管する必要があり、そのための工程や継手の数も増えるため費用がかさんでしまうことになります。

それから、地下ピットがなく、マンションの地下に横主管が埋設されているケースもあります。

この場合は、配管取替作業というより、土木作業がメインとなってきます。

工期も長くなり、費用もかなり高額になります。

横主管が埋設されている場合には、予算および、あと何年住み続けるのか? といった総合的な判断から、取替えではなく更生工事が選択肢となる場合もあります。

ただ、横主管の更生工事は、立管の工法と比較してより限定された工法となり、限定された条件でのみ実施可能となってきますので、更生工事の実施の可否を更生工事業者にまずは確認するほうがいいでしょう。

なお、先ほどのボロボロになった横主管の場合、更生工事をしたとすると、工事の途中で、配管が崩れ落ちる懸念があります。

実際には、更生工事もできずに、漏水してきた水が排水管の下に停めている車にかからないように、半分に切った塩ビ管で水を受けるような工夫をして凌いでいる状態です。

工事費用に影響のある他の要因例

排水管の横主管の取替え費用の金額に影響がある他の要因例としては、以下のようなものがあります。

① ハツリ・土木作業の多さ

横主管は全て露出しているわけではなく、コンクリート内に埋まっている箇所も多くあります。その場合、ハツリ作業や土木作業の多さによって、見積り額はかなり変わります。

下の画像は、さきほどのボロボロになった鋳鉄管の横主管ですが、壁ギリギリの部分まで配管がボロボロで、途中で切断して新規配管につなげられない状態でした。

これを取り替える場合、壁をハツって、壁の向こう側の配管と接続する必要がありますが、壁の向こう側の配管は土中に埋設されており、かなりの土木作業を伴います。

② アスベストの有無

工事に伴ってマンション屋内の壁や天井、配管の保温材等を解体する必要がありますが、これらの建材には人体に有害なアスベストが含まれている場合があります。

令和4年4月から解体作業を行う際に、アスベスト調査を行うことが義務付けられており、調査結果によっては、防護服着用の作業といった、想定外の費用がかかります。

③ どの業者に依頼するか

管理会社を通すのか、下請けをどの程度使うのか、繁忙期かどうか等によって、見積り額が大きく異なります。

このあたりは、先日投稿した投稿記事「直結給水方式への切替え費用 3つの変動要因」をご覧になってみてください。

また、排水管の横主管を取替える際、その横主管につながる排水管の立管については、作業時に排水を流さないように住民に周知する必要があります。

断水をしたとしてもトイレのタンクには水が貯まっており、水を流してはいけないことを忘れてトイレを使って汚水が流れてしまうこともあります。

1階が店舗の場合等、工事中に排水されないように十分な周知が必要となります。

排水管の横主管の取替え工事は、工事そのものもそうですが、このように事前周知を徹底することが大変で、こういった周知作業も工事業者が行うのか、それとも管理組合が行うのか等の違いで、取替え費用に大きく影響してきます。

切断した鋳鉄管は給水管よりもかなり重く、作業は重労働となり、また、汚水が作業員にかかってしまう場合も多いため、職人が集まりにくく、現場によっては、人件費が割高になりがちという傾向もあります。

築20年経たずとも、横主管の劣化が著しく、鋳鉄管の肉厚が50%以上減ってしまっているマンションもありますが、ディスポーザーを使っているマンションにそういった現象が多くみられるようです。

住民がマナーを守って、油や固形物を極力捨てないようにすることで、横主管内での廃棄物や汚物の滞留量や堆積量が減り、劣化度合いも変わってくると考えられます。

管理組合としては、日ごろから、住民に排水口への捨て方のマナーを守るように情報を発信し続けるといった活動も大切かと考えます。

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