2024年5月27日
この記事のカテゴリー : 漏水に関する保険

単純計算とはならないですが、現在の管理組合の火災保険の契約期間は5年なので、2年で5%だとすると5年換算では12.5%となり、
たとえば100世帯のマンションであれば、5年で約13件
60世帯なら、約8件ですね。
築40年から築70年までの30年間では、5年の契約期間が30年÷5年で6期分あります。毎期の5年間で10%発生したと単純に仮定すると10%×6期分で60%となります。
ただ、築年数が古くなるほど漏水発生率は高くなると推測されますし、保険会社が全戸の60%もの漏水を許容しつづけるとは思えないので、どこかのタイミングで保険が更新できなくなると考えられます。
また、今後、5%でなくもっとシビアな割合になる可能性もあると考えられます。
また、給水管がライニング鋼管であれば、給湯管を取り替える際に一緒に取替えるほうが経済的です。
専有部の排水管が鉄管系であれば、これも給水管・給湯管と一緒に併せて取替えるのが経済的です。
なお、さきほどの漏水事故の発生件数ですが、共用部と専有部の区別に関係なくカウントされます。
一律でカウントされることからも、漏水リスクがはるかに高い、専有部の配管を優先的に取替えるほうが、保険を更新できなくなるリスクも減り、またマンション全体の資産価値もあがることも期待できますので、より経済的な考え方といえるでしょう。
専有部を優先すると、共用部の給水管、排水管まで取替える余裕が当面はなくなってしまうことが多いと思います。
その場合は、漏水が起きたその都度ごとに部分補修していく方法を取ります。
なお、給水管・排水管の両方を保全する流動式セラミックス方式の延命装置を設置することで、漏水や詰まりによる溢れのリスクを抑えることが期待できますので、延命装置の導入も経済的な方法であるといえます。
延命装置に関しては、こちらの投稿記事を参考にしてみてください。
「配管保全装置エルセ 21年後の検証 配管の保全効果」
「エルセ設置マンション 漏水発生率と費用削減効果」
また、被害者となった区分所有者の火災保険の水濡れ補償も併せて活用することもできます。
保険をうまく活用することで管理組合の保険での支払い額をより低くしていくことができます。
現時点では、この水濡れ補償も何度使っても保険料は原則あがりません。
ただ、水濡れ補償の免責額は現在のところ5万円となっています。
水濡れ補償の免責額5万円というのは、自動車保険と同様に、事故による賠償費用の5万円は自己負担しなくてはいけないということです。
この5万円分は、管理組合が負担すると事前に理事会等で取り決めておくことをおすすめします。
これらについては、こちらの投稿記事「漏水事故に自分の火災保険は使えるの?」をご覧ください。
それから、漏水事故で損保会社から支払われる保険金の金額よりも、事故件数が1件増えることによる保険料の値上がり額のほうが高くなる場合もありえますので、保険代理店に予想される値上がり額を確認したうえで、保険を使うかどうかの判断をすることをお勧めします。
それと、漏水リスクの高い専有部の配管を全て取り替えることができたのであれば、管理組合の加入している個人賠償包括特約を解約するということもひとつの選択肢です。
各区分所有者がそれぞれ個人賠償保険や外部オーナーであれば、施設賠償保険に加入しているかどうかを確認していく必要ありますが。
また、別の投稿記事でお話しましたが、管理会社が保険代理店を兼ねている場合、水増し請求されてしまうと、管理組合の保険の支払額が高額になってしまいます。
保険料の値上がりにもつながりますので、水増し請求されないように、保険代理店は管理会社には兼務させないようにするといったことも重要です。
水増し請求については、こちらの投稿記事「知らないうちに保険料大幅値上に!? 保険金水増し請求の実態!!」をご覧ください。
被害額が千万円単位となる場合も、まれであるといってもありえないことではありません。
求償されることを考えると、理想は漏水リスクのある配管の全てを取替えることといえます。
ただ、ここでマンションの置かれた状況も考えないといけません。例えば、100世帯で排水管の立管を全て取替えるために仮に8千万円かかるとします。
建替えや1棟リノベーションが難しいマンションで、管理費の滞納状態や修繕積立金の不足状況、所在不明世帯の割合の高さ等を考えると、管理組合の機能としておそらく築70年程度までしかもたないと思われるとします。
その状況で、果たして8千万円かけて取替えるべきなのか、あるいは、その費用は敷地売却するための解体費として温存しておくべきなのかなど、とても難しい選択を迫られることになるマンションも今後は増えてくると考えます。
一方、全ての配管を取替える余裕のないマンションでは、まず専有部を優先的に取替え、延命装置により、取替えることができない他の配管からの漏水や詰まりによるあふれをなるべく抑えておくことが必要となるでしょう。
修繕積立金に余裕がない管理組合では、このような対策が、修繕積立金の支出を抑えて、保険の更新をストップされるリスクを回避するための効率的な方法であると、現在のところ言えるのではないかと考えられます。
専有部の配管は漏水リスクが高く、かつ階下に及ぼす被害も大きくなりがちです。共用部の給水管はパイプシャフト内にあり被害額も少ないことが多いです。
共用部の排水管の立管は部屋の中にあることが多いですが、給水管よりは漏水してしまう水の量が少ない場合が多いので、やはり専有部の漏水リスクの高い配管を優先的に取替えていくのが得策と言えるのではないでしょうか。
配管保全センターでは、マンションの配管の材質や、あと何年住み続けることになりそうかといったことを総合的に考慮した配管の保全方針を無料でご提案するサービスをご提供しております。ご興味のあるかたは、お気軽にご相談ください。
