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築40年マンション 配管保全の費用比較 3つの保全方法で概算してみました

2020年4月22日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大

運営方針で修繕積立金の残高や配管保全に関する状況が異なってきます

マンションも築40年ほどになると、ちらほら水漏れや排水管の詰まりなどの問題が起きてきます。安心してマンションライフを過ごすために、給排水管はしっかりと保全しておきたいものです。では、築40年のマンションでは、この先どれくらいの費用を配管保全にかけたらいいのでしょうか。

このページでは、3つの異なる方法で給排水管の保全をした場合の費用シミュレーションを行ってみます。

一つ目は配管を交換(更新工事)した場合、二つ目はライニング法(更生工事)を行った場合、そして最後に延命工法を用いた場合です。参考:国交省「マンション専有部分等の配管類更新による 再生事例調査報告書」(8ページに掲載)

ごく一部の管理組合さんでは、「築何年まで住み続ける」と目標をたてて、管理運営していますが、残念ながら、多くの管理組合さんでは、何年までといった明確な目標がなく、今後の配管保全をどうしたらいいかわからないケースが多いと言えます。

下の表は、
① 何年住み続けるか決まっていない、もしくは決めようとしても合意形成できていない管理組合さん
② 築60年あたりで解体といった目標をシェアしている管理組合さん
③ 築80年以上住み続けるといった目標をシェアしている管理組合さん
の3パターンで、それぞれ配管保全に関する状況がどうなっているかを示しています。

①何年住み続けるか
決まっていない管理組合
②築60年あたりで解体する
目標を立てた管理組合
③築80年以上住み続ける
目標を立てた管理組合
今後必要な修繕や改良明確にしていない
(耐震対策も未対応)
必要な修繕はするが改良工事は必要最低限修繕も改良工事もする予定(かなり高額)
修繕積立金の使用状況無駄が多い賢く使っている賢く使っている
修繕積立金の残高状況不足気味不足していない十分ある
配管保全方針決まっていない状況に応じて賢く保全
(更新工事や延命工法)
賢い方法で保全
(更新工事や延命工法)

③の管理組合さんは、この先40年にわたりマンションを修繕・改良していく必要があるので、修繕積立金も無駄遣いせずに貯めています。更新工事や延命工事に関しても計画的に行っていける状況です。

②の管理組合さんは、この先20年ほどで最低限の修繕・改良を行い、配管に関しても状況に応じて交換もしくは延命工法を取り入れていく状況です。

①の管理組合さんは、配管を交換したくても修繕積立金不足で予算が足りないか、もしくは、高額な費用をかけて交換する合意が取れていません。ずるずると保全されないまま、水漏れが年々多くなってきている状況です。

今回の①の管理組合さんで、先に述べた3つの保全方法について費用比較しましょう。前提条件は以下になります。
・共用部の立管の給水管、排水管とも交換していない
・一部の部屋ではリフォーム時に配管を交換したが、排水管は階下の天井裏のスラブ下に配管されているため、共用部扱いとなって手を付けていない状況になっている。
・給湯管のピンホールや排水管の詰まりによる水漏れが多くなってきている

動画

 

 

保全方法① 全ての配管を交換(更新工事)する場合の費用シミュレーション

修繕積立金が不足しており、今後、耐震補強を行う可能性を考えると費用がかさむ配管交換はすべて行えない場合が多いのですが、仮にすべて交換したとすると以下のような予算感になります。(*100世帯で換算。施工業者によって見積額は異なります)。

配管費用(世帯あたり)備考
共用部立管の給水管30万・受水槽の直結化、既存配管を交換するのか等により異なる
立管の排水管 60万・専有部内に何本排水管があるか等により異なる
専有部給水管・給湯管30万・シンダーコンクリートに埋まっているか、露出配管にするか等により異なる
排水管50万・スラブ下配管をスラブ上にするのか等により異なる
合計170万*100世帯換算で総額1億7千万円

共用部の立管の給水管は、受水槽がある場合は、よく受水槽の撤去と同時に行ったりします。受水槽を撤去して直結化することで、立管の口径を太くする必要があるので、立管を交換するケースも結構多くなります。これは既存配管を交換するのか、露出配管を新たに設置するのかといった方法の違いで費用がかなり変わってきます。

給水管の立管の交換

共用部の立管の排水管は、みなさんの住んでいる専有部内に、何本あるのか、あるいはパイプシャフトの中にあるのかといった状況の違いで費用が変わります。

排水管の立管の交換

それから専有部の給水管・給湯管は、築40年前後だと、専有部の床の下にコンクリートがあり、そのコンクリートに配管が埋まっていたりします。これを交換するとなると、コンクリートを剥がす必要があり、工期も長く、費用もかなり高くなります。

シンダーコンクリートに埋まっている給水管
その場合は、天井裏に配管を這わせて、ある程度露出配管になるといったやり方をとりますが、これも費用が大きく変わります。

天井裏を這わして給水管を配管

参考:
築40年前後の専有部の排水管は、勾配をとるために階下の天井裏に配管されている場合が多いです。組合全体で専有部の排水管を交換する場合は、天井裏から工事を行うことが可能です。ところが、どこかの部屋の方が自分でリフォームしたいと思う場合は、通常、天井裏の排水管は共用部扱いとなっており、勝手に触れないので、スラブの上に排水管を配管するケースがどうしても多くなります。その場合は、床を全面的に張り替えて、しかも床を底上げするため、天井と床との高さが低くする必要があり、排水管の交換を行うところは、現状ではそれほど多くないと言えます。それで食用油や食べかすが詰まって水漏れ事故が頻繁に起きているのが現状です。

スラブ上に排水管を配管

保全方法② 給水管は外部電源法、排水管はライニング法(更生工事)を取り入れた場合の費用シミュレーション

配管を交換するのは高額すぎるので、給排水管それぞれに以下の工法を用いた場合の費用シミュレーションです。(*100世帯で換算。施工業者によって見積額は異なります。)

・給水管:配管内に電流を流すことで、配管がサビで腐食することを防げる外部電源法
・排水管:錆びを研磨剤でこそぎ落とし、配管の表面に樹脂を塗布するライニング法(更生工事)

配管費用(世帯あたり)備考
共用部立管の給水管10万・立管の本数や階数等により異なる
立管の排水管 10万・専有部内に何本排水管があるか等により異なる
・配管の研磨回数と塗布回数等により異なる
専有部給水管・給湯管15万・クエン酸洗浄を実施するか等により異なる
・銅管のピンホールへの効果は期待できないので、給湯管は更新するのが望ましい場合もあります(その場合は専有部の給水管も交換してもそれほど費用が変わらないので、どちらも交換するケースも多いといえます)
排水管20万・蛇口の数により異なる
・配管の研磨回数と塗布回数等により異なる
合計55万*100世帯換算で総額5.5千万円

保全方法③ 排水管への保全効果も期待できる流動式セラミックス法を取り入れた場合の費用シミュレーション

受水槽の手前か直結増圧ポンプの後ろに1台設置するだけで、共用部・専有部の給水管、排水管を保全し、給湯管のスケールの剥離も期待できる流動式セラミックス法を用いた場合の費用シミュレーションです(*100世帯で換算。施工業者によって見積額は異なります)。

配管費用(世帯あたり)備考
共用部立管の給水管・専有部と比べて配管が太くて肉厚があるため、この保全方法で水漏れリスクの回避が期待できる
立管の排水管 ・詰まりのリスクを抑え、共用部と専有部の継ぎ手部分の腐食を遅らせ、水漏れリスクの回避が期待できる
専有部給水管・給湯管・徐々に錆びやスケール(カルキ)が剥離するが、蛇口に浄水器を3カ月程度つけることで対応できる
・給湯管のピンホールには効果が期待できないので、給湯管を交換する選択も考えられる(その場合は専有部の給水管も交換してもそれほど費用が変わらないので、どちらも交換するケースも多い)
・世帯あたり5~7万円かかるオゾン洗浄の代替工法としても期待できる
排水管・食用油や食べかす等が詰まるリスクを抑え、錆びの進行も遅らせて、水漏れリスクの回避が期待できる
・高圧洗浄の回数を減らすことで高圧洗浄の費用削減効果も期待できる。
・また高圧洗浄の回数を減らすことで、排水管のエルボー部が高圧洗浄のコードでこすれて破損するというリスクを低減することも期待できる
合計10万*流動式セラミックス装置の本体と設置費用は、100世帯の場合は総額で1千万円となるが、住戸がファミリータイプかワンルームタイプか、受水槽の有無等で異なる

各保全方法の費用比較

今回の前提条件下でのシミュレーション結果は、以下となりました。
・保全方法① 配管を全て交換     :世帯あたり170万円
・保全方法② 外部電源法とライニング法:世帯あたり  55万円
・保全方法③ 流動式セラミックス式  :世帯あたり  10万円

保全方法③は、完全に水漏れリスクをゼロにすることはできません。しかしながら修繕積立金不足の問題がある中で、給排水管の両方を保全しながら、水漏れリスクを減らす妥協案として、検討の価値があると考えます。

なお、配管保全センターでは、交換(更新工事)のご提案もしています。
・足場をなるべく使わない
・工期を極力短くする
・専有部内での作業をなるべく少なくする
といった工夫により、管理組合さんに喜ばれるリーズナブルな価格を実現できることが多いといえます。先日も受水槽撤去と、給水管の更新工事で他社が1600万円の見積もりだったところを、弊社からの見積もりは900万で提示できたという事例もあります。

配管保全の予算が足りずにお困りの方、他社の見積もりが妥当か確認したい方、他の工法を模索したい方、そのほか配管保全に関するお悩みに関して、ご遠慮なく配管保全センターにお問い合わせください

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