2026年10月22日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

まず、なぜ今までのやり方では成り立たなくなるのか、というお話からです。
ご存じのとおり、工事費はここ数年で大きく上がっています。
職人さんの人手不足に加えて、資材の値上がりも続いています。残念ながら、この流れが元に戻ることは考えにくいと思います。
一方で、多くのマンションの長期修繕計画は、相変わらず12年から15年ごとに大規模修繕を丸ごと繰り返す、という前提で作成されています。
この前提をキープしたまま工事費だけが上がっていくと、どうなるでしょうか? どう考えても資金が足りなくなるのは目に見えています。
そこで、足りない分は、積立金の値上げや一時金で埋めるしかありません。
ところが、年金で暮らしている方が増えれば、値上げにも限界があります。
さらに、築年数が経てば経つほど、住んでいる方の事情や考えもばらばらになっていきます。
長く住んでこられた方の中には、「自分はこの先そう長くないから、大きなお金をかけるのは、できれば先延ばしにしてほしい」と感じている方もいらっしゃいます。
一方で、中古で購入された若い世代の方は、これから何十年も住み続けるつもりですから、「修繕はしっかりやってほしい」と思われているでしょう。
また、年数が経ったマンションでは、部屋を賃貸に出している外部オーナーさんも増えてきます。
自分が住んでいない建物に、できるだけお金をかけたくないと考える方も少なくありません。
どの立場の方も、それぞれの事情を考えれば無理のないことです。
ただ、これだけ考え方が違う方々が、同じ一つの建物でお財布を共有しているのですから、古いマンションほど、話がまとまりにくくなるのは、ある意味で当然のことです。
つまり問題は、積立金の額というより、長期修繕計画の前提そのものにあります。今までの計画は、全員が同じように値上げを受け入れてくれることを前提にしてきました。
ところが今では、それが成り立ちません。理事会が袋小路に入ってしまうのは、組合の努力が足りないからではなく、前提が昔のままだからだといえます。
今こそ、その前提となる慣例を見直す時期に来ているのだと、私は考えています。
では、どういった慣例を変えればいいのか?
一つ目は談合が生じやすい発注方法をし続けるという慣例をやめ「談合フリーの発注」にすること。つまり、工事の発注の仕方を変えるということです。
マンションの改修工事では、設計を担当した会社が、そのまま工事業者の選定まで取り仕切るケースがよくあります。
全ての管理会社や設計コンサルタント会社がそうだとは言いませんが、一般的に、管理会社や設計コンサルタントを通すことで、競争原理が働かず、価格が高くなりやすくなります。
先日も、大規模修繕工事をめぐって公正取引委員会により設計コンサルタントと施工会社の談合が認定されたとニュースで報じられました。
これはほんの一部の業者で取り締まりが行われただけで、課徴金も必要経費程度の額でしたので、談合はこれからもなくならないといえるでしょう。
インフレで工事費そのものが上がっている今、そこに上乗せして、談合によって高い見積り金額で工事をすることにまでなったら、積立金がいくらあっても足りません。
積立金の値上げの話をする前に、まず、工事を発注する際に、「談合の入り込まない発注方法に変える」。これが一番最初にやるべきことです。
たとえば、配管工事ならば、配管の仕様については、配管に詳しい専門職の人が見れば、1〜2時間ほどの現地調査でほぼ分かります。
何百万円もの設計費を支払い、業者選びまで任せてしまう必要はありません。
大切なのは、「仕様を決める」ことと「業者を選定する」ことを分けて、発注の主導権を組合がしっかり握ることです。そうすれば、談合が入り込む余地はほとんどなくなります。
これは配管工事に限った話ではありません。
外壁や屋上を含めた大規模修繕工事でも、考え方は同じです。ここでも「談合フリーの発注」を行っていくことです。
実際に、当センターがお手伝いしたマンションでは、専有部の給水管と給湯管の工事が1戸110万円から55万円に、共用部の排水管が1戸94万円から43万円に、共用部の給水管が1戸40万円から15万円弱と大幅に費用削減することができました。
受水槽をなくす直結増圧化の工事でも、総額1,500万円が690万円と大幅減額になっています。
どれも工事内容は同じで、最初に組合が得ていた見積り金額の半分以下になりました。
詳しくは最近の投稿記事でご紹介していますので、気になる方はご覧ください。
慣例①の「談合が生じやすい発注方法」を変えただけだと十分とは言えません。
12年~15年ごとに大規模修繕を繰り返す計画のままでは、将来的にどんどん支出が積み上がっていくからです。
そこで二つ目として、これまでの慣例をやめて、「大規模修繕を12年や15年ごとにやる必要はない」という考え方を取り入れることです。
「大規模修繕は12年ごと」と聞くと、何か決まりがあるように感じるかもしれません。でも実際は、業界の慣例になっているにすぎません。
外壁のシーリングや鉄部の塗装は、従来の材料だと十数年で劣化していきます。
そのため、ほぼ12年ごとにマンションを囲うように足場を組んで、建物全体の塗装などをやり直してきたわけです。
ところが今では、耐用年数30年から40年と実証されている塗装材料が開発されています。
これは従来の塗装材料のおよそ2倍から3倍の耐用年数です。
こうした材料を使って一度しっかり大規模修繕をしておけば、その後はタイルなども含めて、傷んだところだけを直す小規模な修繕でつないでいくことができます。
大規模修繕の費用の中で、かなりの割合を占めるのが足場を組む費用です。
この足場を組む回数が減るだけでも、大きなコストダウンになります。
高耐久の材料は、従来の材料より値段が高くなります。
それでも、「談合フリーの発注」なら、1回あたりの工事費は従来並み、うまくすれば7割程度に抑えることができます。
そのうえで、今後必要となる改修工事費用を大幅に減額することができます。
それでは、「談合フリーの発注」「大規模修繕を12年ごとにやらない」という考えを取り入れた場合、どれくらい費用を削減できるのか?
築30年・100戸のマンションで、1戸あたりの金額でシミュレーションしてみます。
従来通り12年ごとに大規模修繕を繰り返すと、築70年までだとするとこの先4回行うことになります。
以前は大規模修繕費用は世帯あたり100万円が相場だと言われていましたが、最近の値上がりで世帯あたり150万~160万円になったと言われています。
シミュレーション上では、1回あたり1戸150万円とすると、4回で600万円になります。
これに共用部・専有部の配管の取替え工事費用を仮に談合の影響を受けてしまって1戸200万円と仮定すると、1戸あたりの合計は800万円、100戸で総額8億円掛かることになります。
一方、「談合フリーの発注」で、高耐久の材料を使って一度しっかり大規模修繕をした場合はどうなるか。
大規模修繕費用は高耐久材料を使ったとしても、談合の影響を受けず費用としては同じ1戸150万円とします。
その後は例えば悪くなったところだけを小規模修繕で改修するとして1戸あたりの小規模修繕額の合計を75万円と仮定すると、150万+75万で225万円。
配管工事も談合フリーの発注で1戸100万円に収まったと仮定すると、合わせて1戸あたり325万円、100戸で3.25億円となります。
その差額は約4億円以上、1戸あたり400万円以上の減額になります。
これだけ減額できれば、積立金の値上げ幅を大きく抑えることができます。マンションによっては、値上げせずに済む可能性もあります。
値上げ幅が小さければ、「これ以上の負担は困る」という方も、「建物はしっかり守りたい」という方も、同じ計画に乗ることができます。
立場の違う方々が歩み寄れる、ちょうどいい落としどころが見えてきます。
従来の方法での大規模修繕の回数が4回でなく3回としても、また、高耐久材料を使っても小規模修繕の総額が75万円でなく150万円になったとしても、依然としてかなりの費用削減になります。
ここでお伝えしたいのは、談合フリーで高耐久材料使用での修繕を行っていけば、かなりの削減効果を期待できるということです。
そして、将来的に大規模修繕の費用を減額できることがわかると、さらにもう一つ良いことがあります。
それは、これまで「お金がないから」とあきらめていた修繕などにも、手を伸ばす余裕が生まれることです。
たとえば専有部の給湯管です。
築30年以上の多くのマンションの給湯管の素材は銅管ですが、銅管はマンションの中で最も漏水が起きやすい配管です。
漏水事故が続くと、マンション全体の保険料が値上りしたり、保険の更新を断られたりすることもあります。
それによって修繕積立金の大幅な値上げを余儀なくされたり、マンションの資産価値が下がったりと、大きな影響を及ぼしかねません。
ところが、給湯管は専有部分として扱われていることが多く、ほとんどの組合で更新対象として長期修繕計画にも載っていません。
給湯管の取り替えは各ご家庭にお任せしている、というマンションが多いと思います。それも一つの考え方です。
ただ、費用に余裕が生まれれば、組合として一斉更新を行うといった選択肢も持てるようになります。
積立金に余裕ができれば選べる道が増える、ということに大きな意味があることがお分かりいただけたかと思います。
ここまでお話しした考え方は、どのマンションでも取り入れることができるものです。
ただ、配管工事の発注の見直しや長期修繕計画の作り直し、マンション管理規約の改定、そして総会までに住民の皆さんの合意を得るところまで、理事会だけで進めるのはかなり大変な作業だといえます。
特に難しいのが合意づくりです。
「12年や15年ごとの大規模修繕をやめて、本当に大丈夫なのか?」「本当に安く工事ができるのか?」総会でこうした質問を受けたときに、専門的なところまですべて答えるのはたやすいことではありません。
しかも、立場や意見の異なる方それぞれに納得していただく必要があります。
このところ談合のない見積もりを出せるところは、少しずつ増えてきました。それ自体はとても良いことです。
ただ、修繕積立金に余裕のある段階まで持っていくには、工事費用を安くするだけでなく大規模修繕の回数を減らし、「小規模修繕でつないでいく長期修繕計画」を組み立てていくことが求められます。
工事でのコストダウンと修繕計画の見直しという両輪の改革が揃って初めて、「工事には賛成、値上げには反対」という袋小路を抜け出すことができます。
配管保全センターでは、この両輪となる改革をワンストップでお引き受けしています。
「談合の入り込まない配管工事の見積りづくり」「長期修繕計画の見直しと新規作成」、マンション管理規約の改定、そして総会や住民説明会の資料づくりから当日の説明まで、私たちが一緒に進めていきます。
ご希望があれば、専有部の給湯管や給水管の更新もご相談いただけます。
「工事には賛成、値上げには反対」という大きな壁を、理事会の皆さんだけで突き破ろうとする必要はありません。
私たちは、現地調査をしてから2週間から1か月ほどでお見積りをお出ししています。
もちろん、ほかの会社から相見積もりを取っていただいてかまいません。どこに頼むかは、あくまで組合の皆さんに決定権があります。
