2026年10月15日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

専有部は、それぞれの区分所有者が管理します。ですから、いつ更新するかも、本来はそれぞれのお宅の判断ということになります。
そのため、長期修繕計画にも、専有部の配管の更新費用は計上されていないことがほとんどです。
ところが、国内のマンションで起きている漏水のうち、9割以上は、専有部の給湯管に使われている銅管からの漏水です。
つまり、漏水事故のほとんどは、管理組合の管轄外とされている場所で起きています。
管理組合から更新を呼びかけても、決めるのはそれぞれのお宅ですから、なかなか進みません。
放っておくと、漏水が頻繁に起きるマンションになり、売ろうとしても買い手がつきにくく、資産価値も大きく下がりかねません。
そこで最近は、「専有部の配管も組合主導で、修繕積立金を使って一斉に更新しよう」と決断される管理組合が増えてきました。
今回は、そうしたマンションの事例です。
このマンションは東京都内にある約60世帯の分譲マンションです。
当初の見積りでは1戸あたり110万円だったものが、配管保全センターが現地調査をしてお出しした見積りでは、税抜き55万円になりました。ちょうど半額です。
60世帯分に換算すると、総額およそ6,600万円が3,300万円になり、差額はおよそ3,300万円です。
どちらも同じ工事内容、同じ工事範囲での金額で、特別な工夫をしたわけでもありません。
では、なぜ、これだけの差が出たのでしょうか。
今回のマンションでは、給湯器は各世帯の水道メーターのあるパイプシャフト内にあり、既存の配管は床下を通っていました。
更新工事というと、床をすべて剥がして、既存管を撤去して、同じ場所に新しい管を入れ直す、というイメージをお持ちかもしれません。
ただ、今回使った架橋ポリエチレン管は、柔らかく曲げられる樹脂管なので、既存の配管と同じルートを通す必要がありません。
そこで今回は、廊下や部屋の床は剥がさず、天井裏のすき間に新しい管を通しました。
洗濯パンの下にもともとある開口部分や、排水の立管が通っている壁の中のすき間なども利用して、床や壁を壊す範囲を最小限にしています。
既存の鉄管は、中の水を抜いたうえで、原則そのまま残しています。すべて撤去しようとすると、そのためだけに床や壁を壊すことになるからです。
ただ、このマンションは天井に梁が何本も通っていて、そこが注意点でした。
天井の中に配管するときは、新築時から梁に開けられている「スリーブ」という穴に管を通します。
このスリーブがどこにあるかは、通常、天井を開けてみないとわかりません。
この点が、このあとお話しする工期の差につながります。
では、なぜ見積り額が半額まで下がったのか?その理由をお話しします。
いちばんの理由は、工期の違いです。配管の工事費の中で大きな割合を占めているのが、職人さんの人件費です。
人件費は「何人で、何日かかるか」で決まりますので、工期が長くなれば、その分だけ費用が積み上がっていきます。
また、現場を管理する担当者の費用や、仮設事務所や資材置き場などの費用も、その期間ずっとかかり続けます。
当初の管理会社や設計コンサルタントの見積りでは、梁のどこにスリーブがあるかがわからないため、天井のあちこちに点検口を開け、部屋の天井も解体して、スリーブを探しながら配管を通す前提でした。
工程は、1日目に開口、2日目に配管の更新、3日目に内装の復旧と、1戸あたり3日間です。
この工程だと、2部屋を並行して工事しても、仕上がるのは2日に1戸のペースです。60戸では、単純計算で121日かかります。
一方、配管保全センターの見積りでは、1日目の朝9時から夕方5時までで、開口から配管の更新までを終え、2日目の半日で内装を復旧します。
1戸あたり1日半です。1日に1戸ずつ仕上がっていくので、60戸で61日。全体の工期はおよそ半分になります。
1戸にかける日数が3日から1日半になれば、職人さんの人件費はその分少なくなります。
そして、全体の工期が半分になれば、現場を管理する費用も、仮設の費用も半分です。これが、見積り額の差になって表れました。
工期が短いことは、費用だけでなく、住民の皆さんにとってもメリットがあります。
専有部の工事中は基本的に在宅をお願いしますが、その日数が、当初の見積りでは3日間、我々の工程では1日半で済みます。
では、なぜ同じ工事なのに、ここまで工程が変わるのでしょうか。
マンションの配管工事では、元請けの会社が工事を受けて、その下に1次下請け、2次下請け、さらに3次、4次と、何層にも分かれていることがあります。
層が重なれば、そのたびに手数料が乗り、割高になります。
また、下請けの層が重なるほど、指示の伝わり方も遠回りになり、すばやい対応が難しくなります。
その分、1戸あたりの工事日数も長くなりがちです。
配管保全センターがご紹介する施工会社は、自社の職人でほとんどの工事をまかなえるため、下請けが何重にもなっていません。
現場の統率もとりやすく、1戸1日半という短い工程でも、遅れることなく工事を進められました。
熟練の職人さんが多いので、1人あたりの単価は高くなります。
それでも、少数精鋭で短い日数で仕上げるので、人件費の総額は結果的に少なくて済み、全体の工期も短くなります。
すべての管理会社や設計コンサルタントがそうだとは言いませんが、彼らが施工会社を選ぶ条件としてよく挙げるのが、「資本金〇億円以上」「従業員〇名以上」といった会社の規模です。
ところが、規模の大きい会社ほど、実際には自社の職人をほとんど抱えておらず、何重もの下請け構造になっていることが多いため、工期が長く、費用も高くなりがちです。
以前は、会社の規模が大きいほうが、不具合が起きても資本力があるので安心だと言われていました。
確かに、昔はそのとおりだったかもしれません。
ただ、今は、工事の瑕疵(かし)、つまり欠陥や不具合に備える保険が、かなり充実しています。
万が一、施工会社が倒産しても、管理組合が保険会社に直接請求して、補修の費用を受け取れます。
配管保全センターが提携している施工会社も瑕疵保険に加入しています。
逆に、会社の規模で絞り込んでしまうと、配管工事が専門で実績も豊富、でも規模はそれほど大きくないという施工会社が、最初から候補に入りません。
今回のマンションでは、以前、漏水の対応で、我々の提携会社が何部屋か同じ工事をしたことがありました。
そのため、スリーブの位置をすでに把握しており、1日目で開口から配管の更新まで終える工程を、自信をもって組むことができました。
ただ、専有部配管の更新工事の費用は、給湯器の位置、配管を天井に通せるか床下になるか、梁やスリーブの状況、間取り、資材の搬入経路や置き場を確保できるか、といった条件によって大きく変わります。
ですので、どのマンションでも1戸55万円でできるわけではありません。
今回のマンションの条件下では、この金額だったということです。
ファミリータイプであれば80万円から100万円以上かかる場合もあれば、ワンルームなら20万〜30万円でできる場合もあります。
お伝えしたいのは、金額そのものよりも、同じ建物・同じ工事内容でも、どの業者から見積りを取るかによって、これだけ違う数字が出てくるということです。
【公正取引委員会による取締り】でも、談合はなくならない?! 配管工事で高い見積りを回避する方法
という投稿記事で詳しくお話ししていますので、ぜひご覧ください。
