2026年9月2日
この記事のカテゴリー : 受水槽の保全・直結化

配管保全センターでご相談を受けた直結増圧化の案件で、東京都内にある55世帯のマンションでは、およそ1,500万円と言われていた工事が、税抜き690万円と大幅なコストダウンとなりました。1戸あたりにすると、およそ27万円が12万円台になった計算になります。
前回の動画では、共用部の給水管の更新工事で、1戸40万円の見積りが15万円になった事例をお話ししました。
見積り額が安くなった構造的な理由は、よく似ています。特別な工夫をしたわけではありません。
すべてがそうだとは申しませんが、最初に出てくる見積りが、それだけ高くなっている場合が少なくない、ということだと思っています。
なぜ、これだけの差が出たのか、お話いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
念のため申し上げますが、今回も、同じ工事内容で、配管保全センターが見積りを出し直した結果です。
1,500万円の見積りと、690万円の見積りは、まったく別の工事を比べているわけではありません。
どちらも、受水槽を使う方式をやめて、水道の本管から直接、各住戸に水を送る方式に切り替える直結増圧化工事です。
出来上がりは同じです。それでも、これだけの差が出ました。
ご存じの方も多いと思いますが、簡単に直結増圧化という工事についてご説明しておきます。
多くのマンションでは、水道の本管から入ってきた水を、いったん受水槽に貯めて、そこからポンプで各住戸に送っています。
直結増圧化というのは、この受水槽を使わずに、本管の水をそのまま増圧ポンプで押し上げて、各住戸に届ける方式に切り替えることです。
直結増圧化すると、受水槽の清掃や点検、水質検査が不要になります。また受水槽そのものの更新費用もいらなくなります。
水も貯め置きではなく直接水道の本管からひくことになりますから、メンテナンスコストや衛生面を評価される管理組合が多いといえます。
今回の工事は、大きくわけて4つになります。
一つ目は、給水管の増径です。敷地内にBバルブといわれる道路から入ってきた引込管の止水栓があります。
そこから親メーターを通って受水槽までの配管の口径が40Aでしたので、これを50Aに太くします。
二つ目は、増圧ポンプの設置です。今回は、既存の加圧ポンプが入っているポンプ室に、そのまま増圧ポンプを設置します。
三つ目は、その増圧ポンプから先の配管への接続です。既存の加圧ポンプの2次側、つまりポンプから建物側に出ていく配管に接続しました。
四つ目は、空気抜き弁の交換です。各系統の最上階には、配管の中にたまった空気を抜くための弁がついています。
直結にする場合は、これを吸排気弁という、空気を抜くだけでなく吸い込むこともできる弁に替える必要があります。
工事の内容としては、以上です。
二つ目は、機器の選び方です。
増圧ポンプは、世帯数と、建物の高さと、同時に使われる水の量から、必要な能力を計算して機種を決めます。
当初の見積りでは、必要な機種よりも上位の機種が選定されていました。上位機種にすれば、当然、本体の価格が上がります。
どの機種が適切かは、一般の方では、判断がつきません。
業者に、「この機種で本当にいいのか?」と聞いても、その答えが正しいのかどうかもわからないということですね。
三つ目は、②と近い話ですが、どの機種を選ぶかではなく、同じポンプの見積り額がいくらなのか、という点です。
増圧ポンプには定価があります。たとえば、定価が600万円のポンプがあったとします。
この同じポンプを、7割引きの180万円で見積りを提示する業者もあれば、3割引きの420万円で見積もりを提示する業者もあります。
同じメーカーの、同じ機種です。それでも、この時点で240万円の差が出ます。
システムキッチンを購入するときも定価から大幅な値引きがされるのが当たり前だと言えますが、ポンプもそういった価格体系となっているということです。
ただ、ここは慎重に見ていただきたいところです。
ポンプの割引率を大きく見せておいて、その分、ほかの部材の割引を少なくする、という見せ方もできます。
ですので、ポンプの値引き率だけを取り出して、この見積りは安い、高いと判断することはできません。
あくまで、工事全体の金額で比べていただく必要があります。
それから、ポンプの金額が下がる場合には、別の事情もあります。
別のマンション向けに製作していたポンプが、何らかの理由で急にキャンセルになって、余ってしまうことがあります。
その機種がたまたま条件に合えば、それを流用することで、大幅に安く見積り額を提示するという場合もあります。
ちなみに、インターネットで増圧ポンプを探しますと、驚くほど安い価格が出ていることがあります。
ただ、こうしたものは、メーカーのアフターサービスを受けられない場合が多くあります。
ポンプは、設置して終わりの機器ではありません。10年以上使い続けて、その間の点検は欠かせません。
安いという理由だけでインターネットで購入するとったことはお勧めしません。
工事の範囲について、もう少し補足しておきます。
直結増圧化では、道路の下を通っている水道の本管から、敷地に引き込んでいる管が細いと、そこを太くする工事が必要になる場合があります。
これは道路を掘る工事になりますので、費用も工期もかかります。
今回のマンションでは、この引込管が最初から50Aでした。つまり、道路からの増径工事は必要ありませんでした。
必要だったのは、敷地内のBバルブから親メーターまわりの、40Aだった部分を50Aにする工事だけでした。
東京都の場合、道路部分から親メーターまでの給水管を太くする必要があるときは、その工事を水道局が施工します。
そして、その際にはメーターバイパスユニットの費用も水道局が負担してくれます。
メーターバイパスユニットというのは、親メーターの交換や点検のときに断水させないための、迂回用の配管ユニットがついた親メーターのことです。
今回は、引込管が最初から50Aでしたので、水道局が施工する増径工事が必要ありませんでした。
ですので、道路を掘る費用はかからなかった代わりに、メーターバイパスユニットの費用は管理組合の負担になりました。
ここまでお話ししてきましたが、直結増圧化の工事は、建物によって条件がまったく違います。
引込管が細ければ道路の増径工事が必要になりますし、親メーターから増圧ポンプまでの距離も短かったり長かったりします。
世帯数でも変わってきます。ですので、直結増圧化は必ず690万円でできます、という話ではまったくありません。
今回のマンションの条件下ではこの金額だったということです。
お伝えしたいのは、金額そのものよりも、同じ建物・同じ工事内容でも、誰から見積りを取るかによって、これだけ違う数字が出てくるということです。
最後に、設計コンサルタントに依頼をされる場合の注意点をお話しします。
直結増圧化の工事は、見るべきポイントが決まっています。引込管とメーターまわりの口径のサイズがいくつか。
増圧ポンプをどこに置いて、どこに接続するか。空気抜き弁がどうなっているか。
現地を1時間ほど調査させていただければ、仕様は決められます。
大規模修繕工事のように、時間をかけて設計をして、設計費用に何百万円もお支払いいただくような内容ではありません。
そのうえで、前回の投稿記事でもお話しましたが、注意点を2つ申し上げます。
一つは、すべてのケースがそうだとは言えませんが、直結増圧化の工事でも業者どうしで話し合いがされてしまう、いわゆる談合が起きやすいという点です。
去年あたりからメディアでも談合の違法性について報道されるようになりましたので、もう今後は起きないだろうと思われている方も多いと思いますが、そう簡単にはなくならないと思っています。
二つ目は、どの業者にするかという選定を設計コンサルタントの判断に委ねるルールになっていますと、我々のような提案は「こんなに安いのには何かある」とケチをつけられて、はっきりとした理由もないままはじかれてしまうことが少なくない、という点です。
ここでは、我々にお声がけいただいた場合の手順も、ご説明しておきます。
まず、管理組合ご自身がほかの業者に相見積りを取れるように、金額抜きの見積書や、工事の概要書をお作りします。
これを各施工会社に提示して相見積りを取っていただければ、同じ条件で金額を比べられます。
つまり、設計コンサルタントに頼まなくても、管理組合ご自身で業者を比べられる状態になるということです。
