2026年9月28日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

では、今回ご紹介する事例です。
東京都内にある、7階建て、約80世帯の分譲マンションで、共用部の排水管の立管の更新工事に関して1戸あたり94万円だった見積りが、税抜き43万円と大幅値下げになりました。
80世帯で換算しますと、はじめの見積りは総額およそ7,500万円。
配管保全センターが見積りをした結果は、同じ工事内容で総額およそ3,440万円です。
差額はおよそ4,000万円、率にすると5割以上下がった計算になります。
今回も、特別な工夫をしたわけではありません。
見積り額が下がった構造的な理由は、給水管や直結増圧化の工事の場合とよく似ています。
では、なぜ、これだけの差が出たのかです。
念のため申し上げますが、今回も、同じ工事内容、同じ工事範囲で見積りをして出てきた金額です。
94万円の見積りと、43万円の見積りは、まったく別の工事を比べているわけではありません。
どちらも、キッチンの排水立管を新しい管に取り替える工事で、工事範囲や仕上がりも同じです。
それでも、これだけの差が出たというのはどういうことでしょうか。
簡単に、今回の工事についてご説明しておきます。
排水立管というのは、1階から最上階まで、各階を縦に貫いている太い排水管のことです。
各住戸のキッチンやお風呂からの排水は、横向きの配管を通って、この立管に集まり、下へ流れていきます。
立管は、各住戸の専有部の中を通っていても、共用部の扱いになります。
工事の流れとしては、まず各住戸で、立管が通っている部分の壁を開けます。
上階と下階の間の貫通部のコンクリートを壊し、古い立管を撤去して、新しい管に取り替え、各住戸から伸びている横向きの排水管とつなぎ直します。
最後に、開けた壁を元に戻します。これを、立管の系統ごとに、下の階から上の階まで行っていきます。
工事をしている間は、その系統の住戸では、キッチンの排水が使えなくなります。この点は、あとでお話しする工期の話にも関わってきます。
工事の範囲について、もう少し補足しておきます。
このマンションでは、トイレやお風呂などの立管は、すでに樹脂の管に替わっていました。
ですので、今回の工事の対象からは外れていて、キッチン専用の立管だけを取り替えています。
また、マンションによっては、排水立管のすぐ横に「通気立管」という管が並んでいることがあります。
排水をスムーズに流すための、空気の通り道になる管です。
今回のマンションにはこの通気立管がなく、キッチンの排水立管1本だけという、比較的シンプルな構成でした。
通気立管がある場合や、トイレやお風呂の立管もあわせて取り替える場合には、当然、工事の範囲も金額も変わってきます。
一つ目の理由は、以前の投稿記事でお話ししたことと同じです。
管理会社や設計コンサルタントが提示している見積りかどうかで、価格差が生まれるという点です。
今回の94万円の見積りも、管理会社と設計コンサルタントが手配した業者から出てきたものでした。
おさらいになりますが、どの管理会社や設計コンサルタントもそうだという話ではありません。
ただ、あらかじめ、どの施工業者が受注するかが話し合いで決まっていると、競争原理が働かず、適正な価格になりにくくなります。
実際に工事を担当する業者は、本来100で済む工事に150といった見積りを出しがちになります。
そこに、管理会社と設計コンサルタントの手数料が上乗せされます。すると、最終的に理事会に届く金額は、200近くになるということです。
今回の94万円と43万円の差も、こうした積み上がりが大きく影響していると考えられます。
二つ目は、工事期間、つまり工期の違いです。
配管の工事費の中で大きな割合を占めているのが、職人さんの人件費です。
そして人件費は、基本的に「何人で、何日かかるか」で決まります。
ですから、同じ工事でも、工期が長くなれば、その分だけ人件費が積み上がっていきます。
それだけではありません。工期が延びれば、現場を管理する担当者の費用や、仮設事務所や仮設トイレなどの費用も、その期間ずっとかかり続けます。
今回、当初の見積りと我々の見積りでは、工事にかかる日数の見込みに差がありました。
当初の見積りでは、1系統を3ブロックに分け、各ブロックで1日目に壁の開口、2日目に貫通部のコンクリートの斫り、3日目に既存管の撤去と新規管の配管、4日目に内装復旧となっていました。
この場合、排水制限は下層ブロックでは工事期間中に1回、中層ブロックでは2回、上層ブロックでは3回必要とされていました。
それに対して我々の見積りでは、1系統を2ブロックに分けるため、排水制限は下層ブロックでは1回、上層ブロックでは2回で済みます。
また、壁の開口から新規管の配管までを1日目に行い、2日目に各戸の内装復旧を行うという内容でした。
同じ内容と仕上がりの工事でも、段取りと経験の違いで工期が変わり、それがそのまま金額の差になったということになります。
工期が短いことは、住民の皆さんにとってもメリットがあります。
先ほどお話ししたように、工事中はその系統の住戸でキッチンの排水が使えません。
工期が短ければ、キッチンが使えない日数も、室内に職人さんが入る日数も少なくて済みます。
費用だけでなく、暮らしへの負担も軽くなるわけですね。
ただし、工期は、作業スペースの広さや、施工環境の条件によって変わります。
たとえば、各住戸の入口横の配管が収めてあるスペースをパイプシャフトといいますが、このパイプシャフト内にどれだけ作業スペースがあるか。
立管が貫通しているコンクリート部分がどれだけ厚いか。
キッチンの配置や、壁の材質がブロックなのかボードなのか。
資材を運び込む経路や、エレベーターの大きさは十分あるか、作業車を停める場所や資材・廃材の置き場が確保できるかどうか。
こうしたさまざまな条件によって、同じ排水立管の工事でも、必要な日数は大きく変わってきます。
ですので、排水立管の更新は必ず1戸43万円でできます、という話ではまったくありません。
今回のマンションの条件下では、この金額だったということです。
お伝えしたいのは、金額そのものよりも、同じ建物・同じ工事内容でも、誰から見積りを取るかによって、これだけ違う数字が出てくるということです。
最後に、設計コンサルタントに依頼をされる場合の注意点をお話しします。
共用部の排水管の更新工事も、給水管と同じで、見るべきポイントが決まっています。
立管がどこを通っているか、どの管材で、どういう手順で取り替えるか。現地を1時間ほど調査させていただければ、仕様は決められます。
大規模修繕工事のように、時間をかけて設計をして、設計費用に何百万円もお支払いいただくような内容ではありません。
業者どうしの話し合い、いわゆる談合が起きやすいこと。
業者選定を設計コンサルタントの判断に委ねていると、我々のような提案が「こんなに安いのには何かある」とはじかれやすいこと。
この2つは、これまでの投稿記事でもお話ししたとおりです。
今回は、それに加えて、特にお伝えしておきたいことがあります。
それは、施工会社を「会社の規模」で選ぶ必要は、今はほとんどなくなっている、ということです。
設計コンサルタントが施工会社を選ぶ条件として、「資本金〇億円以上」「従業員〇名以上」といった、会社の規模を入れることがよくあります。
その理由として説明されるのが、「万が一、工事のあとに不具合が出たときに、会社に体力がなければ直してもらえない」というものです。
これは、以前であれば、そのとおりでした。不具合を直す費用を負担できるかどうかは、その会社の資本力にかかっていたからです。
ただ、今は事情が変わってきました。工事の瑕疵(かし)に備える保険が、かなり充実してきたからです。
「瑕疵」というのは、工事の欠陥や不具合のことです。
今は、国が指定した保険法人が扱っている、マンションの共用部分の修繕工事を対象にした瑕疵保険が充実しており、給排水の管の工事もその対象になります。
また専有部についても、共用部と同じタイミングで工事をすれば、この瑕疵保険の対象になります。
この保険のいちばん大事なところは、万が一、施工会社が倒産してしまって直してもらえなくなった場合でも、管理組合が保険法人に直接請求して、補修の費用を受け取れるという点です。
つまり、施工会社の体力に頼らなくても、不具合に備えられるということです。
また、こうした保険の多くは、保険法人の検査員が工事中に現場を検査して、それに合格することが加入の条件になっています。
施工会社とも管理組合とも利害関係のない、第三者の目で工事をチェックしてもらえるということですね。
保険の期間は、保険の商品や対象になる部分によって変わりますが、我々の提携会社は、工事の瑕疵に対する10年の保険に加入しています。
逆に、会社の規模を条件にしてしまうと、排水管の工事を専門にしていて実績も豊富、でも規模はそれほど大きくない、という施工会社が、最初から候補から外れてしまいます。
その結果、競争原理が働かず、金額が高止まりする原因になります。
ですから、設計コンサルタントに依頼される場合は、施工会社の条件を、「会社の規模」ではなく、「瑕疵保険に加入しているか、その期間や対象はどうなっているか」、そして「同じ排水管の工事を、どれだけの実績を持ってやってきたか」に置き換えてもらうことをお勧めします。
もし会社の規模を条件に入れてきたら、「なぜその条件が必要なのですか」と、一度理由を聞いてみてください。
