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修繕積立金の値上げ幅を抑えて直結増圧化と専有部配管を取替える方法

2024年2月23日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

配管保全センターでは、漏水リスクは共用部ではなく、専有部の配管からのほうが圧倒的に高いので、取替えるのであれば専有部の配管を優先すべきだと、常日頃からお伝えしております。

ただ、ほとんどのマンションでは、専有部の配管の取替え費用に関しては、修繕積立金に組み入れていないのが現状といえます。

そのため、管理組合主導で専有部の配管を一斉更新するには、修繕積立金を値上げしなければいけないことがほとんどです。

値上げとなると住民の抵抗が強く、実施に踏み切れない管理組合さんも多くいらっしゃいます。

また、給水方式の切り替えに関しても、衛生面や費用面、耐震面のメリットを考慮して、受水槽や高架水槽方式から直結増圧方式への切替えを考えている管理組合さんは非常に多く、配管保全センターでも毎日のようにご相談をお受けしております。

今回の投稿記事では、多くの組合で懸案となっている「組合主導での専有部配管の一斉更新」と「直結増圧方式への切り替え工事」を、「修繕積立金の値上げを極力抑えて」実施する方法をご紹介します。

コストを掛けずに、組合での懸案事項を一度に解決できる方法です。

修繕積立金不足でお悩みの管理組合さんにとっては、とても有益な情報ですので、ぜひ、最後までご覧ください。

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専有部配管を一斉更新し直結増圧化するのに必要な費用

それでは、まず、専有部の配管を組合主導で一斉更新し、かつ、直結増圧化するのに必要な費用をシミュレーションしてみましょう。

下の表は、50世帯のマンションでのシミュレーション例です。わかりやすくするためのものですので、かなり簡易化しています。

配管の材質も表に記載していますが、およそ築25年以上のマンションを想定したものです。

当初の長期修繕計画では、受水槽の交換・維持費が1200万円。共用部の給水管の更新は世帯あたり30万円で50世帯なので1500万円としています。

共用部の排水管は各世帯の部屋の中に立管が3本あると仮定して、世帯あたり80万円で50世帯の4000万円とし、合計は6700万円となっています。

これらの費用は、諸条件で高くなったり安くなったりしますので、あくまで参考数値です。

また、ポンプについてですが、受水槽方式でも直結増圧方式でもポンプの交換や点検費用は必要となりますので、今回のシミュレーションでは便宜上、除いています。

管理組合主導で、専有部の給水・給湯管を取り替えようとする場合、今回のシミュレーションでは、世帯あたり80万円とし、合計4000万円が追加費用として必要となります。

なお、受水槽給水方式から直結増圧方式に切り替える費用を600万円としており、受水槽方式を続けるよりは600万円の削減としています。

それでも、合計は1億100万円で、修繕積立金が3400万円足りなくなってしまうということがわかります。

エルセ設置とリース活用をした場合の費用

それでは、修繕積立金の値上げ幅を抑えて直結増圧化と専有部配管を取替える方法について、お話します。

修繕積立金を極力値上げしたくないという前提での考察となります。ここでは配管延命装置の「エルセ」を設置する方法をご紹介します。

エルセは数万世帯に及ぶマンションや病院、庁舎や学校などの公共施設等で30年以上の連続稼働により評価されている配管延命装置です。

エルセは、給水管だけではなく排水管にも保全効果を発揮します。

配管保全センターのホームページの以前の投稿記事でエルセ設置により漏水の発生率を抑えて、費用削減効果が期待できること、修繕積立金を温存できることが期待できると話しています。

また、設置後21年経ったマンションの配管を開けて、配管延命効果に関しても検証結果を出しておりますので、詳細は関連投稿記事をご覧になってみてください。

エルセを設置することで、専有部の配管よりも、肉厚で、漏水リスクの低い共用部の配管については、一斉更新は行わずに、漏水の都度、部分補修をする方針とします。

こうすることで、以前から共用部の配管の取替えのために積み立てていた積立金を、専有部の配管の取替えに充てることができます。

配管の取替えを考える際には、あとどれくらい住み続けるかを考えることが重要となりますが、なかなかすぐには管理組合としての結論を出すことは難しいといえるでしょう。

のちのち100年マンションを目指すことになったとしても、現時点で漏水リスクが高いのは圧倒的に専有部の配管ですから、まずは、専有部の配管を取替えて、共用部の配管はエルセにより、漏水リスクを抑えておくことが得策といえます。

そののち、住民間で100年マンションを目指す合意が得られて、積立金も貯まってきた段階で、共用部の配管で錆びやすい配管は全て取替えるという方法も取ることができます。

エルセの設置費用は、更生工事と比較して、かなり安いため、この方法が有効といえます。

また、配管を取替えたとしても給水管・給湯管のヌメリ付着防止や、排水管の詰まり防止効果は新規配管に対しても期待できます。

とはいえ、専有部の取替えも行い、直結増圧化も行うということであれば、予算オーバーになる可能性がありえますので、その場合は、エルセの設置費用と直結増圧ポンプの設置費用はリースを検討することをおすすめします。

エルセとリース活用したシミュレーション(漏水があまり起こらないケース)

下の表は、配管延命装置エルセを設置するにあたってリースを活用した場合の費用シミュレーションです。

エルセの設置費用は、ここでは仮に一括支払いだと600万円に設定しています。

この金額は世帯あたりの平均人数等の諸条件でかなり異なってきますが、今回は600万円としました。

このエルセ設置費用の600万円と、直結増圧化のポンプの費用はリースを活用することができます。

リース料率は1.32%で、8年間の96カ月払いで満期時にもう1カ月分支払って所有権が譲渡されるという前提のリースです。

年間支払い額は、ポンプとエルセ合わせて190万円となっており、一括で支払う場合には1200万円ですので、かなり初期費用を抑えられるのがおわかりいただけたかと思います。

なお、今回のシミュレーションでは、直結化の工事費用はポンプのリース費用に含めることを前提としていますが、このあたりは、初期費用としてある程度の金額は工事費用を一括で支払う必要がある場合もありますのでケースバイケースです。

初年度の費用ですが、専有部の一斉更新の費用4000万円と合わせて4190万円となります。

仮に修繕積立金が5000万円貯まっている場合には、修繕積立金を値上げしたり、一時金を集めたり、借り入れをすることもなく、組合主導で、専有部の配管を取替えられることがおわかりいただけたかと思います。

なお、総額としては、10%の予備費を入れて6086万円で、当初の長期修繕計画の6700万円より下回っています。

また、専有部の配管はあくまで区分所有者にまかせるという方針を取った場合、組合としての出費は、2086万円となり当初の6700万円の3分の1以下の費用となります。

ただし、専有部の給湯管の銅管からの漏水等が多発するリスクは残ります。

それでもエルセを設置していれば、専有部の給水管のヌメリや錆びの抑制、給湯管のヌメリの抑制、排水管の詰まりの抑制も期待できます。

排水管が塩ビ管ではなく鉄管系の場合は錆びの抑制効果も期待できます。

なお、エルセ設置により漏水や詰まりのリスクはかなり軽減される可能性がありますが、完全にゼロになるわけではありません。

設置前の劣化状態だったり、排水への食べ物カスなどの捨て方のマナー、また配管の内部ではなく外側の錆びによる腐食や、地盤沈下による屋外の排水管の詰まり等により大きく左右されるからです。

このような不確定要素を考慮して、この費用シミュレーションでは将来的に共用部の給水・排水管の10%を部分補修することを想定しています。また、10%よりも高い確率になる可能性もあります。

安全を見て予備費を確保するケース

下の表は、より安全を見て予備費を確保する場合の50世帯での費用シミュレーションになります。

共用部の給水管の30%、共用部の排水管の40%に部分補修が必要となる場合を想定しています。

地盤沈下や配管内のウォーターハンマー現象、地震等、予期せぬ事態で配管の取替えが必要になる可能性はありますので、ある程度の予備費は確保しておくことをお勧めします。

予備費確保シナリオでは、合計7586万円となり当初の6700万円よりは高くなり、修繕積立金の値上げを多少する必要がありますが、エルセを設置しない場合は、1億100万円でかなりの値上げが必要となりますので、住民からの賛同は得やすくなるのではないかと考えます。

なお、予備費確保シナリオでも、あくまで専有部は区分所有者に任せるとした場合、管理組合としては当初の6700万円から3586万円と約半分に費用を削減できることになります。

エルセを設置しなければ、専有部排水管の詰まりリスクが増え、区分所有者の負担が増えることが予想されますが、エルセ設置により、そのようなリスクの低減も期待できます。

100年マンションを目指すのであれば、今回のシミュレーションで前提となった配管の材質を給水管、給湯管、排水管に使用しているマンションでは、極力、配管を取替えるのが理想といえます。

ただし、築70年程度までを想定するのであれば、エルセとリースの活用は、かなり有効な手段だと言えるのではないでしょうか。

ご興味のあるかたは、お気軽にご相談ください。

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