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内視鏡調査の費用と効果 排水管編

2023年11月10日
この記事のカテゴリー : 排水管の保全

2023年の7月9日に「検討前に要チェック!! 内視鏡調査 費用と効果 給水・給湯管編」という投稿記事を公開しましたが、今回は、排水管に対しての内視鏡調査の費用と効果についてお話します。

マンションの管理組合の方から、「排水管の劣化度合いを知りたいので、内視鏡調査の見積もりをお願いします」とよくお問い合わせをいただきます。

給水・給湯管編の投稿記事でもお話しましたが、場合によっては、内視鏡調査は無料で実施する業者もいますし、有料だとしても内視鏡の挿入が簡単で、調査対象箇所が少なければ、数万円でできることも多いです。

まあ、更生工事や更新工事の仕事がとれるということを見込んでのサービス価格といったところですね。

今回の投稿記事では、排水管の内視鏡調査の実施に意味があるのかということ、それから、内視鏡調査を実施する際の留意点についてお話します。

現時点で、排水管内の内視鏡調査を検討しようとしている管理組合さんにとって、参考になる情報ですので、ぜひ、最後までご覧ください。

動画

 

内視鏡調査が行われるケース

それではまず、どのような理由から、排水管内の内視鏡調査を検討するに至るのか、代表的な例についてお話します。

住民への説得材料としての内視鏡調査

分譲マンションでも数十年を経過すると、共用部もしくは専有部の排水管で漏水や詰まりによる水溢れが発生し始めます。

管理組合では排水管の取替えを検討しますが、配管保全に関する住民の意識が低く、なかなか賛同が得られない場合に、説得材料として内視鏡調査をすることが多いといえます。

錆や油等で配管が閉塞しかかった状態を、実際に内視鏡画像で見てもらうことで、住民からの理解を得られやすくなります。

更新工事の時期を見極めるための内視鏡調査 

また、内視鏡調査は、更新工事をすぐに実施すべきなのか、まだまだしなくていいのか、実施時期を見極めるために行うことが多いといえます。

配管内の劣化度合いの確認のために内視鏡調査を行うという場合もあります。

では、更新時期を見極めるために内視鏡調査を行った事例をご紹介します。

築50年近くのマンションで、汚水管の一斉取替えを行う必要があるのかどうかを見極めるために内視鏡調査を行いました。

住民間で、100年マンションを目指すという合意ができているのであれば、費用が掛かる内視鏡調査を行わずに、すぐに耐久性の高い樹脂管で全面更新するという選択肢もあるでしょう。

ただ、このマンションは約90世帯で、「あと、何年住み続けるか?」という明確な合意形成が住民間で得られているわけではなく、できれば、一斉更新は先延ばししたいという思いで、内視鏡調査を実施するに至りました。

排水管の横主管や鋳鉄管の立管等、3か所の内視鏡調査を行い、トイレの脱着費用を含めて、費用は15万円でした。

思っていたよりも劣化が進んでおらず、すぐに取替えることはせずに、5年後に再度、内視鏡調査をして状況を見極めるという結果となりました。

ただし、管理会社や調査会社など、業者によってはどういう結果であれ、「すぐに更新が必要です」といった提案をしてくるところもありますので、注意が必要です。

内視鏡調査の実施にあたっての留意点

それでは、次に、内視鏡調査を実施するにあたっての留意点についてお話します。

排水管内を洗浄すべきかどうか

まず、内視鏡調査を実施する際、先に排水管内を洗浄すべきかどうかについてです。

排水管の詰まり度合いを確認したい場合は、高圧洗浄やムース洗浄を行わずに、そのまま内視鏡調査を行います。

一方で、錆の度合いを見たい場合は、排水管内を洗浄してから内視鏡調査をするほうが、錆がよくわかります。

洗浄しても汚れが落ちなかった場合は、錆の度合いがよくわからないという結果になる場合もありますが、できれば洗浄することをお勧めします。

洗浄作業を行う際に、洗浄前と洗浄後の状況を見比べるために、高圧洗浄業者に多少追加で費用を支払ってでも、洗浄前後で両方の内視鏡撮影をしてもらうのも良いと思います。

撮影は、静止画でなく動画で撮ってもらいましょう。動画のほうがより状況がわかりやすいといえます。

内視鏡調査をなるべく安くする方法

それから、内視鏡調査を行うにあたっての費用に関してです。

排水管の立管内を調査する場合、調査方法によって大きく費用が変わる可能性があります。

調査方法としては、立管についている掃除口から内視鏡を挿入するのか、屋上の通気管から挿入するのか、専有部の排水管から挿入するのか、室内のトイレ等の壁を壊して立管に穴を開けて挿入するのか等々です。

このあたりは、以前の投稿記事をご覧ください。

そもそも内視鏡調査すべきかどうか

また、わざわざお金をかけて内視鏡調査を行う必要が本当にあるのかどうかについても、検討されることもお勧めします。

管理組合は保険に加入しているはずですから、漏水が起きるまでは配管は取替えず、漏水が1件でも起きたら取り替えるとしたほうが、効率的という考え方もあります。

漏水事故が起きてから1~2年のうちに、速やかに耐久性の高い樹脂管で新しく配管を一斉取替えしてしまえば、その先はほぼほぼ、配管の更新を行う必要はなくなります。

この考え方であれば、お金をかけて内視鏡調査をするという行為自体、あまり意味がないことになります。

一斉更新すべきかどうか

それから、内視鏡調査の結果、全ての排水管の立管を取替えてしまうのかどうかは、他の配管との優先順位も十分考慮したうえで、判断することをお勧めします。

というのは、マンションの中にある共用部や専有部の給水・給湯・排水管の中では、専有部の給湯管が最も漏水リスクが高く、また、排水管の立管よりも、専有部の給水管のほうが漏水リスクが高いと考えるのが一般的です。

修繕積立金が潤沢であれば、優先度を気にせず、一斉更新してしまえばよろしいかと思いますが、多くのマンションでは、限られた修繕積立金をどのように有効活用していくのかは、とても重要な問題です。当面は、漏水したら、その箇所だけ補修していって、しのぐという考え方も悪くはない場合も多いです。

更生工事の実施を安易に選択しない

現在のマンションに安心して長く暮らしたいのであれば、長期的かつ全体的な保全方針を立てることが必要となります。

内視鏡の調査結果を見て、とりあえず錆びや詰まりを解消しなければと、応急処置として安易に更生工事を実施することはお勧めできません。

昔は、配管の材質自体が、新しく取り替えても、また何十年後には漏水が発生する可能性がある材質だったため、更生工事で配管内の錆びをこそぎ落としたあと、配管内をエポキシ樹脂で塗布する延命処置をすることで、なるべく配管を長持ちさせることが有効でした。

ただ、今の新規配管は一度取替えれば、その後はほぼ取替え不要となる材質に変わっています。

まだまだ、長く住み続けるのであれば、結局は、取替え工事をすることになる可能性が高いのですから、取替工事の前に高額な費用をかけて行った更生工事は無駄だったということになるでしょう。

10年後に建て替えが計画されているマンションであれば、更生工事でもいいかと思いますが、その先何十年も長く住み続けるというのであれば、更生工事ではなく更新工事を主体に検討することをお勧めします。

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