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検討前に要チェック!! 内視鏡調査の費用と効果 給水・給湯管編

2023年7月6日
この記事のカテゴリー : 給水・給湯管の保全

マンションの管理組合の方から、「給水・給湯管の劣化度合いを知るために内視鏡調査をしたいので、見積もりをお願いします」とよく言われます。

実際のところをお話しすると、内視鏡調査は、場合によっては無料で実施する業者もいますし、有料だとしてもほとんどの場合は、数万円もかければしかるべき調査ができることが多いです。

これも管理組合の方からですが、「管理会社から提案された内視鏡調査の見積もりが、数10万円以上だった」とか、「100万円以上の見積もりがきている」といったお話もよく聞きます。

私も内視鏡調査に立ち会うことも多いのですが、それほど高額な費用をかけて行う必要は、ほぼないのではないかと考えております。

今回の投稿記事では、内視鏡調査を実施すること自体に意味があるのかということ、また、調査結果を受けて配管の保全対策をする際の留意点についてお話します。

今回は給水・給湯管の内視鏡調査について取り上げます。排水管についてはまた別の機会にお話ししたいと思います。

動画

 

内視鏡調査が行われるケース例

それではまず、分譲マンションで給水・給湯管内の内視鏡調査が行われるのはどういった背景があるのかについてお話します。

住民への説得材料としての内視鏡調査

ひとつは、共用部の給水管で漏水がチラホラ発生し始めたが、配管保全に関する住民の意識が低く、給水管取替えの必要性を理解していない場合や、給水管の取替えを行いたいけど、なかなか賛同が得られない場合に、説得材料として内視鏡調査をすることが多いといえます。

配管がほぼ閉塞するような大きな錆びコブが映った内視鏡画像を見てもらうことで、住民からの理解を得られやすくなります。

ただ、給水管からの漏水が始まっているようなマンションでは、錆びコブが映った画像を撮るのは、それほど難しくはないと言えます。

費用的には、配管の取替え工事の見積もりを出している業者に依頼すれば、場合によっては無料で調査してくれることもあるでしょう。

無料でなくとも、説得材料として画像を撮りたいということであれば、一般的には10万円もあれば費用としては十分かと考えます。

ということで、説得材料のために、10万円以下の費用で内視鏡調査を行うのであればよろしいかとは思いますが、内視鏡調査に数十万円もかかるということであれば、金額の見直しが必要といえます。

更新工事をするタイミングを見極めるための内視鏡調査

  内視鏡調査を実施することが多い他の例としては、更新工事をすぐに実施すべきなのか、当面は実施しなくていいのか、タイミングの見極めに、配管内の劣化度合いの確認として内視鏡調査を行うという場合もあります。

管理組合の方針が、マンション内で一度たりとも漏水は起こさないということであれば、漏水が起きる前に、配管を取替えるという考え方もあるでしょう。

ただ、管理組合は保険に加入しているはずですから、漏水が起きるまでは、配管は取替えず、漏水が1件でも起きたら取り替えるとしたほうが、効率的という考え方もあるでしょう。

漏水事故が起きてから1~2年のうちに、速やかに樹脂管やステンレス管で新しく配管を一斉取替えしてしまえば、その先はほぼほぼ、配管の更新を行う必要はなくなります。

この考え方だと、わざわざ数万円から数十万円をかけて内視鏡調査をして更新するタイミングを見極めるという行為自体、あまり意味がないとも言えますね。

配管内の汚れ度合いを見極めるための内視鏡調査

  それから、受水槽や高架水槽は定期的に洗浄作業を行なわないと、ヌメリによりどんどん不衛生になっていくということはよく言われています。

それと同様に、給水・給湯管も配管内がヌメリやもらい錆びで不衛生になっていきますので、その状態を内視鏡で確認して、汚れ具合を見極めながら、配管内の洗浄作業の是非を確認するというのは、意味があるかとは思います。

画像があれば、お金をかけて洗浄作業を行うことに対して住民からの理解も得やすいということもあります。

この調査自体も、洗浄業者が無料で実施してくれたり、有料だとしても数万円の費用で済むはずですので、数十万円もかけて行う必要はないかと考えます。

内視鏡調査後の対応での留意点

それでは、次に、内視鏡調査を実施したあとで、管理組合が取り組んでいく活動で留意していただきたいことについて、お話します。

給水管の内視鏡調査を実施する場合、一般的にもっとも多く調査される箇所は、各世帯の水道メーターやガスメーターが入っているパイプシャフト内の水道メーターまわりの配管です。

下のイラストであれば、赤枠内の部分が該当します。

水道メーターは、銅やすずの合金の砲金(ほうきん)という材質ですが、水道メーターに接続する配管の材質は鉄なので、異なる材質の金属が接触することになります。

そういった箇所は異種金属接触腐食という現象により、他の箇所よりも、錆びコブが大きく生成されやすくなります。

このような異種金属接触腐食が起こっている箇所では、築20年程度のマンションでも、錆びコブがかなり大きく生成されていることが多く、内視鏡画像を一目見ただけで、大変なことになっていると驚いてしまうほどインパクトが強い画像が撮れます。

共用部の給水管も、その画像と同じような状態になっていると勘違いしてしまい、慌てて共用部の給水管全てを取り替えたり、更生工事を実施してしまう管理組合さんも多いといえます。

マンション内には、共用部の給水・排水管、専有部の給水・給湯・排水管と様々な配管がありますが、漏水しやすさに応じて、長期的かつ効率的な配管保全方針を修繕積立金の状況を鑑みながら十分に検討することが必要といえます。

そのうえで、どの配管から保全していくべきか、きちんと優先順位をつけて、対応していくことをお勧めします。

例えば、築30年を過ぎてくると、イラストの赤枠の異種金属接触部だけでなく、水色の丸で示した給水管立管と各戸の水道メーターに分岐する接続部にも錆びコブが生成され、漏水が発生し始めます。

それならばここが優先順位が高いかというと、そうではなく、専有部の給水(ライニング鋼管)・給湯(銅管)のほうが、より漏水リスクが高く、優先順位も上となります。

専有部は各区分所有者が自己責任で保全するというのが原則となっている管理組合が多いのですが、組合主導で専有部の更新工事をしていく制度を作ってでも、先に対応していくことが望ましいと言えます。

修繕積立金が限られているならば、専有部の更新工事を優先して、共用部の給水管立管は一斉更新するのではなく、お金をなるべくかけずに、水色の丸で示した部分が漏水するたびに、その箇所だけ変えていくという方針を取り入れていくという考え方もあります。

このあたりのことは、下の投稿記事もご参考にしてみてください。

専有部の給水・給湯管 一斉更新できる! 手順と費用例

専有部の給水・給湯管 組合主導で一斉更新する際の7つの留意点
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