2023年8月24日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

専有部は、区分所有者任せとしてますが、区分所有者任せのマンションで、専有部の配管が自主的に全て取替えられているというマンションは、あまり見かけません。
築40年を過ぎても取替えられていないとすると、あちこちで漏水が起こり始めるでしょう。
そうなると、管理組合名義で加入している火災保険も更新できず、「次回は加入拒否されるかも⁉」となり、そのことで頭を痛めている管理組合さんは多数いらっしゃいます。
仮に、専有部の給水・給湯管を管理組合主導で一斉更新するとすると、床や壁を復旧する内装復旧費用も必要となります。
その場合、給水・給湯管の取替えと内装復旧費込みで、ファミリータイプであれば、世帯あたり7~80万円程度が相場となります。
部屋のレイアウトの違いや業者の違いによって100万円以上になる場合もあります。
管理組合主導で一斉更新するのではなく、漏水リスクがもっとも高いとされる専有部の給湯管だけ、築25年あたりで更生工事を行うという考え方もありますが、築70年までの45年間、給湯管を取替えなくていいのかどうかは、施工業者にきちんと確認されることをお勧めします。
更生工事の保証期間が10年として、そのあと、漏水が発生して、結局、更新工事をすることになるのなら、最初の更生工事が無駄になりますので、そういった事態は避けたいですね。
このあたりのことは、以前にアップしたこちらの投稿記事も参考にしてみてください。
給水・給湯管の更生工事 注意点と費用相場
超重要!! 給湯管 取替えvs更生 どっちが得?
給湯管の事故はなぜ多い?
なお、専有部の排水管は、今回のシミュレーションでは錆びない材質の塩ビ管としております。
塩ビ管であれば、日々、住民が詰まりに気を付けるべく、油を捨てない等のマナーを守り、高圧洗浄もしかるべきところを手抜きせずにきちんと行えば、場合によっては交換しなくていい場合もあります。
ただ、油などの捨て方が悪く、高圧洗浄もきちんとされていないということであれば、専有部の排水管を多くの世帯で取替えることになり、世帯あたり50万円程度は必要となります。
では、共用部の配管はどのようにしていくかですが、方針②では、共用部の給水管・排水管は、漏水事故が起きたときに、その部分だけ補修していくという考え方です。
どのくらいの割合で共用部の配管に漏水事故が発生するのかは、マンションによってかなりバラツキがあります。
その都度更新するのであれば一斉更新よりは、費用はかなり抑えられることになります。
例えば、下のイラストのように、共用部給水管は青枠で示した部分の立管と各世帯の水道メーターにつながる枝管との接続部が、比較的漏水しやすいのですが、そういった箇所から漏水したら、その漏水が発生した青枠の箇所の配管だけを切り取って新しい配管に取替えるという考えがあります。
その場合は、1カ所あたり8万~12万円程度で修理が可能です。
排水管の立管も、漏水したらその系統を全て取替えるというのでなく、下のイラストのように、その場所だけ、部分補修するというやりかたがあります。
共用部を一斉更新するのと、漏水があった箇所だけ補修するのとでは、かなり大きな費用差になりますね。
ただ、部分補修の方針をとる場合、漏水が発生するたびに、緊急に対応してくれる業者を探すとなると、特急料金をとられたりするので、予めリーズナブルな業者と漏水時に対応してもらう取り決めをしておくことをお勧めします。
また、保険金を水増し請求しないような管理会社や保険代理店を選んでおくことも大切です。
部分補修の方針により、その分、浮いた費用を専有部の配管の取替え費用にあてがえば、修繕積立金の値上げなしに、より漏水リスクの高い専有部の配管を取替える方針を取ることができます。
また、延命装置によっては、給水管の錆による漏水リスクだけでなく、排水管の錆びによる漏水リスクや詰まりによるあふれのリスクも抑えることが期待できます。
そういった延命装置を設置することで、よりマンション全体での配管の保全費用を抑えることが期待できます。
もちろん、余裕があれば、共用部、専有部の配管すべてを取替えるのが理想ですが、築70年までとすると、配管以外でもバリアフリー化などさまざまな修繕が必要となってきます。
管理会社からの提案で、共用部の配管を全て取替えるという選択をする前に、漏水リスクが高いのはどの配管か? どうすれば、マンション全体で配管の保全費用を抑えることができるのか? を十分検討したうえで、アクションを起こすことを強くお勧めします。
また、すでにマンション全体で「築100年まで住み続ける」ということが、明確な方針として打ち立てられているのであれば、無理をしてでもすべての配管を取替えていくべきかと思います。
ただ、築25年の時点で、いったい何年住み続けるのかを決めるのは、かなり難しいと考えられます。
少なくとも築70年程度までは住むであろうということは、どの管理組合さんでも感じられる状況だと思いますので、それをもとに、一考されることをお勧めします。
配管保全センターでは、今回ご紹介した方針②の専有部を優先的に取替え、漏水リスクの低い共用部は部分補修で対応していくための総合的な各種提案が可能です。
ご興味のあるかたは、お気軽にご相談ください。
