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給湯管の事故はなぜ多い?

2023年7月20日
この記事のカテゴリー : 給水・給湯管の保全

国内のマンションの漏水事故で最も多いのは、2023年時点では給湯管からの漏水です。

築25年以上のマンションであれば、給湯管の材質に銅管が使われていることが多いのですが、肉厚は通常約1mm程度でかなり薄く、専有部内ではこの薄い銅管を配管することになります。

それらの銅管の曲がり角になった部分にお湯の気泡がぶつかり続けることで、ピンホールができて漏水が起きやすくなります。

今回は、なぜ給湯管からの漏水が現時点では特に多いのか? 材質以外の盲点となるような理由についてマンションの配管全体の保全状況を比較しながらお話します。

給水管・給湯管・排水管の保全方針を検討されている管理組合さんにとって、かなり参考になる情報ですので、ぜひ最後までご覧ください。

動画

 

マンションの屋内配管の種類

それでは、まず、マンションの屋内にはどういった給水・給湯管・排水管の種類があるかをイラストで、簡単に説明します。

①は共用部給水管、②は共用部の排水管です。③は各世帯のパイプシャフト内にある水道メーターまわりの配管です。

それから、専有部内には④給水管と⑤給湯管、⑥排水管があります。

築25年以上のマンションでの保全状況

築25年以上のマンションで、それぞれの配管に対して、どのような保全がされているのかを下の表に記載しています。

実は、それぞれの配管の保全状況は「管理会社が提案しやすいかどうか」に大きく依存するところがあります。

① 共用部給水管 ②共用部排水管

たとえば、①の共用部給水管と②の共用部排水管は、配管の肉厚としては給湯管の銅管よりもかなり厚く、漏水リスクは低いと言えるのですが、いずれも共用部の配管のため、管理会社から保全の提案がしやすい場所になります。

それで管理会社から新しく配管を取替える更新工事や、配管内の錆びをこそげ落として樹脂を塗布する更生工事を提案されて、実施するマンションがかなり多いといえます。

そのため、①と②の共用部配管は、もともと給湯管よりも漏水リスクが低い上に、なんらかの保全が施されているマンションが多く、あまり漏水が起こることがない状態にあるといえます。

ただ、塗布型の更生工事は保証期間が10年で、実質的な耐用年数は20年から30年程度と言われており、更生工事のみしか行っていないマンションでは、その後に漏水が始まってきている状況です。

また、②の共用部の排水管については、長年堆積して固まった汚物が詰まり、排水が逆流して、専有部の室内にあふれてくるという事故も増えています。

③水道メーターまわり

③の水道メーターまわりについては、給湯管の銅管と同じように、漏水リスクが非常に高い箇所ではあります。

ただ、①や②の共用部の給排水管と同様に管理会社が保全の提案をしやすい箇所で、多くのマンションでは築20年から25年あたりで取り替えることが多いといえます。

築40年でも放置しているマンションもありますが、漏水しても、基本的にはパイプシャフト内だけで済み、専有部に被害が及ぶことは少ないので、あまり問題にはなっていないといえます。

④専有部給水管 ⑥専有部排水管

専有部である④~⑥の配管については、原則として、区分所有者が責任を持って保全することになっており、管理会社としては、更新工事の提案は、非常にしにくい状況となっています。

ただ、更生工事については、管理会社でも提案しやすいため、④の専有部給水管、⑥の専有部排水管については、更生工事だけ行っているマンションは少なくないといえます。

ただし、塗布型の更生工事は前述のとおり、保証期間が10年で、実質的な耐用年数は20年から30年程度と言われており、更生工事のみをして時間が経ったマンションでは、錆による閉塞で水の流れが弱くなったり、漏水事故も増えてきているのが現状です。

また、⑥の専有部の排水管については、共用部の排水管と同様に、長年堆積して固まった汚物が詰まって、逆流を起こし、排水が室内にあふれてくるという漏水事故もかなり増えています。

⑤専有部給湯管

⑤の専有部の給湯管に関しても、区分所有者が責任を持って保全するのが原則となっています。そのため、給湯管を新しい配管にする更新工事を実施済みの世帯は少ないのが現状です。

また、更生工事についても、給湯管はお湯を扱うため樹脂の塗布技術が、給水管よりも難しく、実際に更生工事が給湯管に適用され始めたのは数年前からです。

さらに給湯管に対して効果を期待できる延命装置というものもほとんどありませんので、肉厚が1ミリ以下で漏水リスクが高いにもかかわらず、放置されがちなために、給湯管からの漏水が多発しているという状況となっています。

また、銅管の配管は材質の品質や職人の施行スキルによって施工にばらつきがあり、同じ団地でも、漏水が頻発する棟と、50年たっても全く漏水しない棟があったりして極端に状況が異なる場合も多いといえます。

まとめ

今回の内容をまとめますと、マンションの配管の保全では、共用部の配管については管理会社が保全の提案ができるので、保全を実施されていることが多いといえます。

一方で、専有部に関しては管理会社の管轄外となり、各世帯に任されているため、十分に保全されていない状況となっています。

ただ、専有部でも管理会社が更生工事ならば提案しやすいため、専有部の給水管・排水管については更生工事が行われています。給湯管の更生工事はごく最近、技術的に可能となったため、給湯管の更生工事を実施済みのところは少ないです。

結果として、給湯管の銅管は築20年くらいから漏水が発生しやすくなるにも関わらず、ほとんどのマンションでは放置されているために漏水が多発しているといえます。

給湯管は、更生工事が適用され始めたのが給水管よりも遅かったというのも、漏水事故が目立って多い理由かと考えています。

また、給湯管の更生工事の保証期間も10年が多く、1度の更生工事だけで築70年といった長期間でも十分なのかは疑問が残ります。

別の投稿記事では、こういった状況の中、現時点で漏水事故が最も多い給湯管に対して更生工事を行うだけで十分なのか、それとも銅管を新しくする更新工事をしたほうがいいのか、長期的にみてどちらが得になるのか、更生工事と更新工事の長期的にかかるコストを比較して検討した内容についてお話します。

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