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直結直圧方式への変更工事 工事例とその費用

2022年8月27日
この記事のカテゴリー : 受水槽の保全・直結化

前回の投稿記事では、直結給水方式に変更するにあたり、親メーターの口径を太くする必要がある場合の、増径工事の事例についてお話しました。

これは、一般道路の下に埋設されている配管を太い配管に取替える工事となり、分譲マンションの管理組合の理事の方々には、馴染みのない土木作業が必要なため、どういった工事を行うのかご理解いただくためにご紹介しました。

今回は、前回と同じマンションの事例で、一般道路側ではなく、マンションの敷地内ではどういった工事になるのか、また工事実施にあたって、実際にかかった世帯あたりの費用についてお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。

動画

 

今回の対象マンションの概要

それでは、まず、今回の直結直圧方式に変更したマンションの概要についてお話します。

東京23区の築35年、世帯規模は約30世帯の4階建てマンションです。

図①はこのマンションの1階のイメージです。エレベーター前の外階段を降りた地下ピットに受水槽があります。

親メーターから受水槽のある地下ピットまで、マンションの躯体の下に口径30Aの既存の給水管が埋設されています。

図①

直結直圧化への変更工事の主な作業

では、今回の直結直圧方式への変更工事の主な作業について図②を用いてお話します。

1.親メーターの増径

一つ目は親メーターの増径です。口径30Aを40Aに増径する工事です。

2.新規給水管の埋設配管

二つ目は新規給水管の埋設配管です。図②の親メーター以降の緑色の点線の部分です。地中に埋めるために土を掘り、配管後に土を埋め戻します。

3. 新規給水管の露出配管

三つ目は新規給水管の露出配管です。図②の緑色の実線の部分を露出配管にします。

4.受水槽二次側配管へのショートカット配管

四つ目は新規給水管を受水槽の二次側配管に接続するショートカット配管です。

5. 各戸の水道メーターまわりの配管の取替え

五つ目は各戸の水道メーターまわりの配管の取替えです。

図②

それでは、これら5つの作業を順番に見ていきましょう。

1. 親メーターの増径

それでは、図②の一つ目の親メーターの増径をもう少し詳しく見てみましょう。

図③の左側は工事前の状態です。写真の下の部分は一般道ですが、こちらの道路側の工事については前回の投稿記事でご紹介しました。

マンション側では、既存の30Aの親メーターを40Aに取替えます。

真ん中の写真に青い配管が見えますが、親メーターからマンションのほうへは、エスロンハイパーという樹脂製の配管を埋設します。

図③

図④は工事後の様子で、40Aのメーターバイパスユニット、その前後に逆止弁と仕切弁が配管されています。

なお、今回のマンションは4階建てですが、水道局に水圧を調査してもらったところ、増圧ポンプを使わなくても水圧が十分だと判断し、直結直圧方式を採用しました。

よって、親メーターの後ろに増圧ポンプは設置しませんでした。

図④

2.新規給水管の埋設配管

次に二つ目の新規給水管の埋設配管についてご説明します。

場所としては、図②の緑色の点線の部分です。

工事前は図⑤の左側の写真のように、マンションの建物に沿って、雑草が生えていましたが、ここを掘削し、エスロンハイパーという樹脂製の新規給水管を配管し、埋め戻しました。

既存の30Aの給水管と同様に40Aの配管をマンションの躯体の下に通すと、工期や費用がかかるため、図⑤の中央の写真の黄色い丸の部分にある排水桝を境にして、その先は、図②の緑色の線で示したように、マンションの建物の周囲に露出配管する経路を取ることにしました。

図⑤

3.新規給水管の露出配管

次に三つ目の新規給水管の露出配管について図⑥を用いてご説明します。

場所としては、図②の緑色の実線の部分です。

新規給水管には、HIVPという耐衝撃性塩ビ管を外廊下の壁面沿いに露出配管します。その後、ラッキングという保温処理をして仕上げます。もともと、雨水管も露出配管ですので、工事後の見た目はほとんど気にならないかと思います。

図⑥

4.受水槽二次側配管へのショートカット配管

それでは、受水槽二次側配管へのショートカット配管について説明します。

受水槽は、図①にあるように外階段を地下に降りた地下ピットにあります。

工事前は、図⑦の左側のように、親メーターからマンションの躯体の下に埋設されている給水管(水色の矢印)を通して受水槽に水を貯めていました。

受水槽に貯まった水を各戸に給水するのは、赤い矢印で示すように受水槽から加圧ポンプを経て、各戸に給水されていました。

工事後の配管状況は、図⑦の右側に示しました。

親メーターから緑色の直線で示した新しい給水管を地下ピットまで配管し、それを各戸に給水している赤色の直線で示した既存の給水管につなぎます。

これにより、受水槽を経由しないショートカット配管による直結直圧化が実現します。

図⑦右下の画像では、直接ショートカット配管しているのがご覧いただけます。

図⑦

5.各戸の水道メーターまわりの配管の取替え

今回の直結化に伴い、各戸のパイプシャフト内の水道メーターの前後の配管も取替えました。図⑧で、その工事の様子を示しています。

各戸の水道メーターまわりの配管は、異種金属接触といって錆びやすい材質が使われているために、経年劣化による漏水事故が起きやすい箇所となります。この部分の取替えは、直結化に伴い必ず行う必要があるというわけではありませんが、直結化のタイミングで、一緒に水道メーターまわりの配管を取替えることが多いと言えます。

図⑧の左側の写真の黄色丸は、給水管の立管との接続部で、この部分から取り替えます。緑色丸は、各戸の専有部に埋設される手前の配管で、この部分まで全て樹脂管に替えます。

図⑧の右側の画像の黄色の点線が新しく配管した樹脂管で、赤色の枠で囲んだ部分は、水道メーターユニットです。配管後に配管に対する保温処理も行います。

そのほか、直結化に伴い、最上階の立管の最上部には、吸排気弁も設置します。

なお、水道局が行う一般道路側での工事の日に合わせて、親メーターまわり、各戸の水道メーターまわりも一気に取替えたので、断水は日中9時~17時の1日のみでした。

図⑧

工事費用

今回の工事費用は、世帯あたり13万円弱でした。

東京23区でしたので、一般道路側の増径工事と40Aのメーターバイパスユニットは水道局負担でした。水道局がこれらを負担しない地域では、一般道路側での増径工事とメーターバイパスユニットも組合負担となり、水道局への保証金も追加で負担することとなるので、ご注意ください。

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