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給水ポンプの交換時期とその費用

2022年9月24日
この記事のカテゴリー : 受水槽の保全・直結化

マンションで長期修繕計画を作る際、給排水設備に関しては、給水管や排水管といった配管だけでなく、受水槽給水方式であれば加圧ポンプ、直結増圧給水方式であれば増圧ポンプといった給水ポンプについても、「いつ交換するか?」を考える必要があります。

とはいっても、配管もポンプもどちらも毎日使用しているのですが設備なので馴染がありません。交換時期をいつにするかと聞かれても想像もつかず、管理会社が長期修繕計画で提示してきた交換時期をそのまま採用されている管理組合は少なくないのではないでしょうか。

インターネットで給水ポンプの交換時期や寿命を検索してみても、いくつもの説が出てきますから、どの説に準じたらいいのか迷われている方も多いと思われます。

ポンプの交換やオーバーホールとも呼ばれる分解整備には費用もかかりますから、長期修繕計画を作る際に、どれくらいの頻度で行うのかによって給水ポンプに関わるトータル費用も大きく変わってきます。

今回の投稿記事では、メーカーや国交省、施工会社が提示している交換頻度の目安を基に35年間での費用シミュレーションを行いましたので、それをご紹介します。

長期修繕計画を作成するにあたって参考になると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

動画

 

給水ポンプのメンテナンス頻度

それでは、早速ですが表①をご覧ください。

関係者それぞれが、給水ポンプの交換や分解整備について提示している頻度の目安を記載しました。

なお、ポンプの寿命は自動車と同じように、稼働状況その他によっても左右されます。

10年たたずに故障して取り替えなくてはいけなくなる可能性もゼロではありません。メーカーの保証期間は1年です。あくまで目安としての頻度であることをご理解ください。

表①

まず、最初に某メーカーでは、分解整備を4~7年周期、交換を10~15年程度で実施することを目安として提示しています。また、消耗部品の交換の目安を2~4年としていました。

国交省の長期修繕計画ガイドラインでは、分解整備を5~8年周期、交換を14年~18年程度で実施と記載されています。

それから施工会社(1)では、ポンプはメンテナンスしなければ15年程度、メンテナンスすれば20年以上持つ場合もあると記載しています。

最近の加圧ポンプや増圧ポンプは昔のものよりも故障しづらくなっており、分解整備しなくてもかなり寿命が延びる傾向にあると言えます。

この考えに基づき、施工会社(2)のように、最近のポンプに関しては、分解整備は原則行わず、ポンプの状態次第で12年~20年以上持たせるという考え方を示しているところもあります。

それぞれの考えに基づいた費用シミュレーション

表②にそれぞれの考えに基づいた費用シミュレーションの結果を記載しました。

期間は35年間です。ちょうど35年目に交換もしくは分解整備を実施する場合は、その回数もカウントしました。

表②

世帯数等によって、加圧ポンプや増圧ポンプの価格は異なり、施工会社によっても変わってきますが、今回はサンプルとしてポンプ代と工賃で150万円としました。

また、分解整備の費用も、どの程度まで分解整備するのか、また、施工会社によって大きく変わりますので、あくまでサンプルとして今回は1回あたり50万円としました。

例として、某メーカーの案を説明すると、分解整備の周期が5年で5回実施し1回あたりの費用50万円をかけると250万円。交換の周期は15年で2回実施し1回あたりの費用150万円をかけると300万円で、合計550万円となります。

国交省のガイドラインでは分解整備の周期が5~8年とあるので今回のシミュレーションでは8年、交換周期は14~18年ということで16年としました。

実際に、こういった期間で設定しているところが多いと思います。

施工会社(1)では、分解整備しなくて交換を15年で行うケースと、10年目に分解整備して、21年目に交換するケースで計算しました。

施工会社(2)では、分解整備しなくて12年で交換する場合と、21年で交換する二通りで計算しました。

当然、交換や分解整備の実施周期が長いパターンのほうが安くなります。

一番上の案と施工会社(2)の分解整備なしで21年使い続けた一番下の案とは3倍以上の金額差になってますね。

長期修繕計画での考え方

このように考え方次第で、かなり費用が変わってくるという中で、マンションによって使用頻度も異なりますので、長期修繕計画を作成する際に、どの頻度で行うのが正解かということはありません。

ひとつの考え方としては、長期修繕計画では、予算上は分解整備は計上せず、ポンプの交換時期は短めの12年周期としておくというやり方もあります。

後述するように、今は半導体不足から、ポンプの納期が半年以上かかる状況ですが、普段は、新しい加圧ポンプや増圧ポンプを発注してから2週間程度で設置できます。

また、加圧ポンプにも増圧ポンプにもポンプ自体が2機以上、搭載されており、仮に1機が故障しても、別のポンプがカバーしますので、よほどのことが無い限り、全てのポンプが動かなくなる可能性は低いと言えます。

ポンプの点検の頻度を設置から4~5年目以降は年に2回として、ポンプの点検状況によって新しいポンプに交換していくという方針で、12年~20年程度まで使い続けるという考え方もあります。

ただ、さきほども触れましたが、ポンプは自動車と同じように、10年よりも早く故障で取り替えなくてはいけない可能性はゼロではないのも事実なので、このやり方で必ず、12年以上持つというわけではありません。安全策をどこまでとるかは各管理組合さんの判断にはなりますが、一つの考え方としてご提示しておきます。

分解整備を予算として計上しておくのもいいですが、10年目に分解整備しても場合によっては12年目で故障する場合もありえますので、分解整備を予算に計上するかどうかは組合の判断ということですね。

いずれにしろポンプの交換時期は、長期修繕計画上、例えば12年と書いてあるから12年目に必ず交換するといった必要はありません。点検の結果によっては、先延ばししていけばいいかと思います。

現在の半導体不足の状況下での考え方

ただし、世界的な半導体不足から、現時点でも、注文後、半年から1年といった期間待たないと納品されない状況が続いております。2機とも故障して、給水できなくなると大変なことになるので、「そろそろ交換時期かも」と思われている管理組合は、半導体不足の状況が収まるまでは、早めに交換を準備しておくほうが、安心かと思われます。

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