ファミリータイプのマンション 20万円台で給水・給湯管を取替える裏ワザ 後編
2021年11月27日
この記事のカテゴリー : 給水・給湯管の保全
前編では、
・配管の取替えは、各区分所有者がリフォームを行う際に、一緒に取替えるのが最も安くつく
ということ、それから、
・管理組合は、ガイドラインを作成して、配管の取替えを積極的に行ってもらうように呼びかける
こと、
・それとともに、配管を取替えるための補助金を修繕積立金から拠出する
案をお話しました。
後編では、
・補助金を修繕積立金から拠出することを総会で合意するまでの道のり
と、
・総会で合意したのちに、実際に各区分所有者がリフォームを行う際に、管理組合や業者とどういった手順で進めていけばいいか
ということをお話します。
専有部の給水・給湯管の取替えを、組合主導でやりたいけれど、なかなかハードルが高くて困っているという管理組合さんは多いと思います。この投稿記事を参考にしていただけると配管の取替えが進むと思いますので、ぜひ、最後までご覧ください。
総会で合意するまでの道のり
では、まず、管理組合で補助金を出す制度を総会で合意するまでの道のりをお話します。
イラスト①
①見積り依頼
まず理事会や修繕委員会から、複数の配管業者に専有部内の給水・給湯管をすべて更新する見積もり依頼を行います。
これは、配管の更新費用の概算を把握するためと、推薦業者を選別するためです。
イラスト②にあるように、取替えの対象となる配管は、専有部内の給水・給湯管です。
まず、水色の線で示した給水管です。水道メーターの二次側からそれぞれの蛇口まで。それと給湯器までの給水管すべてですね。
それから赤色の線で示した給湯管で、給湯器から蛇口までの給湯管すべてです。
あとは、黄色で示したペアチューブというものです。給湯器からバスタブまで追い炊き用のペアチューブがあり、材質が銅管の場合は往復2本分すべてを取替えます。
これらすべての給水・給湯管を、ポリエチレン管で更新する場合の見積もりを複数業者に依頼します。
その際に、「②内装復旧は行わない前提」での見積りにしてもらいます。リフォーム時に配管の取替えを済ませるわけですから、内装復旧はリフォーム業者が行うので、配管業者は復旧する必要がないからです。
業者を絞り込めていない段階で、すべての部屋のタイプで見積もってもらうのは難しいので、部屋数が多いタイプをサンプルとして2部屋程度、見積もってもらうのがよろしいでしょう。
イラスト②
②見積り提示
配管工事業者は、内装復旧を行わない前提での見積もり額を提示します。
床下配管がいいのか、天井配管がいいのか、どのあたりの床や壁をはがすのか、ユニットバス内の蛇口への配管は露出配管になるのか、ユニットバスの裏側に見えないように配管できるのか等もあわせて提示します。
③推薦業者選定・補助金の検討・ガイドライン作成
複数業者から出てきた見積もりをもとに、理事会や修繕委員会として推薦する業者を選定します。
大規模マンションの場合は、1社だけでなく2~3社の業者を推薦業者として選定してもいいかと考えます。
内装復旧費用は、各区分所有者の自己負担となりますが、配管の取替えが励行されるように、管理組合からも修繕積立金から補助金を拠出するようにします。補助金額をいくらにしたら住民が自主的に配管の取替えを勧めてくれるかを理事会・修繕委員会内で議論します。
それと、リフォーム時に各区分所有者が、配管工事業者に見積もり依頼するためのガイドラインもあわせて作成します。イラスト③のように床や壁を剥がす場所等も例示したほうがわかりやすくなります。これについては、「
マンション専有部 給水・給湯管の取替え いくらかかる? 4社で見積比較」で配管工事の手順を詳しく紹介していますのでご覧ください。
また、管理組合の中にリフォーム相談窓口を作っておくといいでしょう。担当窓口があると住民も連絡を取りやすくなります。
イラスト③
④住民説明会
修繕積立金は「住民間の公平性を保ちながら使う」ことが求められます。
リフォームする区分所有者にのみ補助金を支給するだけだと、住民間で公平性が保てません。
なぜ、わざわざ、修繕積立金から補助金を出すのか。
それがマンション全体や、各区分所有者にどのようなメリットになるのか。
をきちんと住民に説明して、納得してもらう必要があります。
住民説明会を実施するにあたっては、以下のような項目を管理組合で事前に議論・整理して提示する必要があります。
①管理規約の変更箇所
②管理規約の使用細則※の追記箇所
※管理規約に基づいて設定される共同生活上の詳細なルールのことを「使用細則」といいます。
③住戸のタイプによって補助金額は異なるのか
④既に配管を更新した区分所有者への補助金額と、更新済みであることの確認方法
⑤一定の期間にリフォームを行わなかった場合の取り扱い
なお、前編でもご紹介しましたが、このあたりの詳細な内容は、「
専有部の給水・給湯管 組合主導で一斉更新する際の7つの留意点」という投稿記事でも参考になりますので、ご覧になってみてください。
⑤総会
最後に、総会決議を行います。
使用細則は普通決議で追記可能ですが、ほとんどのマンションでは補助金支給にあたっては管理規約を変更する必要があると思われます。
管理規約の変更は特別決議になり4分の3以上の同意が必要です。
また、補助金を拠出する議案自体も、普通決議ではなく特別決議で可決しておくことをお勧めします。
リフォーム時に配管工事も行う際の手順イメージ(例)
それでは、総会で合意を得て、実際に各区分所有者がリフォームをする際に、どのような手順で、配管工事も行っていけばいいかの手順イメージを例としてご説明します。
イラスト④
①リフォーム通知
まず、リフォームを行う世帯から理事会や修繕委員会で作った「リフォーム相談窓口」にリフォームを行う旨を伝えます。
②ガイドライン提示
リフォーム相談窓口は、配管の取替えを行うためのガイドラインを提示し、また、指定どおりの取替えを行なった場合に、補助金を支給することも伝えます。
また、リフォーム相談窓口が推薦する業者であれば、配管工事をいくらで実施してくれるかも合わせて、区分所有者に伝えます。
③見積り依頼
次にリフォームを行う区分所有者は、配管工事を依頼しようとしている業者にガイドラインを提示して、配管工事の見積もりの依頼も行います。
配管工事を依頼する業者としては、リフォーム相談窓口が推薦する業者、区分所有者が独自に依頼する配管業者もしくは、リフォーム業者が配管工事も行えるのであれば、リフォーム業者に依頼することも可能です。
④見積もり提示
各業者から提示された配管工事見積り額を比較し、どの業者に配管工事を依頼するのかを区分所有者が決めます。
⑤リフォーム依頼
リフォーム相談窓口が推薦する業者に依頼する場合は、リフォーム実施時期の1カ月前には、区分所有者から配管工事業者に連絡するようにします。
リフォームの直前になってから連絡しても、日程が合わない場合もありますので、なるべく早めに連絡することをお勧めします。
⑥日程調整・実施
管理組合が推薦する業者が配管工事を行う場合、配管工事業者は、リフォーム業者から蛇口の位置やペアチューブの位置がわかる設備図面を入手するとともに、区分所有者とリフォーム業者とで配管工事の実施時期(1日のみ)を調整します。
リフォームでは蛇口の位置が変わることが多いので確認が必要です。設備図面を基に、配管工事業者は配管の取替え工事を実施します。内装の復旧はリフォーム業者が行います。
なお、ガイドラインよりも蛇口の数を増やすような仕様の場合は、工事費用が増える可能性があります。工事費用が増える場合は、事前に配管工事業者が区分所有者に伝え、加算分は、区分所有者の自己負担とするといった取り決めも必要です。
また、1日で終わらすために工事当日は、邪魔にならないように荷物等は必ず整理しておくことも必要です。状況によっては1日で終わらず、追加請求される場合もあります。
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