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共用部の給水管取替え どの材質を選ぶべき? 3種類の配管を比べてみました

2021年11月6日
この記事のカテゴリー : 給水・給湯管の保全

マンションの築年数が古くなると、配管の劣化に伴い多くの管理組合では給水管の取替え工事を行うことになります。工事業者からもらった見積もりには、給水管の配管の材質が記載されていますが、正直言って、その材質で妥当なのか、他に選択肢はないのかどうかもわかりませんよね。

そこで、今回の投稿記事では、共用部の給水管の取替え時によく使われる3種類の配管を取り上げて、耐久性やコストパフォーマンスを比べてみました。取替工事を行う際に、どの配管を選んだらいいかを検討する参考になると思いますので、是非、最後までご覧ください。

イラスト①に示した配管例のように、マンションの共用部の給水管は、埋設されている部分と、埋設されていない部分があります。

イラスト①

一般的に埋設されているのは、親メーターからマンションの建物内までの屋外の給水管です。

一方、埋設されていないのはマンション内の給水管で、パイプシャフト内を通したり、もしくは建物の外壁にそって配管されています。

給水管の取替えの際に、よく使われる材質は、画像①のような金属系のステンレス管、樹脂系のエスロンハイパー管もしくはHIVP管です。

画像①

動画

 

3種類の配管の材質ごとの特徴

それでは、共用部の給水管の取替えによく使われるこの3種類の配管の材質の特徴を見ていきましょう。

金属系のステンレス管というのは、見た目がそもそもステンレスなので、なんとなく特徴は想像がつくと思いますが、ステンレスは日本語だと「錆びない」という意味で、金属なのにサビない材質ということになります。サビないのに金属なので強いということですね。

樹脂系のエスロンハイパーとHIVPというのは耳慣れない言葉ですので、ざっくりと説明しておきます。

まずエスロンハイパーですが画像②をご覧ください。これは積水化学工業のホームページからの抜粋画像です。クレーンでエスロンハイパーを高く持ち上げても、グニャッと曲がって折れないというかなり印象的な画像ですね。接合部についてですが、電気融着で一体化されますので、継手部分から漏水することはまずないといえます。

画像② 積水化学工業㈱のホームページより抜粋

次にHIVPですが、Hard Impact ビニールパイプの略で、従来の塩ビ管よりも衝撃に強い塩ビ管ということになります。

では、表①を見ながら、ステンレス管、エスロンハイパー管、HIVP管について、それぞれの特徴を比較していきましょう。

表①

耐久性

まず、耐久性ですがステンレスは基本的にはサビませんが、継手部分はパッキンが使われており、このパッキンの耐久性は現時点では不明と言えます。パッキンを使わないねじ込み式のものもありますが、パッキンタイプと比較して高額になります。

エスロンハイパー、HIVPについては樹脂系なのでもちろん錆びません。エスロンハイパーは電気融着、HIVPは接着剤で継手部分を一体化しますので、給湯でなく給水に使うのであれば耐久性は高いと言えます。

施工性

エスロンハイパーは、電気融着という方法で、接続部分を一体化させる必要があるため、ステンレス管やHIVPと比較して施工時間が長くかかります。

HIVPは以前は接着後、通水まで24時間程度空ける必要がありましたが、最近は接着剤の質が向上し接続してから2時間後には通水が可能です。

施工ミス

ステンレスとエスロンハイパーは、施工の手順上、施工ミスは起こりづらいです。

一方で、HIVPは接着剤の量が十分でなかったりした場合、漏水する可能性があります。ただし、施工後の通水確認で漏水が見つかったとしても、漏水した接続部の復旧は、それほど難しくはありません。

価格(材工)

「材工」と書いてますが、これは、材料費とその配管の工事費の合計という意味です。

材工価格はHIVPと比較して、ステンレスとエスロンハイパーは約3倍程度の価格になります。

施行全体では、配管作業だけでなく、埋設のための土木作業や、パイプシャフト内のスラブのハツり作業等、様々なものがあるので、施工費全体が約3倍になるということではありませんが、配管の材工費だけで規模が大きいマンションでは数百万円以上の差になります。

耐震性(柔軟性)

大きな地震による地面の大きなずれで、配管が折れたりするリスクがありますが、さきほどの画像②のように、エスロンハイパーはかなり柔軟性があり、地面の多少のずれでは、折れることがないので、耐震性が優れていると言えます。

画像② 積水化学工業㈱のホームページより抜粋

イラスト②のように、埋設する部分では、この柔軟性を十分に発揮することが出来ます。ただ、埋設されていない部分は、配管を支持金具で固定する必要があります。

イラスト②

画像④

画像④の赤丸で囲まれている部分ですが、支持金具で固定されているのがわかります。

支持金具で固定されてしまうと、支持金具と支持金具の間隔が短くて、エスロンハイパーでも画像②のような柔軟性を十分に発揮できず、HIVPと比べてもそれほど柔軟性が変わらないということが言えます。

耐火性(消防法)

エスロンハイパーとHIVPの場合、パイプシャフト内のスラブを貫通する配管部分に、画像④のようにフィブロックという耐火材を巻く必要があります。逆にこのフィブロックを巻けば、消防法で定められた耐火性能をクリアすることができます。

画像⑤

どの配管を選ぶべき?

3種類の配管の特徴を総合的に見ていくと、埋設部は柔軟性のあるエスロンハイパーを利用するのが望ましいと考えます。

埋設されていない場所については、どの配管も支持金具を使って固定してしまうので、材工の価格を考慮するとHIVPに軍配があがると考えます。ただし、あまりないとはいえ、接着ミス等による漏水が起こりえます。当然ですが、施工後の通水テストを必ず行うことと、万が一、後日に接着ミスによる漏水事故が起きた場合、誠実かつスピーディに対応してくれる施工業者を選んで工事を依頼するのが望ましいと言えます。また、パイプシャフト内にHIVPを配管したとしても、一般的には、何の問題もありません。ただ、本来パイプシャフト内に収納すべきでないような荷物を大量に詰め込んでしまうような異常な状態では、場合によっては折れる可能性もありますのでご注意ください。

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