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国交省の長期修繕計画作成ガイドライン 配管関連の改定ポイント!

2021年10月16日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

分譲マンションの長期修繕計画を作るにあたってのガイドラインが、国交省から提示されているのをご存知でしょうか。

多くの管理組合では、このガイドラインを参考にして長期修繕計画を作成しています。

それで、つい先日の9月28日に、そのガイドラインが初めて改定されました。

改定内容として、給水管・排水管の修繕周期も変更されています。

例えば、配管を取替えるなら以前のガイドラインであれば修繕時期の目安が30年となっていたのですが、今回の改定では、30年~40年が修繕時期の目安と幅を持たせた内容になっています。

ただし、ガイドラインはあくまで目安です。

単純にガイドラインに従っていればいいということではなく、やはり、それぞれのマンションによって、配管の修繕周期というのは個別に検討・設定していく必要があります。

今回の投稿記事では、ガイドラインを参考にする際に、抑えておくべき考慮点についてお話します。それにより、大切な修繕積立金の無駄遣いを避けられる可能性がありますので、是非、最後までご覧ください。

動画

 

配管に関する項目の改定内容

表①は、国交省の長期修繕計画ガイドラインから、配管の修繕周期に関する情報だけを抜き出して記載したものです。

表①

給水管も排水管も、どちらも年数的には同じですね。更生工事であれば、従来は15年周期でしたが、改定後の目安としては19年~23年と幅を持たせています。

また、取替えとありますが、これは更新工事ですね。従来は30年でしたが、改定後の目安としては30年~40年となっています。

統計に基づいた修繕周期の実態

それでは、実際の修繕周期はどんなものでしょうか。国交省の統計データをもとに見ていきましょう。表②をご覧ください。

この表は、こちらの投稿記事でもご紹介しましたが、平成30年度の国交省によるマンション総合調査から抜粋したものです。

築40年以上で給水管工事、排水管工事をした割合は、なんと3割以下ととても少ない結果となっています。

表②

この結果から、今回のガイドラインで示されている修繕周期の改定の意図を考えると、
「水漏れや詰まりによる水のあふれがなるべく発生しないように、早め早めに修繕するとよい」
「できれば30年目あたりに更新。遅くとも40年くらいまでには更新しないと漏水事故が多くなる」
という意味合いで作成されています。

ただ、上の表でも明らかですが、実際には、予算不足で特に排水管まで手を付けられないという管理組合さんも多く、それでも水漏れが全然起きていないというところも、それなりにあります。修繕周期はあくまで目安として考えて、自分のマンションの配管の劣化状況に応じた保全策を施していくことが大切と言えます。

ガイドライン改定内容に対しての留意点

このように実際の修繕周期には、かなりのバラツキがありますので、少し詳しくガイドラインの修繕周期の意味合いについて見ていきましょう。

更生工事と取替えの関係

単純にガイドラインをみると、給水管も排水管も更生工事を19年~23年頃に行い、その後、築30年~40年目で更新をすべきというふうにも見えてしまいます。

ここでは、そういうことではなく、国交省にも確認しましたが、更生工事をしていないのであれば、取替えは築30~40年目あたりが目途だという意味合いになります。

修繕周期の意味合い

また、更生工事の修繕周期が19~23年となっていますが、築19~23年の間に、必ず更生工事を行うべきというわけではありません。更生工事の後、マンションに何年住み続けるか等により、更生工事が必要かどうか、変わってきます。

また、19~23年ごとに何度も更生工事を繰り返して実施すべきという意味でもありません。

2度目の更生工事も可能と言っている更生工事業者も出て来てきていますが、配管の状態がよくなければ、お勧めは出来ません。

イラスト①をご覧ください。

左側の配管は、初回の更生工事から10年以上経過したあとの配管内部に錆びコブができている悪い例です。初回の更生工事で塗布した樹脂が劣化して錆がむき出しになり、錆が配管を貫通している状態です。

このような状態で、2回目の更生工事で、この錆びをこそげ落とそうとすると、漏水が発生するリスクはかなり高くなると言えます。

「予算の都合で、更新工事ができない。国交省でも修繕周期は約20年としているので更生工事を2度行っても大丈夫だろう」ということではありませんので、ご注意ください。

イラスト①

配管の種類で異なる寿命

次に配管の種類についてです。ガイドラインでは、細かい設定はされていませんので、その点も注意が必要です。

配管には、ステンレスや樹脂管、白ガス管、ライニング鋼管と色々あり寿命がかなり異なります。

また、たとえライニング鋼管であっても、継手部分に錆びない処理が行われていないと、継手部分から漏水が発生しやすくなります。逆に継手部分にきちんと錆びない処理が施されていれば、経年劣化で漏水事故を起こす可能性は低くなってきます。

ですから一概に、どの配管でも30~40年目で取替えが必要というわけではないので、配管の種類をよく確かめて、適切な保全を行うよう心掛けてください。

また、ステンレスや高性能な樹脂管に変えた場合は、地震や屋外の地盤沈下など、よほどのことがない限り、2回目の取替えは40年以上先でよいと言われています。

材質別の配管の寿命については、以前、「マンションで使用される給排水管の耐用年数一覧」という投稿記事でお話したことがあるので、そちらも参考にしてみてください。

また、「マンションで漏水を起こす配管 危険度ワースト5」という投稿記事もありますのでご参考にしてみてください。

配管の用途による寿命の違い

それから排水管については、用途によっても、修繕時期が変わってきます。

たとえば、雑排水管の中では、浴室や洗面所の雑排水管ではなく、キッチンの雑排水管がもっとも詰まりによる水あふれが生じる可能性が高いと言えます。即席ラーメンの汁を知らず知らずに、しょっちゅう捨てていて、雑排水管内に油が固まって詰まってしまうといったことが生じやすいということですね。

画像①

専有部についての修繕周期

さらに、国交省が提示しているマンション標準管理規約も改定されましたが、それに連動して、長期修繕計画作成のガイドラインでは、専有部の修繕周期についても追記されました。

専有部の配管は、管理組合でなく各区分所有者に修繕義務がありますが、昨今、専有部も管理組合主導で修繕するところが増えてきている流れを受けての追記です。

表③

専有部の配管は、共用部の配管よりも細くて肉厚も薄く、漏水や詰まりが起こりやすいので、28~32年と共用部の修繕周期よりも短めに設定されていることがわかりますね。

なお、築25年以上のマンションの給湯管でよく使われる銅管が、実はもっとも漏水リスクが高いと言えるのですが、今回のガイドラインでは給湯管の銅管については記載がないようです。

また、排水管についてですが、リフォームやリノベーションをしていない限り、ガイドラインに記載されている築32年までに取り替えたマンションは、あまりないのではないでしょうか。それでも、築40年、築50年でも延命処置を行っていれば、漏水や詰まりがそれほど発生していないところも増えてきています。

給水管・給湯管と違い、専有部の排水管の更新は、かなり費用がかさみます。

築70年、80年まで住み続けるのであれば、取替えも必要となってきますが、それよりも短い年数までであれば、延命処置によって取替えの必要性が低くなる場合もありますので、予算と相談しながら適切な保全処置を検討することをお勧めします。

また、築20年以前のマンションであれば、樹脂管が多く、劣化による樹脂の破損も起こりにくいので、給水管・給湯管・排水管ともに、もっと周期は長くていいといえます。

何度も申し上げていますが、今回の改定はあくまで目安ということになります。また、長期修繕計画は、予算を確保するために、余裕を持って、早め早めに修繕が計画される類のものです。

このガイドラインをうのみにせず、マンションごとに状況をしっかり把握して、きちんと適切に保全をしていくことが肝要ですね。

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