勉強部屋

マンションで漏水を起こす配管 危険度ワースト5

2021年7月24日
この記事のカテゴリー : 勉強部屋おすすめ記事 配管に関する知識

これまで、配管保全センターにご相談いただいたマンションは、ざっと1000組合以上になります。築40年以上に限定しても500組合程度のご相談をいただいてます。

その際に、「どこで漏水が起きましたか?」とお伺いしているのですが、この投稿記事では、実際にお聞きしたり、内視鏡調査の結果をもとにマンション内で漏水しやすい配管の危険度ワースト5をあげました。

管理組合としては、共用部の保全がメインで専有部は管理対象外だと思いますが、築40年を過ぎたあたりになると、専有部からの水漏れが多発するマンションが数多くあります。

その場合、管理組合が加入している火災保険が大幅に値上がりしたり、加入できなくなったりしてきます。また、専有部の水漏れをそのままにしていると、資産価値が大きく下がることも考えられます。

各世帯の配管の取替えが、いっこうに進まず、専有部の水漏れ解消のために、全世帯から一時金徴収を行おうとしても、なかなか合意にいたらないといった状況に陥るマンションは少なくありません。

築60年以上になっても安心して住み続けるための生命線は配管にあるといっても過言ではないでしょう。今回の投稿記事ではお住まいのマンションの配管の漏水危険度がわかり、どこに重点を置いて保全を考えていけばいいのか参考にしていただけると思いますので、是非、最後までご覧ください。

動画

 

ワースト1位 銅管の給湯管

早速ですが、ワースト1位は、専有部の給湯管ですね。築20年以下だとほとんど銅管は使われてませんが、築25年以上だと、かなりの割合で、銅管が使われています。

イラスト①

イラスト①のサンプルイメージでは、赤色が給湯管です。給湯器がベランダに置かれている場合、銅管を交換する際に床を剥がしたりする面積が広くなる可能性があります。

また、給湯管が漏水した場合、階下に影響を及ぼしてしまう可能性が高いといえます。

  • 漏水の原因は、築20年前後でも、銅管の潰食によるものが最も多くあげられます。

    給湯管内の水は高温になると気泡ができやすくなります。このアワが銅管の曲がった部分のエルボー部にぶつかり続けることで銅管にピンホール状の孔をあけていきます。

    築20年前後でも、給湯管が銅管の場合は、この潰食による水漏れが起こり、同じ部屋で何度も水漏れ事故が発生することもあります。

    また、酸化によりピンホールが空く孔食(こうしょく)という現象も、銅管には起こりやすい現象です。

  • イラスト②

ワースト2位 異種金属接触部分

漏水しやすい配管のワースト2位は、異なる材質の配管が接触した異種金属接触部分になります。

主に2か所ありますが、1つ目はイラスト③の赤丸で示した部分で、パイプシャフト内で水道メーターと配管との接触部です。

築20年以下のマンションであれば、異種金属接触をさせない接続方法になっている可能性が高いのですが、築25年以上だと、水道メーターまわりの配管を交換していない限り、異種金属接触になっている可能性が高いといえます。

それから、2つ目は、緑色の丸で示した各部屋の蛇口と配管の接触部ですね。こちらは数カ所あります。

異種金属接触が問題となる水道メーターまわりと蛇口まわりは、床下や天井裏でなく、工事しやすい箇所になりますので、取替えにあまり手間がかからないため取替え費用も、それほど高額にはなりません。

イラスト③

ワースト3位 白ガス管

ワースト3位は、白ガス管と言われる配管用炭素鋼鋼管です。

築30年以下のマンションでは、ほとんど使われていませんが、築40年以上のマンションでは、わりと使われています。

使われている場所としては、給湯管を除くあらゆる配管ですね。

鉄は水に触れると非常に錆びやすいのですが、配管の内側をコーティングすることなく、そのまま使っているので、水漏れが起こり始めたら、極力早めに他の箇所も交換していくことをお勧めします。

ワースト4位 塩ビライニング鋼管

ワースト4位は、塩ビライニング鋼管です。

築30年以上では、かなり多く使われている配管で、給水管の立管では、築20年以下の新しいマンションでも使われている場合が多いです。

鋼管の材料である鉄は水と触れると錆びるので、イラスト④のように水と触れないように、配管内部を塩化ビニルの樹脂で被膜しています。

ただし、鋼管の端の部分の切り口は、鋼管がむき出しになっています。鋼管と鋼管をつなぐ継手部は、どうしても水と触れやすいので錆びやすいんですね。

継手部に、管端コア、コア内蔵といった防錆継手を使っているマンションもありますが、築30年以上のマンションになると、継手が防錆処理されていないケースがほとんどといえます。

イラスト④

イラスト⑤にさきほどの配管レイアウトサンプルで、給水管のどのあたりに、継手があるのかを赤丸で示しました。床下が継手だらけだというのがわかりますね。

共用部の立管にも継手がありますが、専有部の配管よりも太くて配管の肉厚が厚いので、専有部の塩ビライニング鋼管のほうが、水漏れを起こしやすいといえます。

また、排水管が塩ビライニング鋼管の場合、錆びによる漏水に加えて、錆びコブに汚物が堆積して配管が詰まり、水があふれてくる事故も起こりえます。

排水管の立管は、部屋のトイレの裏や台所の横の裏側にある場合が多く、マンションによっては、2本も3本も立管があったりします。また、専有部の横引き管は勾配を付ける必要があり床を剥がす面積も広くなりがちです。

よって、排水管を取替える更新工事は、かなり高額になりがちです。

イラスト⑤

ワースト5位 塩ビ管

  • 最後にワースト5位ですが、意外ですが塩ビ管です。

    塩ビ管は樹脂なので錆びないのですが、イラスト⑥の上のイメージのように高圧洗浄のコードが塩ビ管の曲がった部分のエルボー部を強くこすり、破損することがよく起こります。

    また、イラスト⑥の下の画像のように、塩ビ管でもキッチンから捨てられた油や食べ物カスが固着して詰まって水あふれを起こす可能性があります。

    ということで、塩ビ管の中でもキッチンからの雑排水管が、もっとも詰まりやすいですね。

  • イラスト⑥

管理組合としては、共用部の配管のみを気にされているところが多いですが、実は専有部のほうが、漏水事故は多いんですね。

修繕積立金で、専有部の面倒まで見きれないというマンション場合がほとんどだと思いますので、各世帯がリフォームを行う際には、配管も更新してもらうように情報共有していくことが大切と考えます。

また、給水管だけでなく排水管の保全効果も期待できる流動式セラミックス方式を早めに設置していれば、表①のように、漏水事故の確率を低くすることも期待できます。

設置費用としては、世帯あたり6万~16万ですが、ほとんどの場合は、10万円以下で設置することが可能となっているので、修繕積立金不足で配管の更新ができなくてお悩みのマンションでは、なるべく漏水を減らす有効な手段だと考えてます。

表①

今お住まいのマンションに安心して住み続けるために、給排水管の状態を良好に保つことはとても大切です。 どの部分が最もリスクが高いのか、限られた修繕積立金の中で、いかに費用効果を高く保全していくべきなのかを早めに見極めて、保全対策をしていくことが望まれます。
関連キーワード

キーワードから関連記事をご覧になれます。

関連記事

勉強部屋動画記事一覧をみる