2024年9月26日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

今回の投稿記事では、各世帯がリフォームを行う際に、各自で専有部内の配管の取替えも進められるように、管理組合が配管の取替えのガイドラインを作成する重要性と、その際に絶対に抑えておくべきポイントについてお話しします。
マンションの資産価値を保つためにもたいへん重要な内容となりますので、ぜひ最後までご覧ください。
配管が放置されることで引き起こされる漏水や水溢れ
では、専有部の給湯管や給水管を取替えずに放置したままだと、どんな問題が起きるでしょうか。
先ほども申しましたように、国内のマンションの漏水事故で最も件数が多く、被害も大きくなるのは専有部内の給湯管からの漏水です。
また、専有部の給水管もライニング鋼管という鉄の仲間の配管を使っているマンションが多く、ライニング鋼管は錆びやすいために、築40年を過ぎたあたりから漏水事故が増え始めます。
専有部の排水管は、塩ビ管という錆びない材質を使っているマンションが多いのですが、築年数が古いマンションだと塩ビ管ではなく、白ガス管というかなり錆びやすい配管を使っているところもあります。
白ガス管等の鉄管系の配管を使ってる場合は、排水管も取替える必要が出てきます。
排水管は問題となるのは錆びによる漏水だけではありません。放置したままだと、錆びコブに配管内に溜まった食品カスや油脂などが堆積して、配管の口径が狭くなって、配管が詰まりやすくなります。
詰まった排水管に排水すると、洗濯機の防水パンやお風呂の排水溝から水が溢れ出てきて階下に被害を及ぼすというリスクも高くなります。
これに対して、現在のところ、専有部の配管に関しては、適宜配管を取り換えるなど、各区分所有者の責任において配管の保全をしていくというマンションがほとんどといえます。
もちろん配管取替えの費用も各区分所有者持ちとなりますから、長期修繕計画にも専有部の配管取替えに関しては予算が計上されていないことが多いといえます。
その結果、築40年以上になってくると、漏水がちょくちょく起きるようになり、空室や所在不明の部屋も増えていきます。
そうなると、修繕積立金は益々不足して、専有部の配管を取替える費用の捻出も難しくなる一方で、管理組合主導で一斉更新するために、追加で修繕費用を徴収しようとしても、住民の高齢化も進んで、今から配管の取替えに何十万円もかけたくないと反対する住民も増えてきます。
なかなか住民からの賛同を得られずにいるうちに、あちこちから漏水し始めて、さらに空室や所在不明の部屋が増加していくという悪循環に陥り、最終的には誰も住まないスラム化マンションとなってしまいます。
また、管理組合全体にとっても、専有部内の配管の取替えがマンション内で進むことで、専有部の配管を一斉更新で取替えなくてはいけない世帯数が少なくなり、結果的に管理組合が負担する修繕費用が大幅に削減できることとなります。
そして、何よりも、必要最低限の費用負担でマンション内の漏水リスクを減らせることになります。
たとえば、以前に浴室をリフォームしていたとしても、場合によっては、配管を取替えるために、浴室を壊す必要が生じます。
組合主導の場合は、修繕積立金から標準的な内装復旧費用しか支払われませんので、高額な復旧費用が掛かる場合は、だれがその費用を持つのかといった問題が起こり、管理組合主導での取替えが進まないということにもなりかねません。
2、3年前にリノベーションして、ユニットバスを高級仕様にしたばかりなのに、標準的な内装復旧費用を超える額については自己負担になると言われて揉めてしまうわけですね。
ということで、リフォームやリノベーションをしてマンションに移り住んでくる新規の区分所有者に対しても、組合のガイドラインをきちんと提示できるようにしておくことは、とても大切です。
リフォームやリノベーションのタイミングは、配管取替えを行う絶好のチャンスです。この機会を逃すと、後々高額な費用がかかる可能性があります。
各区分所有者がリフォームする際に、取替えるべき箇所は全てきちんと取替えられるように、ガイドラインを作成して、取替えるべき配管やどこからどこまで取替えるのかを明確にすることはとても大切だということをご理解いただけたのではないでしょうか。
また、ガイドラインのなかで、たとえば各区分所有者がリフォーム時に配管を取替える際には、管理組合が修繕積立金から20万~30万円程度の補助金を拠出するといったルールを作ることで、配管の取替えを促進させるといったことも考慮する必要があるかと考えます。
とはいえ、専有部の配管の保全対策に管理組合が口を出したり、修繕積立金から拠出するということに対して、きちんと説明しないと住民から反対されることが多いといえそうです。
これに関しては日頃から管理組合からマメに情報発信したり、住民の意見に耳を傾けるなど、管理組合のコミュニケーション力が問われるといえます。
管理組合主導で専有部の配管保全をする際の補助金制度については、以前公開したこちらの投稿記事を参考にしてみてください。
配管保全センターでは、専有部の配管取替えを管理組合主導で円滑に行えるためのサポートも行っております。
必要に応じてガイドラインの作成や、管理規約の細則も作成しています。
サポートの内容によっては有料となりますが、配管の保全方針やそれを実現するための住民へのコミュニケーションのサポート等、配管保全センターですべて対応しておりますので、ご興味のあるかたは、配管保全センターにお気軽にご相談ください。
