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7階建てマンション 排水管立管を1系統1日で取り替えた事例と費用

2023年5月19日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用

一般的に排水管の立管を取替える場合、1系統を何日もかけて取替えることが多いと思います。立管がある場所が、トイレの裏やキッチンの横といった専有部内であることも多く、工事期間中は何日も、業者が部屋の中を行き来することになり、住民の方々は部屋にいなければならず、負担が強いられます。また、工事日数が多ければ、費用自体も嵩んでしまうことになります。

今回のケースでは、7階建てのマンションで、トイレの裏にある排水管の立管を取替えるのに、1系統ずつ、1日で取替え、翌日に内装復旧まで終えた事例をご紹介します。世帯あたりの費用についてもお話しますので、是非、最後までご覧ください。

動画

 

今回の工事での取替え系統数と日程

今回のマンションでは築40年程で、排水管立管が劣化してきたため、排水管立管の取替え工事を行うことになりました。

下の図1は、マンション全体を横から見た排水管の立管の系統図です。実際には、図面と異なる箇所も多数あったので、あくまでも竣工図をもとにしたイメージ図です。

7階まである立管の系統が4系統、6階までが3系統、5階までも3系統、4階までが2系統となっています。

それぞれの系統で、立管の取替えを行うための壁の開口から始めて、立管の取替えを1日で行い、その翌日に内装復旧まで終えます。

工事の対象となる系統では、1日目の朝9時からその日工事が終了する夕方ごろまで断水となりますが、その日の工事が完了すれば夕方から水道水は使えます。翌日の内装復旧の工事では、断水にはなりません。

図1

専有部内の既存排水管のレイアウト

工事前の専有部内の既存排水管のレイアウトが図2になります。部屋によって、リフォームされていて異なる場合もあるので、あくまでサンプルとしての配管レイアウトになります。

今回取替える立管と専有部内の横引きの排水管とは、下の図2内の画像で示したソベント継手という継手で接続されています。

このソベント継手を起点として、3方向に横引き管の排水管が配管されています。1つ目は、浴室、洗濯機、洗面所への排水管。2つ目はトイレへの排水管。3つ目はキッチンと電気温水器への排水管です。

図2

トイレ奥の壁を開口して、立管を取替える前の動画がありますので、こちらをご覧ください。

手前に見えるのがトイレからの排水管です。右側が、キッチンと電気温水器からの排水管です。左側が浴室、洗濯機、洗面所からの排水管です。

今回取替えた配管の材質

それでは、今回、取替える配管の材質について説明します。

まず、今回のマンションでは電気温水器を使っており、電気温水器の仕組みについて少し説明しておく必要があるかと思います。

電気温水器には、お湯を貯めておく貯湯槽がありますが、貯湯槽の中の圧力が高くなりすぎないように、圧力調整のために、90度近い高温のお湯を少量ずつ排水するようになっています。

また、電気温水器が故障した場合には、貯湯槽内の90度近い高温のお湯が大量に排水管に排水されることになります。

そのため、耐熱性の排水管や継手でないと熱によって歪んでしまい、漏水トラブルの原因になりかねません。

そこで、今回の取替え工事では、こういったトラブルを避けるために下の図3のような材質を使うことにしました。

継手は、樹脂製ではなくエスロンADスリムという金属製の集合管を使用します。

排水管の立管は、耐火VPという樹脂製の配管を使います。耐火VPは鋳鉄管やトミジ管より遮音性が若干おとるため、黒い遮音カバーを付けて、水の流れる音を抑えます。

電気温水器の水が通る横引管は、HT-VPという耐熱性の樹脂配管を使用します。

図3

取替え後の動画がありますので、こちらをご覧ください。

立管は耐火VPに黒い遮音カバーを付けているので、見た目は黒く見えます。手前がトイレの排水管でこれも耐火VPです。

右側は、電気温水器側からの排水管で、茶色の耐熱性のHT-VPが配管されています。

左側は、浴室、洗濯機、洗面所側からの排水管で耐火VPです。

工事開始から完了までの様子

ご参考までに、さきほどと同じマンションの別の部屋のトイレの便器をはずしたあと、壁を壊して開口するところから、工事完了までの様子を順に画像で示しましたのでご覧ください。

① は、養生をしてトイレの便器を取り外した様子です。
② は、壁を壊して開口した様子です。立管と下のほうにソベント継手が見えています。
③ は、既存の立管を切断し、下階との間にあるコンクリートをはつって、立管を取り除いた様子です。下の階が見えます。
④ は、新しい配管と継手を接続し直した様子です。
⑤ は、壁を復旧し、トイレの便器も付け終わった様子です。

世帯あたりの費用

今回ご紹介した1系統1本の排水管立管の取替え工事の費用は、世帯あたりで、内装復旧費込みで、当初は税抜きで約25万円で見積りを提示していました。その際の前提として、電気温水器からの排水は流入してこないという前提でした。

その後、図面と異なり、電気温水器からの排水も立管に流入してくることがわかりました。

そこで、継手や配管の材質を耐熱性の高いものを使う条件での再見積りを行いました。耐熱性の継手や配管は、高額であったこと、また、当初の見積りを提示してから最終的な見積りを提示するまでに9カ月経過しており、その間に、部材や人件費の急激な値上がりもあり、最終的には、税抜き約35万円での見積り額となりました。

部材や人件費の急激な値上がりの影響もあったとはいえ、配管の材質等で、見積り額がかなり変化することがお分かりいただけたかと思います。

また、今回は、7階建ての1系統をいっきに、1日で配管の取替えを終わらせることができましたが、配管を取替えるときにはつるコンクリートの厚みや、取替えスペースの広さ、立管の本数や、専有部の配管も一緒にどこまで取替えるか等で、日数や見積り額は異なってきます。

世間一般的には今回の工事は、世帯あたり50万円程度が目安となりますので、35万円というのは、かなり安めの価格だと言えます。管理会社を通さず、直接管理組合さんとのやりとりを行ったことも、相場よりも安めの値段で出来た理由のひとつと言えます。管理会社を通さない場合、日程調整等は業者が行います。

どうしても連絡がつかない住民の方への連絡のお手伝い等、管理組合さんにお手伝いいただく必要がありますが、それでもこれだけの費用差になるということは、注目すべき点かと考えます。
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