2023年3月23日
この記事のカテゴリー : 受水槽の保全・直結化

総じて、復旧は電気が最も早く1週間もすればほぼ、9割以上が復旧しているのがわかります。
次いで水道ですが、1週間以上たっても、阪神・淡路大震災と東日本大震災では復旧率が5割程度ですね。
9割以上が復旧するのは、熊本地震では1週間程度、阪神・淡路大震災で3週間以上、東日本大震災では5週間以上かかりました。
では、給水車による給水状況はどうだったのかを見てみましょう。給水車による一人1日あたりの目標給水量は3ℓですが、上のグラフのように、宮城、岩手、福島、茨城では、20日以上かけても目標給水量3ℓに到達するのは難しかったようです。
ということで、地震発生後、4日程度は貯水槽の水を利用できたとしても、貯水槽の水がなくなってしまったあとは、貯水槽がないマンションとあまり変わらない状態だったということになります。
一人1日あたりの水の使用量は3ℓ程度とすると、3人家族であれば4日間で36ℓ、2ℓのペットボトル6本入りが3ケースです。それくらいの量なら防災意識の高い昨今では、貯水槽に頼らずとも、各戸で備蓄しているのではないかという考え方もあります。
初期耐震仕様は、1981年以前に製造されたもので、2023年時点で築42年以上のマンションの貯水槽ということになります。
旧耐震仕様は、1982年から1996年に製造されたもので、2023年時点で築27年から築41年のマンションの貯水槽ということになります。
1995年のマグニチュード7.3の阪神・淡路大震災では、貯水槽が壊れて貯水できなくなった割合は、初期耐震仕様のものでも3%以下でした。
一方、2004年の新潟県中越沖地震、、2005年の福岡県西方沖地震では、壊れて貯水できなくなった割合は、初期耐震仕様のもので23.5%、旧耐震仕様のものは16%程度でした。
貯水槽の耐用年数は15年と言われていますが、大きな地震が起きなければ、築40年経過しても稼働しているものは数多くあります。
ただ、大地震が起きた場合は、やはり年数が経過するほど、被害は受けやすいと考えられます。
状況によっては、パネルをいちから組み直す必要が生じますが、専門業者は限られており、東日本大震災のように入場制限により、専門業者がすぐに現場に入れないとなると、順番待ちとなって、数カ月から下手をすると1年以上、復旧できないリスクがあると言えます。
地震発生直後でも貯水槽があれば水を確保できるということを重視したとしても、初期耐震仕様や旧耐震仕様で製造された貯水槽のパネルは年と共にどんどん劣化しており、震災時にパネル等が破損するリスクは高まる一方です。
地震対策を重視するのであれば、破損リスクが高く、復旧に数カ月かかるかもしれない状況を避ける選択をしたほうが、賢明だという考え方もあります。
直結増圧ポンプ方式の場合は、水道本管が破損していなくて、停電だけしている状態であれば、3階程度までは電気を使わなくても普段通り給水される可能性が高いです。マンション内の配管が破損していなければ、水道本管と電気の復旧とともに正常利用が可能となります。貯水槽方式の場合は、貯水槽が破損してしまうと、水道本管と電気が復旧しても、普段どおり水道水が使えるようになるまでには数カ月かかる可能性もあることを考えると、震災直後の数日の水確保のために、劣化した貯水槽を使い続けるほうがリスクが高いという考え方もあります。
また、直結増圧ポンプ方式に変更して、水道本管と直結化するのであれば、給水管の埋設管をエスロンハイパーという材質にしておけば、大地震であっても配管が破損するリスクは低いといえます。
配管保全センターでは、分譲マンションの修繕積立金の状況や、あと何年住み続けるつもりかなどを考慮して、「受水槽を保全していくのか?」あるいは、「直結化していくべきなのか?」を中立的な立場からご提案しております。
