2020年2月21日
この記事のカテゴリー : 配管に関する知識
作成日:2020年2月21日 最新更新日:2021年12月14日
著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大
配管の耐用年数は税法上(※1)は15年ですが、配管の種類によって実質的な耐用年数は異なります。
下の表は、2005年、2012年に編集された参考文献(※2)をもとに整理した配管の種類ごとの耐用年数です。 ①の『設備配管の診断・改修実務』では”期待耐用年数”を、②の『IFRS対応 建物の耐用年数ハンドブック』では、”使用計画に基づく耐用年数”を参考にして交換工事を行うのが理想といえますが、実際には、この耐用年数を過ぎても、交換せずに水漏れを起こしているケースが多数あります。【新サービス開始のお知らせ】 マンションの給排水管の取替えが国内初の月額定額制の保守サービスで実施できます。詳しくはこちらの投稿記事をご覧ください。
配管の種類 | ①設備配管の診断・改修実務 | ②IFRS対応 建物の 耐用年数ハンドブック | 備考 | ||
期待 耐用年数 | 接合方法 | 使用計画に 基づく 耐用年数 | 接合方法 | ||
(硬質)塩ビ ライニング鋼管 | 15 | 管端コア使用 | 25 | ー | ①の注: コア付き全面コートの継手は実績確認が不足のため今後の研究を待つ |
耐熱塩ビライニング鋼管 (給湯) | ー | ー | 25 | ー | |
銅管(給水) | 30 | ハンダ | ー | ー | |
銅管(給湯) | 20 | ハンダ | 25 | ー | エルボー部の主に気泡による 潰食(かいしょく) |
排水用鋳鉄管 | 40 | ゴム止水 ノーハブ接合 | 40 | ー | 実例: 40年以内でも漏水例はある |
60 | 鉛コーキング | ||||
配管用炭素鋼鋼管(白) (給水) | 15 | 亜鉛めっき継手 | ー | ー | |
配管用炭素鋼鋼管(白) (汚水、雑排水、通気) | 30 | ゴム止水 引抜阻止 ノーハブ接合 | 20 | ー | |
排水用硬質塩ビ ライニング鋼管(排水) | ー | ー | 30 | ー | |
硬質塩ビ管 | 30 | 接着剤 | 25 | ー | |
硬質塩ビ管(排水) | ー | ー | |||
耐火二層管(排水) | |||||
耐熱塩ビ管 | 30 | 接着剤 | 25 | ー | |
一般配管用ステンレス鋼管(給水・給湯) | 30 | ゴム止水 引抜阻止 | 30 | ー | 通説: ステンレスは半永久 パッキンが30年 |
水道用ポリエチレン管 | 40 | 材料溶着 | ー | ー | |
架橋ポリエチレン管 ポリブデン管 | ー | ー | 30 | ー | 30年は紫外線を考慮 さや管からポリエチレン管を引き抜いて交換 経年劣化で引き抜けない場合もあるがさや管自体の更新もほかの管と比較して容易 |
実際に、お住まいのマンションの配管の種類はどれでしょうか? 管理組合で保管しているマンションの竣工図(衛生設備関係)に、給水管・給湯管・排水管に使用された配管の種類がそれぞれ表記されていますので、ご確認ください。どこにどんな配管が使われているのかを大まかに区分けすると次のようになります。
・赤字:サビやすい配管
・青色:ピンホールを起こしやすい配管
築20年前後 | 築35年前後 | 築50年前後 | ||
---|---|---|---|---|
共用部 | 給水管 | ステンレス管、水道用ポリエチレン管、塩ビライニング鋼管 | 塩ビライニング鋼管 | 塩ビライニング鋼管、白ガス管 |
排水管 | 鋳鉄管、塩ビライニング鋼管 | 鋳鉄管、塩ビライニング鋼管 | 鋳鉄管、塩ビライニング鋼管 | |
専有部 | 給水管 | 架橋ポリエチレン管 | 塩ビライニング鋼管 | 塩ビライニング鋼管、白ガス管 |
給湯管 | 架橋ポリエチレン管 | 銅管 | 銅管、塩ビライニング鋼管、白ガス管 | |
排水管 | 塩ビ管 | 塩ビ管、塩ビライニング鋼管 | 塩ビ管、塩ビライニング鋼管、白ガス管 |
築20年前後では、専有部にはサビない材質が使われていますが、サビ以外にも以下のような問題が起きます。
・給水管:スライム(ヌメリ)による汚れ
・給湯管:スケール(カルキ)による閉塞
・排水管:食用油や食べかすによる詰まりや高圧洗浄による破損
給排水管の洗浄頻度を抑えて、費用を上手に節約しながら配管を延命させる管理が必要といえます。
限られた修繕積立金で、なるべく水漏れを起こさずに、耐用年数が過ぎても使い続けていくには、配管の延命対策をしていくことが賢明といえます。延命対策としての情報は、以下の関連ページをご覧ください。
※1 税法耐用年数、個別的耐用年数、物理的耐用年数、事業的耐用年数、経済的耐用年数、経済的残存耐用年数、使用計画に基づく耐用年数
限られた修繕積立金で、なるべく水漏れを起こさず、耐用年数以上でも使い続けていくには、やはり配管の延命対策をしていくのが賢明だといえます。延命対策としての情報は、以下の関連ページをご覧ください。
※2 上の表の①②の参考文献
①『設備配管の診断・改修実務』
2005年再編 編集:日本建設設備診断機構 出版社:オーム社
・p145表6.6 用途別仕様管財の期待耐用年数のグレード表(参考例)と
・p147表6.10 各感材別接合方法による機体耐用年数のグレード表(参考例)を参考に作成
・『設備配管の診断・改修実務』自体は一般財団法人建築保全センター(編) 『建築設備の耐久性向上技術』 1986年を一部加筆修正
・前提:耐用年数とは設備配管が老化現象を起こし補修が不可能になった年数。(どの時期をもって耐用限度とするかも難しい問題で、諸条件を考慮し総合的に判断)
・実績を重視。特別な水処理は考慮に入れない。
・使用条件は通常の事務所程度
・用途、使用状況、部位、外部環境、施工方法、施工者の技量、支持・固定の状態、防食の仕様、外面被膜剤の仕様、日常の維持管理状態などに大きな影響を受ける
・接合作業の良否の偏りはある。外面防食は完全なものとして内面についての判定。
2012年 編集: BELCA(公益社団法人ロングライフビル推進協会) 出版社:中央経済社
・IFRS(国際財務報告基準):2005年からEU域内の上場企業約7千社の連結財務諸表に適用され現在では100か国以上が採用する世界で最初の標準となった会計基準。
・IFRSが規定する耐用年数:使用計画に基づく耐用年数⇒各企業の中長期使用計画(利用計画、維持保全計画、修繕計画、資金計画等)による総合的判断に基づく耐用年数。
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