2020年1月27日
この記事のカテゴリー : 給排水設備の更新費用
作成日:2020年1月27日 更新日:2020年8月24日
著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大
築年数が経ったマンションでは年々増える専有部の水漏れが悩みとなります。それならば、管理組合で専有部の配管も一気に交換してしまおうという場合、どのくらい費用がかかるでしょうか? おおよその感触をつかんでいただくための情報を記載します。
今回、既存の給水管と給湯管は床下に配管されているため、そこには手を付けずに、新たに天井に配管にしました。給水管は水道メーターから蛇口まで、給湯管は給湯器から蛇口までを交換しています。また、浴室内では露出配管にしています。
交換工事は以下のようなながれで行いました。
①パイプシャフト*から既存の点検口や通気口から新しい配管を浴室まで配管する
②浴槽の蛇口の真上まで配管を持ってくるための新しい点検口を浴槽の上に開ける
③浴室の蛇口の真上の天井に配管を通すために、給水管・給湯管の2つの穴を開けて配管を蛇口までつなげる
*パイプシャフト:通常は玄関の横あたりにある水道メーターやガスメーター、給湯器があるスペース。
新しい配管は錆びにくく、柔らかくて施工しやすい架橋ポリエチレン管を使用しました。現在は、この架橋ポリエチレン管を専有部内の給水管・給湯管に使うのが主流となっています。
なお、天井配管にして、浴室内は露出配管にした理由は次の通りです。
・元の配管は床下に配管されているため、取り替えようとすると、玄関から浴室まで床をはがす大がかりな工事になってしまう。
・浴室の蛇口がある壁の裏側には配管するスペースがない。浴室内で配管を露出させないためには、浴室の壁を壊したり、浴室の裏側の部屋の壁をはがして梁に穴をあけたりといった大がかりな工事が必要になる。
このような工事では費用が数十万円と高額になるため、予算の関係で天井配管と露出配管にしました。
一般的な工法での費用感についての情報はこちらもご覧ください。
業者から出る見積もりには左のような項目が記載されるでしょう。まず部材ですが、配管、配管をつなぐ継手や配管を固定させる支持金具、露出部分をカバーする化粧カバーや化粧カバーをつなぐ継手、それらを固定させる支持金具といったものが必要になります。これらは、水道メーターや給湯器から蛇口までの距離や、露出配管の長さによって変わってきます。単価は見積もりに記載されますので、複数社との比較で、部材が高いか安いかは判断できます。ただ、こういった部材はそれほど業者により変わることは少ないと考えられます。
次に工賃ですが、業者間で費用に差が出てきます。天井や壁に点検口や穴を開けて、そのあとクロスを貼って内装を修復する工事、配管をつないだり固定したりする工事、梁に穴をあけるコア削孔の工事といったものがあります。マンション全体で一気に短期間で工事を行う場合は、その分、多くの職人を確保する必要があり、見積もり額が高くなる場合があります。
その他の費用として養生費、廃材の処分費用、配管等を運ぶ運搬費や交通費、それから諸経費などが掛かります。
今回のケースの費用ですが、ここに記載したようなさまざまな要因で見積額は大きく変わるというのが正直なところです。
知人の業者に頼んで、床下をはがすのでなく天井配管にして、天井に開ける点検口の数は少なく、また開けたあとの復旧の内装もそれほどこだわらず、天井裏の梁は複雑でなく簡単で、浴室内は露出配管にして、水道メーター・給湯器から蛇口までの距離が近く、パイプシャフト内から天井裏には配管が通るスペースがあり、穴をあけるコア削孔という工事が不要で、パイプシャフト内に人が入って作業するスペースが十分あるケースであれば15万円といった金額になると想定されます。条件が変わってくれば20万、30万、50万と高くなっていきます。
また、トイレや洗面所、洗濯機、キッチンなどの水まわりも同時に工事を行うことも多いと思いますので、その際は、さらに費用がかさんできます。
リフォームで床や壁をはがす際に、配管も一緒にやり直す場合は、配管をつなぐ作業も簡単になるので、配管工事自体はかなり安くなるでしょう。この場合は、浴槽だけに範囲をかぎれば、部材と少しの工賃だけですみますので10万円もかからない場合もあるかと思われます。
それから表に「緊急度合い」とありますが、配管から水漏れが起きて、階下の部屋も水浸しになり、1日でも早く直さなくてはいけないといった時間的に余裕がない場合は、特急料金として高くなりがちです。
給水管・給湯管だけでなく、排水管も同時に取り換えてしまうほうが、それぞれ変えるよりも割安になります。
ということで、リフォームのタイミングではなく、浴室の給水管・給湯管の配管(水道メーターや給湯器から先)を交換する場合は、安くて15万程度、高いと数十万円かかるでしょう。古いタイプの浴槽も変えるというときは、場合によっては100万円を超す場合もあります。
ケースバイケースということになりますが、最低これくらいはかかるという感覚を持てれば、みなさんが実際に見積もりを取るときに、ある程度は、見積もり価格の妥当性を見極められるのではないでしょうか。
それから、アフターサービスについても確認してください。チェックポイントとしては、業者が倒産しても10年間は不具合を保証してくれる保険に加入しているかどうかです。ただ、保険に加入できる業者は、それなりの体制を整えているところが多く、格安な工事は望めません。優先順位を決めて選択していただければと思います。