2020年1月6日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い
著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大
マンション専有部の修繕は基本的には各区分所有者が、自己負担で個別に行う必要があります。原則として管理組合が勝手に専有部の修繕を行うことはできません。ただし、専有部で起きることが多い水漏れは、近隣とのトラブルにもなりかねないので、管理組合では専有部の配管も修繕積立金を使ってまとめて取り換えたいと考えることが多いといえます。このとき、築年数が経ったマンションでは配管がスラブ下に通っている場合が多く、築浅のマンションでは配管がスラブ上を通っているので、取り換えに至る経緯が異なりますので以下を参考にしてください。
図のように排水管が床下のスラブの下(階下の天井の上)に配管されている場合、スラブまでの専有部の配管と、スラブから下の共用部の配管は一体化しています。マンションの管理規約が国交省のマンション標準管理規約(*1)をベースに記述されたものならば、これは構造上一体となった配管となるので、「専有部の配管の管理も管理組合が行える」となります。まずは規約を確認してください。
*1 国交省のマンション標準管理規約 第21条第2項「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」
「専有部の配管の管理も管理組合が行える」と明記されていれば、総会で合意を得たのち、管理組合主導で修繕積立金を使って専有部の配管の取り替えを実施できます。この際に気を付けなくてはいけないのは、すでに住居内のリフォームなどで配管も取り換え済みの住戸に対する対応です。専有部の配管取り換え費用を返金するなど詳細を決めておく必要があります。
管理規約に「専有部の配管の管理も管理組合が行える」と明記されていなかったり、各自の管理範囲と書かれている場合は、管理規約を書き換える必要があります。規約を改定する場合は、以下のような規約改定案(*2)を参考にすることをおすすめします。
*2 平成29年2月の国交省による報告書「マンション専有部分等の配管類更新による再生事例調査報告書」のⅢの7の事例(横浜市内超大型集合住宅団地) 第19条 共用部分と構造上一体となった専有部分、共用部分及び隣接・階下の各住戸に著しい影響の起こる可能性のある場合の設備配管、電気配線、通信設備等については専有部分であっても、管理組合により修繕をおこなうことができる。
管理規約の改定にあたっては、以下の4点に留意しましょう(平成29年2月の国交省による報告書「マンション専有部分等の配管類更新による再生事例調査報告書より)
①専有部分の配管類を管理組合が一斉に更新できることを明記
②工事費の捻出に際して、修繕積立金の取り崩しを共用部分だけでなく、総会の決議を経て専有部分も可能とする
③正当な理由なく住戸への立ち入り、工事を拒否できないこと
④逆に正当な理由として「すでに個別に更新した場合の対応」を明示
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