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15年程度の築浅マンションでも専有部排水管の水漏れリスクが!

2019年7月27日
この記事のカテゴリー : 排水管の保全

著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大

漏水につながる主な要因は汚物・錆び・尿石・水圧・破損・施工不良

水漏れは築年数が浅いから気にしなくて良いと言うものではありません。実際には15年程度の築浅のマンションでも専有部の排水管から水漏れが起きています。専有部排水管の種類ごとに、水漏れ事故の主なものをリストにして説明を加えました。リフォームなどにより配管を交換していなければ、現在お住まいのマンションの排水管の種類は竣工図に記載されていますのでご確認ください。

           排水管の種類別の水漏れ要因

漏水を引き起こす要因
排水管の種類汚物錆び尿石水圧破損施工不良
白ガス管(亜鉛メッキ鋼管)
(築40年以上に多い)
塩ビライニング鋼管
(築40年以下に多い)
 鋳鉄管
(汚水管での利用に多い)
塩ビ管
(築40年以下に多い)

          水漏れ要因についての補足説明

要因説明
汚物油、洗剤、食材の廃棄物等で配管がつまり水があふれてくる
錆び 配管内の鉄が錆びて肉厚が薄くなり管を貫通したところから水が漏れてくる。もしくは錆コブにより配管の口径が狭くなることで配管がつまり水があふれてくる
尿石尿の成分が石化して配管の口径が狭くなることで配管がつまり水があふれてくる
水圧錆び等で肉厚が薄くなっている部分に、高圧洗浄実施時に強い水圧がかかり管が破れ水が漏れてくる。もしくは、汚物・錆び・尿石等により配管の口径が狭くなることで配管がつまり水があふれてくる
破損 高圧洗浄時に用いるホースが排水管の曲がった部分(エルボー部)と擦れることで、エルボー部が削られ配管が破損し水が漏れてくる
施工不良継手の接着不良等、さまざまなケースがある。特に多いのは排水管の勾配不足・逆勾配、もしくは勾配が急すぎることで汚物が排水とともに流されずに堆積し、配管の口径が狭くなることで水があふれてくる

以上のような水漏れ要因に、「排水管の勾配が十分でない状況で配管の錆びコブが大きくなり、そこに汚物がせき止められて水があふれてくる」といった複数の要因が重って水漏れは起こります。

錆びが水漏れの原因となることが多い給水管に関しては、築浅のマンションでは錆びにくい配管を使用しているので、水漏れ事故のリスクは少ないと言えます。ところが、排水管に関しては錆びだけが要因ではないので、水漏れは築年数に関係なく発生しています。

たとえば、築年数が10年程度のタワーマンションでも排水管の水漏れは起きています。日中の住民の不在により、高圧洗浄を何年も実施できていない住戸で、排水管がつまって水が逆流してしまったなど、水漏れの事故が増えています。

 管理組合ではすべての世帯の高圧洗浄を強制することはできませんから、築年数の浅いうちから、延命工法などで配管の保全を行い、配管の老朽化を抑える対策を進めていくことをおすすめします。

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コラム:塩ビの排水管はステンレスワイヤーで削られるので要注意

排水管の高圧洗浄のホースの種類を確認してください

  • エルボー部がワイヤーにより削られてそこから水漏れする
  • 多くの分譲マンションで毎年実施される排水管の高圧洗浄。排水管の保全には必要なことですが、高圧洗浄をしたために排水管から水漏れが起こったケースが、築15年程度のマンションでも起きています。

     

    高圧洗浄をするときには、専用のホースをキッチンやお風呂の排水口から差し込んでいきますが、上図のように配管の竪管と床下の横管が交わるエルボー部分にホースが当たって、エルボー部分を強く擦る可能性があります。もし、排水管が塩ビ管で、高圧洗浄のホースがステンレスワイヤレスメッシュだった場合には、柔らかい素材の塩ビ管は、硬い素材のステンレスワイヤレスメッシュで削られやすく、高圧洗浄のたびに何度も削られると、その箇所が破損して水漏れ事故が起きるということがあります。

最近では、ステンレスにゴム被膜をしたワイヤーを使うことが多いので削られるリスクは減ってきましたが、念のため高圧洗浄を行う際には洗浄業者にステンレスワイヤーメッシュのホースを使っていないか確認することをおすすめします。

また、同じマンションで、この種の水漏れ事故が重なると「洗浄作業実施にあたり賠償責任保険を利用できなくなった」などの理由で、洗浄業者から実施を拒否されるようになります。そうなると、排水管がつまることで水が排水口からあふれ出す水漏れ事故が、上階で引き起こされる可能性も高まります。早めにゴム被膜のワイヤーを使用している業者に切り替えることをお勧めします。

配管がつまらないように、水漏れが起きないように保全する方法は、高圧洗浄だけではなく、さまざまな延命工法にもその効果がみられます。延命装置などには、排水管内のスケールや酸化物の固着をある程度、防ぐ効果も認められています。高圧洗浄の頻度をどの程度行うかは、管理組合の方針によりますが、延命装置を設置した多くのマンションでは、配管が保全されることで、高圧洗浄の頻度を少なくすることができています。

これにより高圧洗浄のワイヤーによるエルボー部の破損のリスクもあわせて低減することが期待できます。共用部・専有部の給水管・排水管の両方に保全効果を発揮するエルセはこちらをご覧ください。

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