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給排水管は何故サビるのか 黒錆で保全はできるのか

2020年2月25日
この記事のカテゴリー : 延命工法

著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大

鉄は何故サビる?

鉄は酸化物である鉄鉱石を溶鉱炉等で、莫大なエネルギーを使って、鉄に精製しています。
自然界では、図1のように高いエネルギーから、より安定している低いエネルギーになろうとするため、特別、何もせず、放っておけばサビて酸化物になろうとします。

  • 図1

【関連ブログ】
マンションの給排水管の代表的な延命工法の原理と留意点

動画

 

鉄と水の境界での電気化学反応式の模式図

それでは、マンションの給水管である鉄管や鋼管の中は、どのような反応が起こるでしょうか。
給水管内の水道水には、水分子だけでなく通常は酸素も含まれており、鉄(鋼管)は水との境界線で、図2のような化学反応が起こることになります。
この「鉄(鋼管)」が「鉄イオン」と「電子」に分離してしまう現象が「鉄の腐食」です。

鉄と水との境界での電気化学反応式
図2

鉄鋼の腐食過程と腐食生成物

図5は鉄鋼が給水管や排水管内で腐食して腐食物が生成されるプロセスを表しています。
鉄が鉄イオンになり、そこから水酸化第一鉄→主に赤水といわれる水酸化第二鉄→オキシ水酸化鉄と変遷していきます。
オキシ水酸化鉄は、還元されることで黒錆になりますが、空気に触れると容易に赤錆に戻ります。

鉄鋼の腐食過程と腐食生成物
図5

参考文献:「錆・腐食・防食のすべてがわかる辞典」 監修:藤井哲雄 出版社:ナツメ社

配管を黒錆にて保全することに対する考察

黒錆に関する特徴を以下に記載します。
酸素濃度の低い錆コブと鋼管の間(黄色のマル周辺)に黒錆が自然現象としてできやすい
断面観察では赤錆の中に層状に黒錆が存在する
自然条件下で、ほぼ10年で3割程度の黒錆を含んでいる
空気に触れると容易に赤錆になる
微視的には欠陥が多く完全な被膜ではない
南部鉄器も濡れたままだと錆びやすく水をふき取る手入れが必要

上記を踏まえた、「黒錆化による配管の保全工法」を検討する際の留意点を記載します。

黒錆化したのは自然現象でなく保全工法による結果であることの検証方法を事前に合意しておく
赤錆が黒錆化すると体積が収縮し閉塞改善するといわれているが、収縮により黒錆が剥離してしまうリスクがあることを理解しておく
層状でなく均一的に黒錆が生成されるのかを確認
なるべく多くの実績(均一に黒錆が継続して存在していること)を実際に見せてもらう

黒錆の特徴と黒錆化による配管の保全工法を検討する際の留意点
図4

参考文献:平成30年10月「管更生技術調査報告書」 特定非営利活動法人日本管更生工業会

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    動画13分45秒

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