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排水管の取替え 工事範囲で費用に差が出ます 管理組合が自分たちで判断する方法

2026年8月21日
この記事のカテゴリー : 配管に関する知識

排水管の更新工事について、管理会社から見積りが出てきた。あるいは、そろそろ見積りを取ろうとしている。

そういう管理組合さんも多いと思います。

ただ、あの見積りの明細。正直なところ、見てもよくわからない、というのが本音ではないでしょうか。

配管の型番、継手の種類、部材の一つひとつ。

ずらりと並んだ項目を見せられても、どれがどこの工事で、どのくらいが適正価格なのか、判断のしようがない。

専門の部材の話をされて、すぐにわかる人のほうが、めずらしいので無理もありません。

かといって、業者や管理会社に「これはどこの工事ですか?本当に必要な工事ですか?」と一つずつ問い詰めるのも、なかなかできることではありません。

結局、よくわからないまま、「じゃあ、お願いします」と言ってしまう。でも、大丈夫です。明細を、全部わかろうとする必要はありません。

まず押さえておきたいのは、どこからどこまでを工事するのか。その「範囲」です。

排水管の更新というのは、この範囲の取り方しだいで、金額が大きく変わります。

同じマンションの、同じ工事でも、範囲を狭く取るか、広く取るかで、世帯あたりの負担が、数十万円も動くことがあります。

そして、この範囲を決めるのは、本来、業者ではなく管理組合です。

ところが、その判断のもとになる材料を、管理組合はたいてい持っていないので、業者が決めた範囲の見積りを、そのまま飲むしかなくなる。ここが問題点です。

そこで今日は、その判断材料を、ご自身のマンションの図面から読み取る方法をお話しします。

とくに、範囲の判断が一番大きく見積りに効いてくる、「スラブ下配管」というケースを取り上げます。

動画

 

スラブ下、と言われても、まだピンと来ない方も多いのでは、と思います。その見分け方も、この後、順番にお話しします。

ご自身のマンションがどちらなのか、読み進めれば、ちゃんとわかります。

ご自身のマンションがこれに当てはまらない場合でも、きっとお役に立つ内容ですので、最後までご覧ください。

なお、3年ほど前に、平面図から排水管の立管の本数を数える方法をお話ししました。

今日はその続きにあたる話も出てきますが、平面図における立管の数え方そのものは、今回は扱いません。

以前の投稿記事のリンクを貼っておきますので、あわせてご覧ください。

1.まずは、縦系統図を開く

図面を読み解く上で使うのは、縦系統図という図面です。

マンションの竣工図は、管理人室や集会所、あるいは管理会社の事務所などに保管されています。

保管場所がわからない場合は管理会社に出してもらってください。紙の図面は、放っておくと劣化しますし、いつのまにか行方不明になりがちです。

この機会に、PDFにしてデータで残しておくことを、強くお勧めします。

分厚い図面の束から、目当ての一枚をどう探すか。まずは、図面の最初のほうにある「図面目次」を見てください。

竣工図には、どんな図面が収められているか、その一覧が付いています。

この中から「配管系統図」や「排水系統図」といった項目を探せば、目当ての図面が見つかります。

目次が見当たらない、あるいは名前だけではピンとこない、というときは、図面の右下を見てください。

以前の投稿記事でもお話ししましたが、すべての図面の右下には、その図面の名前と番号が書かれた欄があります。

給排水の図面は、たいてい、Plumbing(配管)のP、またはMechanical equipment(機械設備)のMで始まる番号がついています。

そのなかから、「系統図」と書かれた一枚を探してください。

「系統図」は縦系統図ともいわれますが、建物を横から、すーっと透かして見たような図です。

縦方向が階、横方向に住戸のタイプが並んでいます。どのタイプに、どんな管が、何本通っているか。

そして、その管が各階でどうつながっているか。今日読み取りたいことが、この一枚に、ぜんぶ詰まっています。

2.排水管を見分けて、本数を数える

図面の中では、給水管・給湯管・排水管・ガス管が、線の描き分けで表されています。

実線か、破線か、点線か。まずは、この線の種類で見分けるのが基本です。線の種類によってどの配管を指すのかは、凡例に書いてあります。

凡例は、系統図と同じページに載っていることもあれば、給排水設備図の最初のほうにある、特記仕様書や記号表にまとまって載っていることもあります。

まずは、この凡例を探して、照らし合わせる。ここが出発点です。ちなみに、この凡例には、配管の材質が書かれていることもあります。

これは後で大事になりますので、頭の片隅に置いておいてください。

ただ、古い図面だと、線の種類がはっきり読み取れないこともあります。そんなときは、管の行き着く先を見てください。

給水や給湯、ガスといった管は、系統図の中で、その先にある設備や機器までの経路が描かれています。

給水管なら、屋上の高架水槽や、地下・1階の受水槽、そこからのポンプ、そして各戸の水道メーター。ガス管なら、ガスメーターに繋がっています。

こうした機器から縦線をたどっていけば、それが給水管やガス管だとわかります。あとは、それらを一つずつ消していく。

最後に残った縦線が、排水管です。この消去法なら、線がかすれていても見分けられます。

排水管が見分けられたら、あとは数えるだけです。各系統の排水管の縦線が、何本あるか数えてみてください。

線に沿って「80.100.100」のように、点で区切った数字が書かれていることがあります。

これは管の太さを表していて、そこに3本通っていますよ、という意味です。本数を読み取るいいヒントになります。

3.あなたのマンションは、スラブ上か、スラブ下か

各住戸から立管へ伸びる、横向きの排水管。これを横枝管と言います。

この横枝管が、自分の部屋の下のコンクリートの構造体の上を通っているのか、下を通っているのかがとても重要となります。

ちなみに、このコンクリートの構造体のことを、スラブと呼びます。

スラブの上を通っていれば、スラブ上配管。一方、スラブを突き抜けて、下の階の天井裏を通っていれば、スラブ下配管となります。

スラブ上配管かスラブ下配管かも、縦系統図から読み取れます。見るべきなのは、横枝管が、立管のどの高さでつながっているか。

その階の床の線、この例だと赤線で表していますが、赤線部分より下でつながっていれば、スラブ下配管です。

平面図ではわかりにくい上下の関係が、横から見た図なら、ちゃんと見えます。

ご自身のマンションは、どちらだったでしょうか。

スラブ下配管だった方。本題はここからです。範囲をどうするかという判断が、まさに管理組合の方たちに、ずしりとのしかかってきます。

なお、スラブ上配管の場合は、横枝管は専有部で各区分所有者管轄となり、基本的には管理組合の管轄にはなりません。

ただ、専有部の給水・給湯管を管理組合主導で一斉更新する際に、横枝の排水管も一斉に取替えようとすることがあり、その場合、「その工事、本当に今やるべきか」という問いは、すべての管理組合に共通します。

この件については、最後にお話ししますので、スラブ上配管の方も続けてご覧ください。

4.スラブ下配管には、三つの範囲がある

では、スラブ下配管の話に入っていきます。

あなたのマンションの排水管がスラブ下配管だった場合、配管取替え工事は広範囲になりえます。

なぜスラブ下配管だと、工事範囲が広がりうるのか。

立管は共用部分、横枝管は専有部分。そう定めている規約が多いのですが、スラブ下の横枝管は、下の階の天井裏にあるものですから、共用部分とみなしているマンションが、ほとんどだからです。

つまり、管理組合が引き受けなければならない範囲が、立管だけでは済まなくなる。

ここで、「どこまでやるか」という判断が重要になってくるわけです。

取るべき範囲は、大きく三つに分かれます。

一つ目は、立管だけを更新する。これが一番狭い範囲です。

二つ目は、立管に加えて、スラブ下の横枝管まで更新する。下の階の天井裏を通っている横枝管を、まるごと新しくします。

三つ目は、さらにその先、床のコンクリートを貫通している部分まで踏み込む。これが、一番広い範囲です。

この三つで、金額はどのくらい変わるのか。

あくまで一例ですが、世帯あたりでお話ししますと、立管が世帯あたり2~3本あるとすると、立管だけなら、約70万円。横枝管まで含めると、約90万円。貫通部まで含めると、約130万円。範囲の取り方だけで、これだけの差が出ます。

さて、この三つ目の「貫通部まで」について、もう少し詳しくお話しさせてください。

というのも、ここは多くの場合、「やらない」という判断になるからです。

床のコンクリートは、実は、二層になっていることが多いです。

下が、建物を支える構造体でいわゆるスラブ。その上に、後から打った層があり、この上の層は、シンダーコンクリートであったりステコンと呼ばれていて、この中の排水管は専有部分の扱いになります。

専有と共用の境目は、コンクリートの表面ではなく、この中にあるということです。

つまり、共用部を更新しようとしても、手前にある専有部分のシンダーコンクリートを、壊して掘り進めないと、そこまでたどり着けません。

この斫り作業は、費用も手間も、ばかになりません。お風呂の排水管の場合であれば、お風呂の床の防水処理もやり直しになります。

しかも、そのスラブ貫通部の配管は、曲がりや継手のない、まっすぐな直管であることがほとんどです。

配管というのは、曲がり角やつなぎ目から傷んでいくので、まっすぐなだけのこの部分は、もともと傷みにくく、漏水のリスクも低いです。

傷みにくい場所にもかかわらず、専有部分のシンダーコンクリートをわざわざ壊して配管を替えるという大きなコストをかけては、割に合いません。

ですから、そこまでは手を付けず、手前までを更新の対象とする管理組合が多いようです。

どちらかというと、コンクリート内の直管部の配管からの漏水よりも、在来のお風呂の防水層が切れて漏水することをどう対策するかということに頭を悩ましている組合さんのほうが多いと言えます。

5.そして、決めるのは管理組合です

三つの範囲と、その金額を、お話ししてきました。

立管と横枝管は、できるだけ同時に更新するのが基本です。

壁や床を開ける内装の復旧を、一度で済ませられるので、分けてやるよりも、トータルの費用は安くなるからです。

ただ、現実には、そう単純にいかないこともあります。たとえば、立管の継手から漏水が頻発していて、一刻も早く止めなければならない。

でも、横枝管まで一度にやるには、資金が足りない。

そういうときは、割高になるのは承知のうえで、まず立管だけ手当てして、資金を貯めてから横枝管に取りかかる。

そうした判断も、ありえます。

つまり、どこまでを一度にやるか。

その答えは、マンションごとの緊急性と、資金の事情によって変わってきます。だからこそ、これは、他人任せにできない判断です。

管理会社や業者にすべてを委ねるのではなく、管理組合自身が自分たちのマンションが今どういう状態かを正確に把握することです。

どのくらい老朽化が進んでいて、配管などの取替えはどこまで済んでいて、どれだけ修繕積立金があるのか。それを踏まえて、管理組合が決める。

そして、範囲を自分たちで決められれば、もう一つ、いいことがあります。

業者に、はっきりと範囲を伝えられる。そうしてはじめて、複数の業者が、同じ範囲で見積りを出してくれて、金額の比較ができるようになります。

そして、もう一つ。ここからは、スラブ上だった方にも、ぜひ聞いていただきたい話です。

範囲だけではありません。そもそも、「その工事は、今やるべきなのか」。これも、管理組合が考えるべきことです。

さきほど、図面上の凡例には配管の材質も載っている、とお伝えしました。

もし、共用部の配管が、塩ビなどの樹脂でできているなら、金属管のような、腐食による漏水は起きにくいです。

だとしたら、慌てて更新する理由は、薄いかもしれません。逆に、金属管なら、腐食は時間とともに、確実に進みます。これは、放置できません。

つまり、範囲だけでなく、「いつやるか」という時期についても、図面を見れば、手がかりがそこにある、ということです。

管理会社や業者が持ってきた工事を、範囲も、時期も、鵜呑みにしてしまうのではなく「本当に今、この範囲の工事が必要で、しかも適切な工事なのか」と、一度立ち止まって、問うてみる。

その問いを、自分たちで持てること。これこそが、管理組合に求められる、自衛だと思います。

もちろん、「わからないから、設計コンサルタントに丸ごとお任せする」という選択も、あるにはあります。

ですが、当社は一貫して、こうお伝えしてきました。「排水管の更新に関しては、管理組合が主導すれば、設計コンサルタントに頼らなくても、十分に進められます」と。

これを丸投げしてしまうと、本来は必要のない範囲まで工事に含まれていたり、余計な費用が乗っていたり。そういうことが、現実に起こっているからです。

実際に、管理組合主導でも排水管の更新を進めてこられたマンションを、私たちは、いくつも見てきています。

とはいえ、図面を読むのは、はじめての方にはやっぱり難しいとも言えます。

ですから、「図面を見てもよくわからない」「範囲や時期の判断に、自信が持てない」という理事会の方は、どうぞ、お気軽に配管保全センターにご相談ください。

集会所などでの勉強会やオンラインでの勉強会も、工事を検討されている管理組合さんであれば無料で行っております。どうぞお問い合せください。

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