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【実録】排水管工事で2.5億円の水増し請求!? 相見積もりを拒否する管理会社の手口とは?

2025年10月9日
この記事のカテゴリー : 配管に関する知識

今回は、実際に起こった非常に深刻な事例についてお話しします。

とても深刻ではあるのですが、管理組合の運営に無関心なマンションでは、どこでも起こりうる事例でもあります。

世帯数としては、約500戸のマンションで、排水管の立管の取替え工事として5億円、1世帯あたり100万円の見積もりが、管理組合の総会に議案書として理事会から提示されました。

金額的に高すぎないかと、どうしても納得できずにいた理事の方から、配管保全センターに問い合わせがあり、セカンドオピニオンとしてお見積りをご提示したところ、結果として、なんと半額の2億5千万円で工事ができることが判明しました。

今回の投稿記事では、どうしてこのような事態が起きたのか、そしてあなたのマンションでも同じことが起こらないために何をすべきかを解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

事例の概要

まず、今回の事例を時系列で見ていきましょう。

今年の春に、約500世帯のマンションの理事であるAさんから問い合わせがありました。

伺ってみると、議案書に詳細な工事の理由などほぼ説明のないまま、排水管取替え工事費用として約5億円の見積もりが、マンションの総会で上程されてしまったとのことでした。

1世帯あたりに換算すると、100万円という大きな負担になります。

驚いたことに、この工事についての事前説明会は一切行われていませんでした。

なぜその業者を選んだのか、なぜその金額なのか、なぜ今やる必要があるのか、そういった説明が議案書に、ほとんど書かれていないのです。

問い合わせてきた理事のAさんは、理事会でがんばって抵抗していたのですが、管理会社の言い分としては、「排水管立管からの漏水が多発していて一刻を争う状況なので、相見積もりを取る時間がない。実績のある会社の見積もりだけで進めたい」ということでした。

「相見積をとるべきだ」と、抵抗していた理事はAさんひとりだけで、理事長や他の理事たちは、「大手の管理会社や、有名な設計コンサルティング会社がいうことに、間違いがあるはずがない。見積金額も高いわけがない」ということで、いくら、相見積を取るべきだとAさんが言っても、全くかけあってもらえず、総会の議案として上程されるに至ったとのことでした。

本当に、排水管の立管から漏水が多発しているのか、理事のAさんが過去の記録をなんとかがんばって調べたところ、実は立管からの漏水は一度も起きていないことがわかりました。

漏水の原因は、屋内の排水管の立管ではなく、屋外の排水管からの逆流や、住民の方の洗濯機の使い方による不注意によるものといった原因ばかりでした。

そのことを、Aさんが理事会で主張しても、驚くべきことに、やはり相見積もりはとられず、結局は、総会に上程されるに至ったということで、困り果てたAさんが、配管保全センターに相談するに至ったというのが経緯です。

相見積もりで判明した驚きの事実

  配管保全センターとしては、「既に総会で議案書に上程されているのであれば、今から相見積もりをとっても、手遅れではないでしょうか」とお伝えしました。

ただ、お話をお聞きする中で、あまりに早急な進め方に疑問を感じましたし、いくら大掛かりな排水管工事になるとはいえ、そこまで高額にはならないのではないかと思いました。

今から相見積もりを取ってみて、それがかなり安い金額であった場合、総会でその事実を提示して、5億円の見積もりを否決できるかもしれない可能性もゼロではありません。

そこで、やるだけやってみましょうということになり、現地調査も入れて3週間以内に相見積もりをお出しすることになったのです。

工事内容を具体的に説明しますと、5階建てのマンションで、汚水管と雑排水管、それぞれの立管を取り替える工事です。

立管はトイレと洗面所では露出配管となっており、トイレと洗面所の天井と床を開口して新しい排水管に取替えます。

また浴室の排水管は天井裏を開けて、スラブ下の排水管を樹脂管の耐火VP管に取り替えます。

地下ピット内では、既存の横引き管の塩ビ管と接続するという内容です。

以上のような工事内容に関して、配管保全センターがお出しした相見積もりは、驚くべきことに同じ工事内容で約2億5千万円。1世帯あたり50万円の費用で済むことがわかりました。

しかも10年間の瑕疵保険付きで、万が一工事業者が倒産しても、その後の補填に関しては、保険でカバーできる保証もつきました。

また工期についても、かなりの差がありました。

管理会社が提案してきた業者の場合、各世帯で水が使えない断水期間が1週間もあるという工事計画でした。

ところが、私たちが紹介した業者は、たった1日だけ水が使えず断水になるだけで工事ができることがわかりました。

つまり、半額で、しかも住民の負担もかなり少ない工事プランが実現できるということがわかったのです。

そもそも、5億円が2.5億円というのは「安かろう悪かろうなのでは?」と思われるかもしれませんが、何度もお話しておりますが、管理会社や設計コンサルと結託した施工会社の見積もりは、そもそも相場が100のところを150といった見積もり額となることが多いといえます。

それに、管理会社、設計コンサル、施工管理会社等の手数料がのると、相場が100の見積もりが平気で200になってしまうということになりかねないのです。

なぜこんなことが起きるのか

なぜこのような事態が起きるのでしょうか。

最大の原因は、何と言っても、住民の管理組合の運営に関する無関心といえるでしょう。

修繕積立金の値上げにはうるさくても、いったん支払ってしまった後は、積立金がどう使われようとほどんど気にしない、不思議なことにそのように、管理運営に無関心な住民の方が多いというのが、今の分譲マンションの現状といえます。

「大手の管理会社や、有名な設計コンサル会社に任せておけば大丈夫」、「大切な積立金がボッタクられてしまうことなどありえない」と、信頼しきっているので、今回のようなことが起こるのも珍しくありません。

また、大規模なマンションになると、管理会社と理事長との癒着も起こりやすい傾向にあります。

今回の工事費用は5億円ですが、仮に1%をポケットマネーとしてもらったとしても500万円という大金になります。

3%だと1500万円で、理事長がまわりの親しい理事を買収するには十分な金額です。

「まさか、こんなことが起るわけはない」、「ごく一部のマンションでの出来事でしょ?」と思われるかもしれませんが、配管保全センターには、ひっきりなしに、こういった相談が来ていますので、対岸の火事という認識は捨てることをお勧めします。

あなたのマンションを守るために

では、このような修繕積立金の無駄遣いを回避し、あなたのマンションを守るために、何をすべきでしょうか。

まず、繰り返しますが、これは対岸の火事ではないということを認識してください。

あなたのマンションでも明日起こるかもしれない問題です。

具体的な対策としては、何度も配管保全チャンネルでもお伝えしておりますが、以下のようなことをお勧めします。

1つ目、おかしいと思ったら工事契約の締結を阻止すること

今回のケースのように、説明が不十分だったり、相見積もりがなかったり、疑問を感じたら、とにかく仲間を集めて総会で反対の声を上げてください。

一度契約してしまうと、白紙に戻すのはかなり難しくなります。そもそも相見積りを取っていないということがかなりおかしい事態といえます。

2つ目、問題意識を持った仲間を増やすこと

理事長と他の理事がポケットマネーを受け取って結託してしまっていると、一人でいくら抵抗をしても、逆に変人扱いされて村八分となり、マンションに住みづらくなってしまうこともあります。

とはいえ、このような高額な工事は、今回の1回だけではなく、今後も行われる可能性が高いといえます。

今回の工事では、上程された内容が可決されてしまうかもしれませんが、先のことも考えて、時間がかかっても問題意識を持った仲間を増やして、健全な管理組合運営ができるようにすることがたいせつです。

3つ目、管理組合は無関心をやめること

「よくわからないから管理会社に任せる」という姿勢が、こうした問題を生む土壌になります。

限定された方だけでなく、マンション全体で、住民の皆さんが管理組合運営に取り組んでいく文化を作ることが大切です。

また、長らく続いたデフレ時代は終わりを告げ、インフレによりここ3年間でも工事費用は年間10%程度ずつ値上がりしています。

工事業界の人手不足が大きな原因ですが、この人手不足の傾向は加速傾向にあり、当面、値上がりが収まるとは思えません。

このインフレ時代にあって、自分たちでマンションの価値を存続させ、住み心地の良い状態を保つためには、住民の皆さんが問題意識をもって、「無駄な積立金の使い方をしない」と強く意識することが必要です。

4つ目、セカンドオピニオンの活用

「おかしいな」と感じたら、他の業者に見積もりの適正さを確認してもらってください。

私たち配管保全センターのように、中立的な立場からアドバイスできる専門家に相談することで、適正な価格や工事内容がわかります。

配管保全センターでは、数多くの過去の実績データベースを活用した価格比較も行えるので同規模のマンションで同じような工事をした場合の相場を知ることができます。

5つ目、業者選定は、自分たちで行う

管理会社や設計コンサルに、業者選定の決定権を持たせてしまうと、せっかくセカンドオピニオンで情報を集めても、最終的には無視されてしまう可能性があります。

それを避けるには、他人任せにせずに組合員だけで業者選定すべきです。

ただ、知識がない組合員だけだと品質の悪い業者を選定してしまう可能性もあるので、中立的な業者に施工業者の選定作業だけ依頼するというのも重要です。

今回お話しした事例は、残念ながら多くのマンションで現在進行形で起きていることです。

総会の議案書として上程されたタイミングで、議案を阻止することは難しいと言えますが、セカンドオピニオンで明らかに見積り額がおかしいということが示せる場合は、阻止できる可能性はゼロではありません。

また、無関心状態を放置していると何度も同じような不当な見積もりの可決を許してしまう可能性が高いと思われるので、このような事例があることを、多くの方に知っていただくことで、同じような被害を防ぐことができると思っております。

大切なのは、日頃から管理組合の活動に関心を持つこと、疑問を感じたら声を上げること、そして相見積もりやセカンドオピニオンを活用することです。

工事をどのように進めたらいいのか、出てきた見積もりの妥当性がわからない等のご相談がありましたら、お気軽に配管保全センターにお問合せください。

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