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受水槽は毎年清掃するのに。。給水管内は放置でいいの? 不衛生なバイオフィルムを除去する対策は?

2025年7月17日
この記事のカテゴリー : 給水・給湯管の保全

みなさんのマンションに、受水槽はありますでしょうか。地上や地下ピット、あるいは屋上に大きな受水槽をお持ちのところも多いと思います。

受水槽は10トンの大きさを超える場合は、毎年、清掃することが義務付けられています。

この清掃の大きな目的の一つは、受水槽の内壁に付着するバイオフィルムを除去することです。

「受水槽を清掃しているから、うちのマンションの水は衛生的だ」と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

しかし、本当にそうでしょうか?

実は、受水槽から各戸に水を運ぶ給水管や給湯管の中は、受水槽と同様、いやそれ以上に不衛生な状態になっている可能性が高いと言えます。

受水槽は年に一度清掃するのに、給水管や給湯管は、数十年にわたって放置されているケースがほとんどといえるからです。

今回のテーマは、まさにその「給水管・給湯管内のバイオフィルム」です。

給水管・給湯管内を不衛生な状態のまま放置することの危険性、そして、給水管・給湯管内のバイオフィルムの具体的な対策法について、詳しく解説していきます。

分譲マンションの理事会の方々、そして一棟賃貸マンションオーナーの皆様、ぜひ最後までご覧いただき、マンションの水の安全性について一緒に考えていきましょう。

バイオフィルムとは? なぜ配管内に発生するのか

まず、バイオフィルムとは一体何なのか、基本的なことからご説明します。

バイオフィルムとは、水中の微生物が配管内の壁に付着して、そこで増殖して形成される膜状の集合体です。

簡単に言えば、水アカやヌメリの原因となるものです。

例えば、お風呂場の排水口や、水槽の内側にヌメヌメした膜ができるのをご覧になったことがあるかと思います。あれがバイオフィルムです。

このバイオフィルムは、微生物が分泌する多糖類やタンパク質などのネバネバした物質によって形成されます。

この分泌物が微生物を外部から守り、増殖しやすい環境を作り出します。

受水槽が毎年清掃されるのは、バイオフィルムは一度除去しても、常に生成され続けるためです。

受水槽と同じように、給水管や給湯管内でも同様に、水が流されている限り、バイオフィルムが生成され続けます。

放置されたバイオフィルムの脅威

では、このバイオフィルムが配管内に生成され続けると、どのような問題が起こるのでしょうか?

最も懸念されるのは、不衛生な水が供給されることです。

バイオフィルムの中には、人の健康に悪影響を及ぼす可能性のある病原菌が含まれていることがあります。

これらの菌が水と一緒に蛇口から出てくるとなると、健康へのリスクは計り知れません。

特に、免疫力の低い高齢の方やお子さんがいるご家庭では、注意が必要です。

見た目では透明な水でも、配管の内部ではバイオフィルムが繁殖し、細菌が潜んでいる可能性があります。

ご参考までに築20年を越した給水管内の状況をご覧ください。

バイオフィルムが生成されて、茶褐色となり、配管内に固くこびりついてしまっている様子がよくわかります。

バイオフィルムへの対策法

このようなバイオフィルムによる不衛生な状態と配管の劣化を防ぐために、どのような対策が考えられるのでしょうか?

大きく分けて二つのアプローチがあります。

一つは既存のバイオフィルムを除去する「配管洗浄」と、もう一つはバイオフィルムの生成を抑制したり、付着したバイオフィルムを剥離したりする「配管の延命装置の設置」です。

1. 配管内部の洗浄

現在、配管内部を洗浄する方法としては、いくつかの方法があります。

• オゾン洗浄

• クエン酸洗浄

• WASH洗浄

• 炭酸水洗浄

これらの洗浄方法は、基本的には配管内に空気を送り込んで、空気の泡がぶつかる衝撃によって、配管内を洗浄します。

工法によっては、衝撃が強すぎてかえって配管を傷めてしまうといったリスクがあります。

費用的には世帯あたり3~7万円程度となっていますが、ほとんどの場合は、5~7万円程度になると思われます。

洗浄後は、時間の経過と共に再びバイオフィルムが生成されるので、配管内を衛生的に保ちたいのであれば定期的な洗浄が必要となります。

また、洗浄では給水管のサビの抑制効果や、排水管の保全効果は望めません。

2. 配管延命装置による対策

配管内を衛生的に保ち、配管の劣化を防ぐための抜本的な対策として注目されているのが、配管の延命装置を設置することです。

延命装置は、配管内を通る水をバイオフィルムが生成されにくい水に改質したり、すでに固着したバイオフィルムを徐々に剥離させることを目的としています。

配管の延命装置はさまざまありますが、配管保全センターでは、セラミックス方式の延命装置を推奨しています。

セラミックス方式の延命装置の特長は、延命装置内でセラミックスと水を摩擦させることで、配管内を通る水が改質され、配管内にバイオフィルムが生成されにくくなることです。

なお、健康意識の高い方の中には、配管を保全する目的だけでなく、この改質された水を飲料用として利用する目的で、セラミックスの延命装置を設置する方も多いです。

ただ、セラミックス系の延命装置を選択する際には、注意すべき点があります。装置は大きく分けて2つのタイプがあります。

延命装置の選び方:セラミックスの特性とタイプを見極める

タイプ①:セラミックスが装置内で流動しないタイプ

このタイプは、セラミックスが装置内で流動しない構造になっています。

設置当初は、素晴らしい効果が見られることが多いです。

ただ、一般的なセラミックスは多孔質構造で、表面に無数の小さな孔があいています。

その小さな孔に不純物が入り込みやすい特性があります。

そのため、時間とともにセラミックスの表面に不純物や細菌が付着してバイオフィルムが生成され、セラミックスによる効果が低下してしまう可能性があります。

中には、わずか1年でセラミックスの表面が不純物やバイオフィルムに覆われて真っ黒になってしまう場合もあります。

もし、このようにセラミックスが流動しない「固定型」の延命装置を検討されているのであれば、その装置により、なぜバイオフィルムが形成されにくくなると言われるのか、具体的なメカニズムや実証データをしっかり確認することをお勧めします。

タイプ②:セラミックスが配管内で流動撹拌されるタイプ

一方、このタイプは、セラミックスが丸い球体になっており、配管内を通る水流によって常に流動撹拌される構造になっています。

この流動撹拌作用によって、セラミックスの表面に不純物が留まることなく、セラミックスは常にきれいな状態に維持されます。

そのため、長期にわたって効果が持続しやすいという特長があります。

装置内でセラミックスボールがどのように流動撹拌されるかの様子は、こちらの動画をご覧ください。

ただし、セラミックスボール同士が常に衝突するため、セラミックス自体に十分な硬さがないと、摩耗して効果が低下したり、破片が異物として水中に混ざってしまうリスクも考えられます。

この点で特筆すべきは、セラミックス流動型の「エミール」や「エルセ」といった製品です。これらの製品のセラミックスは、ナイフで表面を傷つけようとしても傷つけられないほどの高い硬度を持っています。

実際に、国土交通省の建物に設置されてから24年が経過した装置内のセラミックスボールを検証した結果、摩耗していないことが実証されています。

これは、長期にわたる効果の持続性を裏付ける非常に説得力のあるデータと言えます。

他の複数のマンションでも、設置20年後に延命装置の蓋を開けて、セラミックスボールが摩耗していないかを検証した結果、セラミックスボールの総重量は変わらなかったことから、摩耗していないことが確認されています。

数十年も稼働すると、ごくごく微量の摩耗はあるでしょうが、日本水道協会が定めている飲料水としての厳しい基準の数百万分の1のレベルのごく微量が仮に飲料水に混じったとしても、人体への影響は、バイオフィルムによる不衛生さと比べると比較にならない安全性の高いものだと考えます。

セラミックスの破片の結晶性シリカは、粉塵として呼吸によって大量に吸入された場合、人体に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、ごく微量が水中に溶けていたとしても、人体がそれを吸収する機構が消化器官にはないので、ほぼ影響がないと言えるからです。

バイオフィルムによって、セミラックスの表面が汚れていく固定型のセラミックス法式の延命装置のほうが、衛生面での問題が大きいということがご理解いただけます。

排水管への効果:見落とされがちな重要なポイント

これまでの配管延命装置の配管保全効果に関する議論は、主に給水管や給湯管に焦点が当てられてきました。

しかし、マンションの配管システムを考える上で、もう一つ忘れてはならないのが「排水管」です。

一般的に、マンションの排水管の保全費用は、給水管や給湯管よりも高額になる傾向があります。

これは、排水管の立管はマンション全体の共有部のほか、専有部としては各世帯の部屋の中に2~3本あることが多く、これをすべて取替えるとなると非常に高額な工事費用が必要となるからです。

このような状況の中で、配管保全装置の「エミール」や「エルセ」は、マンションの水道管の根元に1台設置することで給水管・給湯管だけでなく、排水管に対しても保全効果が期待できる大変優れた保全装置であるということができます。

これまでは、他の延命装置メーカーは排水管への効果を明言してこなかったため、これが「エミール」や「エルセ」の大きな差別化要因となっていました。

しかし、最近になって、他の延命装置メーカーも急に「排水管にも効果がある」と主張し始めています。

これは、それだけ排水管の保全の重要性が認識されてきたということでもあります。

ですが、ここで注意が必要です。本当に排水管にも効果があるのかどうか、その実証データや根拠をしっかりと確認することが非常に大切です。

具体的な検証結果を提示してもらうことをお勧めします。

「エミール」や「エルセ」については、長年の実績と、先ほども触れた国土交通省の建物での検証結果など、信頼できる情報が数多くあります。

導入費用についても、数十年間の配管洗浄費用とほぼ変わらないか、もしくは安い費用での設置が可能という点も、導入を検討する上での大きなメリットと言えるでしょう。

本日の投稿記事では、マンションの給水管・給湯管内に発生するバイオフィルムの危険性、そしてその具体的な対策法についてお話ししました。

受水槽の清掃は当然行うべきですが、それと同じくらい、いやそれ以上に、見えない給水管・給湯管内の不衛生なバイオフィルムへの対策が重要であることをご理解いただけたかと思います。

マンションの水の安全と、マンション価値を守るために、配管の長寿命化は一番の課題であり、早期に適切な対策を講じることが不可欠といえます。

もし、皆さんのマンションで「うちのマンションの配管はどうなっているんだろう?」「どんな対策が良いのだろう?」とお悩みでしたら、ぜひ私たち配管保全センターにご相談ください。

配管保全センターは、あと何年住み続けるのか、配管の材質は何か、修繕積立金の状況等を総合的に判断して、最適な配管の保全方法を無料にてご提案しております。お気軽にお問合せください。

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