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スラム化リスクが高いマンション 5つの特徴 配管保全編

2024年8月23日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

テレビや雑誌で、「限界マンション」や「スラム化の危機」といった特集テーマをよく目にするようになりました。

ずさんな管理運営によって、修繕したくても修繕積立金が足りずに、維持管理ができなくなっているマンションを「限界マンション」といいますが、そのようなマンションは最終的には住民がいなくなり、スラム化してしまう可能性が高いと言えます。

そして、マンションのスラム化は今後どんどん増えていくことが懸念されています。

今回の投稿記事では、管理会社に管理を委託している分譲マンションで、配管の保全を検討する際に見えてくる、スラム化してしまうリスクが高いマンションの5つの特徴についてお話します。

築70年、80年になっても健全な維持管理を継続していくための参考情報にもなりますので、ぜひ最後までご覧ください。

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スラム化リスクの高い管理組合の一般的な特徴

配管の保全を検討するにあたって、どのような特徴があるとスラム化のリスクが高いかをお話する前に、一般的に、どのような管理組合だとスラム化の危険度が高いかについて、簡単にお話します。

他にもいろいろとありますが、主に以下のような特徴があります。

(ア) 管理運営に関してほとんどの区分所有者が無関心

(イ) 理事や役員になりたがらない

(ウ) 住民は総会に出席しないし、理事会や総会の議事録も読まないことが多い

(エ) 管理会社に任せていれば安心と思っている

(オ) 新規の区分所有者が入って来ず、空室率、賃貸率、管理費の滞納率が高く、所有者が所在不明の部屋が多い。

上の(ア)~(エ)の特徴がみられるマンションは、それほど珍しくありませんが、その状態が長年続いて、(オ)の特徴が表れてくると、かなりスラム化リスクが高まっているという認識でよろしいのではないでしょうか。

スラム化リスクの高い配管の保全方針の特徴

それでは、本題である配管の保全を検討するうえで、どういった特徴があると、スラム化リスクが高いのかについて、お話します。

基本的にはさきほどの(ア)~(エ)の特徴がみられるマンションで、これからお話する5つの特徴が多いほど、さらにスラム化のリスクが高くなるのではないかと考えています。

逆に、(ア)~(エ)の特徴は当てはまらず、管理組合運営に関して意識が高いマンションでは、以下に示す特徴があったとしてもあてはまらないとも言えます。

あくまでもさきほどの(ア)~(エ)の特徴にあてはまる管理運営に無関心なマンションで、下のような特徴がみられた場合、スラム化のリスクがさらに高まるということになります。

特徴1 専有部の配管保全を区分所有者任せにしている

1つ目の特徴として、専有部の配管保全を区分所有者任せにしているということです。

これについては、現状ではほとんどのマンションが、このスタンスを取っているともいえますが、だからこそ多くのマンションで、築年数が進むと共に、漏水が大きな問題となってくるといっても過言ではないと考えます。

築25年以上のマンションで、漏水リスクが高い配管はどこかご存知でしょうか?

共用部と専有部で比較すると、圧倒的に専有部の配管からの漏水リスクが高いことがわかっています。

漏水マンションと噂されて、スラム化一直線とならないために、取り替えるべき優先度が高い配管は、何といっても専有部の配管といえます。

ただ、「専有部の配管取替えはそもそも管理組合の管轄外」ということや、「専有部の配管取替えは修繕積立金の予算に組み込まれていない」といった問題もあります。

とはいえ、このような問題をクリアにしてでも、専有部の配管に関しては、どのように保全していくかを、住民全体で話し合う必要があると考えます。

専有部の配管取替えにも管理組合が関与できるように、総会などで早めに合意しておくことが重要です。

そうすれば、各区分所有者がリフォームをする際に、専有部の配管は必ず取り替えるというルールを設定できますし、組合が一部補助金を出すといった制度を作ることもできます。

これにより、専有部の配管の取替えが進み、漏水確率を大幅に抑えることができるでしょう。

結果的に、組合も区分所有者も負担すべき金額が少なくて済み、必要となる他の改修に修繕積立金を有効活用できることになります。

組合のルールで、各区分所有者がリフォームをする際に、専有部の配管は必ず取り替えることと設定して、組合が一部補助金を出す制度に関しては以下の投稿記事を参考にしてください。 『補助金制度で専有部配管の取替え 費用削減!!

特徴2 長期修繕計画通りに配管工事を実施している

2つ目の特徴としては、長期修繕計画通りに配管工事を実施しているということです。

多くのマンションでは、専有部の配管の取替えは長期修繕計画には考慮されておらず、専有部よりは漏水リスクの低い共用部の配管のみが組み込まれています。

一般的には、他の設備と同様に、給排水設備の耐用年数も安全を見て短めに設定されています。

長期修繕計画は、そういった安全を見た耐用年数に基づいて作成されていることが多く、それは特に悪いことではないとも言えますが、あくまで更新時期は目安であり、その通りに実施しなくてはいけないものではありません。

長期修繕計画通りだと漏水リスクの低い共用部の配管から取替えられていき、専有部の配管が置き去りにされてしまいます。

築年数が経って、専有部の配管から漏水が多発するようになっても、結局、修繕積立金不足でどうしようもないといった事態に陥ることになりかねません。

最近は、共用部の配管も一度、取替えてしまえば、そのあとはほぼ取替えなくていいような材質の配管に取り替えるので、共用部の配管の取替えの時期は早くてもいいのですが、だからといって優先度の高い専有部を放置していいというわけではありません。

漏水リスクの比較的低い共用部を優先的に取替えるのではなく、専有部を優先的に取替えるには、どのような長期修繕計画にしたらいいのか、今一度、検証する必要があると考えます。

それから、たとえば、「受水槽を25年目に取替えたが、築50年あたりでまた取替えることになっていて、お金がなくて困っている」というようなマンションから、どうしたらいいかとご相談をお受けすることも多いです。

受水槽は長期修繕計画に予定されたタイミングで必ず、更新しなくてはいけないというわけではありません。そのあたりの認識についても検討の余地があります。

特徴3 劣化診断を信じ込む

3つ目の特徴は、劣化診断を信じ込むということです。

配管の劣化状況を見るために、内視鏡調査を行う管理組合さんが多いですが、劣化診断の結果報告は、往々にして悪い所だけをピックアップして、あたかも他の箇所もそうなっているので、すぐに取替えなくてはいけないという報告になることがかなり多いといえます。

無料で劣化診断を行うところがすべてそうだというわけではありませんが、特に無料で行うような場合は、その傾向が強いといえます。

給水管にしても排水管にしても、劣化の進行度合いは、一様ではなく、箇所によりかなりバラツキがあります。

また、判定結果としてA判定~D判定のうち、D判定なら2~3年以内に取替える必要があるといった判定をするケースが多いのですが、そもそもD判定と評価する基準があいまいだったりするので、劣化診断結果を鵜呑みにせず、中立的な会社にセカンドオピニオンを求めてもいいのではないかと考えます。

劣化診断の結果、共用部の配管をすぐに取替えなくてはいけないということであれば、配管の材質によりますが、専有部の配管はより劣化していると考えてもおかしくはありません。

劣化診断は劣化診断として、限られた修繕積立金を有効活用していくために、まず、どの配管から優先的に保全していくのかを検討していただくことをお勧めします。

特徴4 保全方法が本当に適切かを吟味しない

4つ目の特徴は、保全方法の妥当性を評価しないということです。

保全の方法としては、配管を取替える更新工事、配管を再生する更生工事、配管を延命する延命装置の活用といった大きく3つの方法があります。

更生工事は、ほとんどの場合、更新工事よりも安くて工期も短いのですが、この先30年以上もしくは40年以上住み続ける可能性が高いと思われる場合、結局は、更新工事をする必要性が高いので、更生工事の費用が無駄になってしまうケースが多いといえます。

更生工事を実施する際には、その費用が無駄にならないかをよく検討することをお勧めします。

延命装置については、漏水リスクの高い給湯管への延命効果は期待できず、専有部の給湯管と給水管は組合主導で取り替える場合が多くなるといえます。

そこで、どのような延命装置がいいのかというと、その延命装置が排水管の詰まりやサビによる漏水に対して抑制効果が期待できるかどうかがポイントとなります。

限られた修繕積立金の中で、延命装置の導入を検討される際には、排水管への効果に関して、確かな実績がある装置を選択することをお勧めします。

特徴5 業者選定で複数の業者から見積りを取ることがない

最後、5つ目の特徴は、業者選定で複数の業者から見積りを取ることがないということです。

一般的には、管理会社が複数の業者から見積りを取ることが多いのですが、管理会社経由ではなく、管理組合自身が見つけてきた業者からも見積りを取ることをお勧めします。

ワンマン理事長がすべてを決めているような組合の場合は難しいのですが、できるだけワンマン理事長派閥ではない住民が見つけてきた業者からも見積りを取るようにして、公平に業者を選定することが重要です。

正しい工法で、正しいタイミングで保全工事を行ったとしても、工事費に関係各社の手数料がかなり上乗せされている場合、修繕積立金のたいへんな無駄遣いに繋がります。

良心的な管理会社であればいいのですが、そうでない場合、お住いのマンションがスラム化しないためには、組合で話し合って、自分たちで最適な配管の保全方針を決めて、業者選定まで行わなければなりません。

専門的な知識が必要となりますので、それはかなり難しいことといえるでしょう。

配管保全センターでは、マンションの配管の材質や、あと何年住み続けるかといったことを総合的に考えて、最適な保全方法のご提案を無料にて行っております。

ご興味のあるかたは、お気軽にご相談ください。

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