2022年6月17日
この記事のカテゴリー : 排水管の保全
画像①
イラスト①
右のイラストは、マンションの排水管の立管と、それらの立管が1階床下でつながっているイメージ図です。 緑枠で囲んだ部分は、よくあるタイプの通気管で伸長通気(しんちょうつうき)と呼ばれるものです。排水の流れがスムースになるように、排水管の立管の最上部のところで空気が屋上に抜ける形態になっています。 こういった通気管がないと、ストローの口を指で塞いでいるのと同じ状態となり、トイレからの排水が、スムースに落下していきません。 ということで、排水管の立管内を排水がスムースに落下するためには、空気の逃げ場があることがとても重要になります。 次にイラスト②をご覧ください。ここでは、通気管があっても、空気の逃げ場がなくなってしまう状態が、排水管の立管内で起こり得ることをご説明します。 左側のイラストは、屋外にある横引きの排水管が、地盤沈下等で折れ曲がってしまい、逆勾配になったところに排水が溜まってしまった状態を表わしています。 このような状態では、たとえ通気管があったとしても、上から一気に排水された場合、配管内をふさぐように落下していく水の塊と、逆勾配で溜まった排水との間で配管内の空気が圧縮されます。このように空気が圧縮されて空気圧が高くなった状態を正圧状態といいます。こういう空気が圧縮された正圧状態になると、排水された水の塊はスムースに落下しづらくなってしまいます。 なお、排水された水の塊の上では、逆に空気の圧力が低くなり、いわゆる負圧状態になります。 次に、右側のイラストは、立管と横引き管との接続部分に、汚物や尿石等が付着して詰まりを起こしている状態を表わしています。逆勾配のときと同様に、空気が圧縮され正圧になりやすい状況なので、排水した水の塊はスムースには落下しづらくなります。イラスト②
では、実際に排水管立管がイラスト②のように、横引き管が逆勾配になったり、立管と横引き管との接続部に詰まりができたりした場合、トイレの便器の水位がどうなるかを見ていきます。 イラスト③で、上の階から排水された場合に、下の階のトイレの便器に溜まっている水がどうなるかを示しました。ちなみに、トイレの便器に溜まっている水は封水(ふうすい)と呼ばれ、排水管から臭いや害虫が上がってくるのを防ぐ役割があります。 イラスト③の左側の①の状態は、上の階から排水された水の塊が立管を落下してこようとしている状態です。 落下すると②のように、下のトイレの排水管が負圧状態になり、トイレに溜まっていた封水が誘導サイホン作用により、立管のほうに引っぱられていきます。 排水管の立管の詰まりが初期でそれほどひどくない場合は、封水が立管のほうに引っぱられても、そのまま立管のほうに流れ出していくことはありませんが、詰まりの状態がひどくなり、負圧の度合いが高くなるにつれ、封水が立管に流れ始めていきます。 こういった現象により、最初はわかりませんが、便器の水位が、徐々に低くなっていきます。 ひどい場合には、かなりの量の封水が引っぱられて立管に流れ出し、右側のイラストのように、すき間ができて部屋まで臭気が上がってきたり、害虫が入り込んできたりします。イラスト③
このような状態になると、イラスト②でみた逆勾配や立管の詰まりがかなり悪化していると考えられ、ひどい場合には汚物や尿石が固着化して、立管を高圧洗浄しても詰まりが解消されず、下部の立管を取替える必要が生じます。イラスト④
イラスト⑤
ただ、排水管の立管が塩ビ管ではなくライニング鋼管や白ガス管などの金属系の場合は、錆びコブに尿石が付着しがちなため、高圧洗浄でも除去するのが難しくなってきます。 また、塩ビ管の立管でも、汚物が堆積してそこに尿石が固着していけば、高圧洗浄でも除去は難しくなります。 排水管の錆びや尿石対策では、流動式セラミックス方式の活水器を設置することもお勧めです。 マンションの受水槽の手前か直結増圧ポンプの二次側に1台設置するだけで、排水管の錆びや尿石、汚物の固着化を防ぐことも期待できます。