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築30年以上のマンションの配管 ケアすべき優先度トップ3!

2021年12月24日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

マンションの配管の錆びによる漏水や詰まりによる水あふれの事故、起こったら困りますよね。

表①をご覧ください。

これは、共用部の配管と専有部の配管を比較したものです。

まず、共用部の配管のほうが専有部の配管と比較して、太くて、配管の肉厚が厚いので、専有部のほうが、漏水や詰まりを起こしやすいというのがお分かりいただけると思います。

表①

それを裏付けるように、今年2021年の9月に改訂された国交省の長期修繕計画作成のガイドラインによると、水漏れのリスクを低くするために、共用部配管は築30~40年、専有部配管は、28~32年とさらに短い期間で取替えるべきだと勧めています。

あくまでガイドラインですので、必ずこの年数で取替えるべきとまでは、言わないですが、共用部と専有部、どちらのほうが漏水リスクが高いかということを裏付ける情報だと言えますね。

ただ、専有部の配管の改修費用は高額になりがちです。責任管轄も各区分所有者にあることから、長期修繕計画には、専有部の配管費用がほとんど計上されていないのが実情といえます。

その結果、築30年以上のマンションでは、専有部の配管の保全が放置されてしまい、漏水や詰まりが多発して、対応するにも対応できないと悩んでいる管理組合さんが、かなり多いと言えます。

今回の動画では、専有部も含めて、いったい、どの配管の漏水や詰まりのリスクが高く、どのような対策を事前に講じていくのが効果的なのかということをお話します。

漏水リスクの低い共用部の保全ばかりに気を取られて、何年も先には専有部の配管が水漏れだらけで、手が付けられなくなるといった事態を避けるためにも、是非、最後までご覧ください。

動画

 

共用部の配管ってどうなってるの?

まず、共用部と専有部の配管がマンションのどのあたりにあるのかをイメージできるように、下のイラスト①をご覧ください。こちらは、共用部の配管イメージです。厳密に書くとわかりにくくなるので、あくまでイメージとしてご覧ください。

イラスト①

①親メーターからマンションの屋内までの給水管は埋設されています。

②屋内では、各世帯のパイプシャフトの水道メーターまで給水管の立管があります。

③各世帯の水道メーターまでが共用部、水道メーターより先が専有部ですが、この水道メーター廻りの配管は、築30年以上の場合、一番、錆びやすい箇所と言えます。

それから排水管としては、

④各世帯から階下に排水を運ぶ排水管の立管があります。

⑤マンションの1階より下の部分に排水の横主管がありマンションの排水が全てこの横主管に集まってきます。

⑥屋外には、排水桝があり排水桝と排水桝をつなぐ排水管は通常、地中に埋設されています。

専有部の配管ってどうなってるの?

次に、専有部の配管がどのあたりにあるかをイラスト②に示しました。

青色の線が給水管。赤色の線が給湯管です。

洗濯機とトイレには給水管が配管されていますが、キッチンやそのほかの洗面台、ユニットバスの蛇口までは、ほとんど同じルートをたどって、給水管と給湯管が配管されています。

イラスト②

また、専有部の排水管は緑色の線で示していますが、排水が滞留しないように、必ず勾配をつけて各設備から共用部である排水管の立管につながっています。イラスト②では、専有部の排水管はキッチンから雑排水管の立管に、トイレ・ユニットバス・洗面台・洗濯機からは雑汚水管の立管につながっています。

排水管の立管はパイプシャフトの中にある場合もありますが、専有部のトイレや押し入れの裏等にあることも少なくありません。

各世帯に排水管の立管が1本だけのケースや、2本~3本あるケースのものまで、マンションによって、異なります。

ケアすべき優先度が高い配管はどれ?

表②に、築30年以上のマンションで、共用部・専有部の給水・給湯・排水管でよく使われる配管の材質をリストにしました。

また、それぞれの材質の配管で、錆び・銅管の潰食による漏水確率、詰まりやガス腐食による漏水確率の高いものに×印をつけました。×印の多いものほど、リスクが高いことを示しています。なお、黒塗りの箇所は材質の特質上、リスクのないところ。空白の箇所は、漏水や詰まりのリスクはゼロではないですが、比較的低リスクのところです。

ひとつひとつの説明は、今回は割愛します。

なお、漏水や詰まりは、地震、地盤沈下、ウォーターハンマー、接続不良等、さまざまな原因が考えられますが、今回は、特に発生頻度が高い錆び・銅管の潰食、詰まり、ガス腐食のみをピックアップしました。

表②

優先度1番目:③各世帯の水道メーター廻り

優先度の1番高いものは、③各世帯の水道メーター廻りです。水道メーターとライニング鋼管との接続部が絶縁処理されていなければ、経年劣化による異種金属接触腐食により漏水する確率がかなり高いといえます。

ただ、取替え費用は、世帯あたり3.5~7万円程度で負担は高くありません。

優先度2番目:⑧給湯管の銅管

2番目に優先度が高いのは、専有部の⑧給湯管です。

築20年を過ぎたあたりから、銅管の潰食(かいしょく)という現象による漏水事故が起こり始めます。マンションによって、ほとんど発生しないところもありますが、給湯管が銅管のマンションではかなり、発生頻度が高いといえます。

給湯管を更新するのであれば、給水管はほぼ同じルートに配管されているので、一緒に更新するのが経済的です。

ワンルームであれば、20万円~40万円程度、ファミリータイプでは40万円~70万円程度で、更生工事とほぼ変わらない金額で取替えできます。更生工事の場合、保証期間が過ぎると結局、取替えが必要となるため、ほぼ金額が変わらない取替え工事のほうをお勧めします。

ただし、管轄が区分所有者ですので、管理組合がガイドラインを作成して、各世帯がリフォーム時に極力、取替え工事を行うよう推奨することをお勧めします。

これに関しては、動画「ファミリータイプのマンション 20万円台で給水・給湯管を取替える裏ワザ」で詳しくご説明していますので、概要欄のリンクからご覧ください。

優先度3番目:⑨キッチンの金属系の雑排水管

それから3番目に優先度が高いのは、専有部のキッチンの雑排水管が白ガス管もしくは塩ビライニング鋼管の場合です。なお、キッチンの場合は、塩ビ管であれば、リスクは低いのですが、キッチンから排水管の立管まで、曲がり角がいくつもあり、配管の距離も長い場合は、塩ビ管でも油等が固着して詰まる可能性がありますので要注意です。

また、キッチン以外の専有部の排水管でも、白ガス管や塩ビライニング鋼管を使っている場合は、漏水や詰まりを起こす可能性は、共用部の排水管よりは高いと言えます。

対策としては、理想は取替えです。「築100年まで住み続ける」といった方針を住民間で明確にしているマンションでは、更新する必要があると考えます。

ただ、専有部の排水管を取替える費用は、世帯あたり50万円以上で、多い場合は100万円を超す場合もあります。さすがに、全世帯で更新するのは無理といった場合は、給水管だけでなく排水管の保全効果も期待できる流動式セラミックス方式の延命装置であれば、世帯あたり6万円程度。更生工事であれば、世帯あたり20万円程度での対策となります。

延命装置でも更生工事でも実施すれば漏水や詰まりがゼロになるわけではないのですが、事故が発生する確率を減らすことは期待できますので、どの対策にすべきかは、住民間でよく話し合って決めることが肝要です。 なお、延命装置を設置する場合は、極力早いタイミングで、設置するほうが、より効果を期待できます。

優先度は低いが要注意:⑤排水管横主管(鋳鉄管)

それから、共用部の⑤排水 横主管で鋳鉄管の優先順位に※がありますが、築40年以上経過してくると、鋳鉄管がタテでなく、ヨコに配管されている場合は、配管内に溜まったガスによって、鋳鉄管の上部が腐ってボロボロになるという状況を、最近、よく目にします。

鋳鉄管は、配管が肉厚なので、漏水の心配がないと勘違いされている方が、結構いらっしゃいますが、ガスによる腐食の可能性がありますので、状況に応じて、ボロボロになる前に取替えを行うことをお勧めします。

いかがでしたでしょうか。

管理組合としては、どうしても共用部の配管の保全に気を取られがちですが、築40年以上になって、最もやっかいで、どうしようもなくなってくるのが、専有部の銅管の給湯管と、専有部の排水管です。

全て取替えとなると、高額な費用が必要となります。従来の共用部のみだけにとらわれず、早め早めに、「自分たちのマンションでは、長期的かつ全体的に配管をどのように保全していくべきなのか」検討を進めていくことをお勧めします。

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