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管理会社が理事長に!? 知らないと取り返しがつかない!! 第三者管理の留意点とは?

2023年3月31日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

みなさん、第三者管理という言葉をご存知でしょうか?

分譲マンションは、通常、区分所有者の中から理事を選出し、その理事の中の一人が理事長となって、理事会を通して管理組合を運営していきますよね。

一方で、第三者管理の場合、いくつかやり方があるのですが、簡単に言うと、管理組合の構成員である区分所有者ではなくて、第三者である外部の専門家に理事長、言い換えると「管理者」になってもらって、管理組合の運営を任せることになります。

ちなみに、「管理者」というのは、管理人さんのことではなく、一般的な分譲マンションでは、管理組合の最高責任者である理事長のことを指します。

イラスト①

理事長や理事はなかなか、なり手がなく、最近では、理事会機能を外部に委託してしまう第三者管理方式に移行するマンションが、かなり増えてきています。

管理会社から「管理費を上げないので、我々が提示したこの管理規約に変更して第三者管理にしませんか?」と提案されている管理組合さんも多いのではないでしょうか。

「管理費も上がらないし、理事のなり手不足も解消できるし、こんなにいいことはない」と思われるかもしれませんが、第三者管理に変える場合、やり方を間違えると取り返しのつかない大変なことになってしまうことがあります。

「とりあえず管理会社に任せてみてダメだと思ったら、元に戻せばいいじゃないか」と思っている方も多いと思いますが、元に戻すのはとんでもなく難しく、余程うまくやらないと、ほぼ無理と言っていいかもしれません。

今回の投稿記事では、第三者管理方式のなかでも、管理会社が最高責任者である「理事長=管理者」になる形態にした場合の想定されるデメリットについてお話します。取り返しがつかなくなってしまう前に、最低限気を付けておくべき内容についてもお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。

動画

 

第三者管理方式で管理会社と管理者が同一の場合の問題点

第三者管理とひとことで言っても、理事会を残したり、理事会自体を廃止してしまったりと様々な形態があります。

マンションの規模によっても、最適な形態は変わってきます。

イラスト②ですが、第三者管理方式で理事会がない形態の代表的な例を示しています。

左側の例は、最高責任者の「管理者」と、管理会社が別の会社の例です。この例であれば、管理会社からの工事の提案に対して、別会社の「管理者」がその工事の費用や内容の妥当性を厳しくチェックすることになります。管理会社としては、好き勝手なことはできにくい構造と言えますね。

それに対して、右側の例は、管理者も管理会社が行う例です。この場合、発注者と受注者が同じ会社なので、管理会社としては、かなり好き勝手なことが出来やすい環境と言えます。もちろん、総会で住民の賛同を得る必要があり、また監事も住民とすると、一応、監視機能はあります。ただ、もともと、理事のなり手がおらず、管理組合の運営に対する関心が低い管理組合では、区分所有者が監事であったり、総会で決議される必要があるとしても、修繕等の内容の正当性や価格の妥当性をチェックするのは、かなり難しいといえるのではないでしょうか。

イラスト②

第三者管理方式で管理会社と管理者が同一の場合の想定される管理組合の未来

修繕に関する実施の要否や費用の妥当性のチェックが困難

第三者管理方式で管理者と管理会社が同一の場合というのは、発注者と受注者が同じ会社ということになりますが、この場合に、想定される管理組合の未来を考えてみましょう。

管理者と管理会社が同一の場合に全ての管理組合がこうなるとは言えません。この形態でも良心的な管理会社であれば、それほど問題にはならないかもしれません。ただ、この形態の場合、これからお話しするような未来になる可能性もあります。

まず、受発注者が同一で、理事会もない場合、理事会という歯止めが全くありません。管理会社からの見積もりだけで他社と見積もり額を比較する余地がないままいきなり総会へ提案され、白紙委任状ですべての見積が通ってしまうといったことが起こりやすくなると言えます。そのため、大規模修繕や給排水管の保全に関して、費用が相場より高めになったり、実施しなくていい工事を実施することになりかねません。

イラスト③

  たとえば、大規模修繕の世帯相場が仮に一戸あたり100万円前後だとして、発注者でも受注者でもある管理会社から130万円と提示されたり、また、修繕をしなくてはいけないような劣化がそれほど進んでおらず、大規模修繕の実施タイミングを先に伸ばせそうだとしても、「前回の大規模修繕から12年経ったので、実施が必要だ」と言われて、そのまま12年で着工されてしまったりといったことが起こりやすくなります。

あるいは、給排水管の立管を取替えようとして、仮に相場が一戸あたり80万円前後だとして、発注者でも受注者でもある管理会社から150万円あたりで提示されても、そのまま通ってしまうことが多いでしょう。

イラスト④

工事案件では総会が開かれない場合も⁈

  一般的な管理組合では、毎年、定例総会が開かれて、個々の工事案件に関しても普通決議案件として、住民の意思が問われます。定例総会まで待てないような緊急案件があった場合には、臨時総会を開いて、工事の妥当性を問う手続きを取ることができます。疑問がある人は、定例総会や臨時総会の場で自由に質問できますし、質問されたことによって、総会に参加した人たちは、その案件の内容が妥当とはいえないことに気づくかもしれません。常に、住民の監視があるので管理会社としても、おかしな提案はしにくいと言えます。

ところが、管理会社と管理者が同一の第三者管理に移行した場合、なんと工事などの普通決議案件は、総会ではなく電子的な投票制度で決議するように管理規約に定められている場合があります。

イラスト⑤

  総会を開かず、電子的な投票だけの場合、提示された案件の問題点に気づくのは難しくなります。管理組合の運営に無関心の区分所有者が多いと、ほとんどの人が案件の妥当性がわからずノーチェックとなり、どんな案件であっても反対されることなく通ってしまう可能性が高くなります。

たとえば、一部の区分所有者がその案件の内容がおかしいと思って、管理会社による電子的な投票制度だけではなく、住民主催の総会を開こうとした場合、総会は開けるのでしょうか。住民サイドで総会を開くためには住民の5分の1の署名や、さらに、ある管理会社では、総会で住民が意思表示を行うためには、全員の印鑑証明の提示が必要であると管理規約に定められている場合もあると耳にしています。そのようなルールの場合、区分所有者が立ち上がること自体ハードルが高く、仮に総会を開けたとしても、管理会社が提示してきた案件の内容を否認するのはかなり難しく、結局、住民は何も意見を言えないような仕組みになっていると言えます。

このように、第三者管理方式で管理会社と管理者が同一で、かつ理事会も総会もない場合は管理会社が好き勝手にできる可能性が高いといえます。管理費をあげなくても修繕工事で十分利益を上げられるので、「今後は管理費を上げませんから」と、管理会社の都合のいいように作られた第三者管理の管理規約にサインさせようとする管理会社もいるようです。

修繕積立金がどんどん値上げされる

理事会も普通決議の総会もない中で、大規模修繕の実施サイクルが短くなり、管理者から修繕費用が高めに設定された長期修繕計画を提示されたとしても、その妥当性の検証は難しいですね。

その結果、修繕積立金がどんどん値上げされて、滞納も増えてきます。そのように修繕積立金が高くて、滞納者が多いマンションに、新しく引っ越してこようという人はいなくなり、管理組合の資金も徐々に枯渇していきます。資金が枯渇してきた段階で、管理会社から「これ以上は管理できません」と言ってこられたとしても、すでに自分たちで管理するノウハウや、理事のなり手もおらず、そのマンションはスラム化へ一直線という可能性が高くなります。

イラスト⑥

  

途中で第三者管理をやめるのはかなり困難

このように、第三者管理移行後に、今お話ししたような結末になりそうだと気づいたとしても、第三者管理を途中で解除するにはかなりのエネルギーが必要になります。

普通決議の総会が開催されないような場合は、さきほどのように、住民たちで区分所有者の署名を集めて臨時総会を開くことから始めなければいけません。管理者である管理会社に第三者管理の契約を解除する総会を開くように申請しても拒否される可能性が高いからです。

区分所有者の5分の1以上の署名を苦労して集め、臨時総会を開けたとしても、管理形態を変えるには、通常は過半数の賛同を得ることが必要となります。場合によっては、管理形態を変えるには特別決議の4分の3の賛同が必要と記載されていることもあり、その場合は、さらに賛同を得るハードルが高くなります。

また、5分の1の署名を集める時や、住民が開催を求めた総会で、議案の意思表示を行う時に、全員の印鑑証明の提示を必要とするような管理規約になってしまっている場合は、やはり、第三者管理をやめるのは、さらに難しくなると言わざるを得ません。

イラスト⑦

   将来的に大変なことになるかもしれないといった、想定されるリスクに気づいておらず、「管理会社に任せておけば安心」と思っている住民に、将来の危険性を説明しても、「せっかく理事にならなくてもいい仕組みになったのだし、素人の住民が運営するよりも管理会社に任せてたほうが効率的なのだから、なぜ、第三者管理をやめることに賛成しなくちゃいけないんだ」と思う方は多いと思われます。こういった環境の中で、過半数以上の賛同を得るのは、至難の業ですよね。

なお、普通決議の総会が開催される形態であったとしても、いったん第三者管理に移行してしまうと、契約を解除するには、過半数以上の賛同が必要で、いずれにしろ、元の管理形態に戻すのは、難しいと思われます。 理事のなり手がいないために、第三者管理に移行することすべてが悪いことではありませんが、新しい管理規約の内容を十分に吟味して、極力、管理者と管理会社は別にしたり、監事には、管理運営や修繕工事のノウハウや経験が豊富なマンション管理士についてもらうことを強くお勧めします。

配管保全センターでは、良心的なマンション管理会社や経験豊富なマンション管理士と提携しています。第三者管理に進むべきかどうかお悩みであれば、お気軽にご相談ください。現状を中立的、総合的に見て、選択すべき形態のアドバイスをご提示できるかと思います。ご興味のある方は、こちらの配管保全センターのホームページのメールかお電話にてお気軽にご連絡ください。

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