2021年9月10日
この記事のカテゴリー : 延命工法

銅管では、潰食(かいしょく)という現象がよく起こりますが、これは銅管内のお湯が気泡となってエルボー部にぶつかり続け、鉄よりも柔らかい銅管に小さな孔を空ける現象のことで水漏れの原因となります。
配管の延命装置としては、電流式や脱気式、セラミックス方式等とさまざまありますが、どの延命装置でもこの潰食という現象を抑えることはできません。
今回のシミュレーションでは、この給湯管で使われている銅管に関しては築30年からの30年間で、全世帯の5割程度で漏水事故が起きると仮定しています。
たとえば洗面台へ向かう給湯管の銅管に漏水が起きたあとで、今度はキッチンに向かう給湯管の銅管でも漏水が起きる可能性が高いので、シミュレーション上は、銅管から漏水が起きた場合は、その世帯の銅管を全て取替える前提にしています。また、その際に、給湯管とほぼ同じ場所に配管されている給水管も同時に取替えると工事費用を抑えることができるので、給水管の取替えも一緒に行うこととしています。
なお、銅管だけ更生工事で配管内を樹脂でライニングしておくという考え方もありますが、30年間で結局、更新工事で取替える必要が出たりすると、修繕費用が余計にかかってしまいます。そこでここでは、給湯管に対して更生工事は行わずに、取替え工事を行う前提としました。このあたりはケースバイケースとなります。
表①
表①は、一般的な長期修繕計画に従って更新工事を行った場合と、延命装置エルセを導入した場合に、それぞれの配管が築30年からの30年間で、どの程度の割合で更新することになるかを表わしました。
②エルセ(予算確保ケース)では、共用部で3100万円、専有部で5900万円の合計9000万円で、①のケースから約6割の費用の削減を期待できるという結果になりました。
※各配管の費用を便宜上、特定の会計年度のみに掲載しています。実際には、築60年までの期間内に発生すると予測されます。
③エルセ(ベストケース)では、共用部で700万円、専有部で2500万円の合計3200万円で、①のケースから約8割の費用の削減を期待できるという結果です。なお、エルセの導入費用は700万円としていますが、受水槽の有無や、ファミリータイプが多いかどうか等で変わりますのでこちらも参考価格になります。
※給湯管の取替え費用を便宜上、35年度のみに掲載しています。実際には、築60年までの期間内に発生すると予測されます。
考え方によっては、エルセ導入の700万円程度の投資で、1億円以上の費用削減を期待できるということで、導入の検討をされる意義は十分にあると言えます。
専有部含めてすべての配管を取替えるのが理想ですが、特に排水管の取替えは非常に高額になるので、困っている組合さんがたくさんいらっしゃいます。
延命装置により、極力、漏水リスクを抑えて、大切な修繕積立金になるべく余裕を持たせておけば、マンションの売却時に重要事項説明に記載する修繕積立金の金額もより多い額となります。
水漏れが多すぎると、資産価値にも影響してきますが、修繕積立金の残額とのトレードオフになるので、無駄遣いせずに、最適な保全に努めていきたいものですよね。
