2021年8月14日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い
イラスト①
漏水事故発生後の、給水・給湯管の更新費用は、イラスト②のように世帯あたり平均50万円としました。 また、階下への損害賠償は、発生しない場合もあり、場合によっては数百万円に及ぶ場合もありますが、世帯あたり平均60万円と仮定しました。 ということで、1回の事故で更新費用50万円と賠償費用60万円の合計110万円で28世帯発生となると3,080万円になります。イラスト②
これらの費用は、保険でカバーされるんじゃないの?と思われる方もいらっしゃると思います。 たしかに、漏水事故が起こり始めた初期は、管理組合や区分所有者が加入している火災保険や個人賠償責任保険で、ある程度カバーされるはずです。ところが何度も同じ現象で漏水事故が起こると、保険適用されなくなってきます。 漏水の補償として保険会社が支払った保険金が、次回の契約時にそのまま保険料に上乗せされたり、継続加入の更新拒否をされたりもしますので、度重なる漏水事故は経年劣化による事故とみなされ保険でカバーされないと認識したほうが無難と言えます。表①
今回のシミュレーションはあくまでサンプルであり、本当にこの金額になるのかというよりも、想定していなかった高額な出費になりえることを認識いただくことが大切と考えます。 また、さらに、注目すべきは、水漏れリスクとマンションの資産価値です。 配管の保全処置を何もせず、配管を放置している世帯での水漏れリスクは、築70年までとすればかなり高くなります。 現在、マンションでの漏水は社会問題化しており、中古マンション購入時に、配管の保全状況を重要視する傾向にあります。水漏れが多いマンションを好んで買いたいと思う人は、いませんよね。 配管が更新されていない場合、水漏れリスク回避のために将来の配管の交換費用相当額をマンションの購入価格から値引かれる可能性もあり、きちんと配管保全をしているマンションと比較して、マンションの資産価値はかなり低くなると考えられます。イラスト③
イラスト④に費用の内訳を掲載しています。 リフォーム・リノベーション時には床や天井を剥がすので、配管をついでに更新できて、更新費用が安くつきます。今回のシミュレーションでは各自が個別にリフォーム・リノベーション時に更新する場合は、世帯あたり30万円としました。イラスト④
また、個別のリフォーム・リノベーション時でなく、更新していない世帯で、一斉に更新する場合は、配管の取替えのために床や天井をわざわざ剥がす必要があるので、リフォーム・リノベーションの時よりも、割高になります。それでも一斉に更新すればボリュームメリットが働いて割安で工事できると仮定して世帯あたり45万円としました。 ということで、合計費用としては、 リフォーム・リノベーション組が、30万円×20世帯の600万円。 一斉更新組が45万円×20世帯の900万円 で合計1500万円です。表②
さきほどの、各自更新ケースでのシミュレーションでは3080万円だったので、約半分の費用ということですね。各自更新ケースでは、この時点でまだ12世帯が未更新として残っているので、築70年経過しても更に住み続けるということであれば、今後、未更新の世帯の更新費用や賠償費用も必要となることをご留意ください。 あくまでシミュレーションですが、今までご相談を受けている数多くのマンションの傾向を見ると、あながちはずれてはいないといえます。 それから水漏れリスクについては、一斉更新後は、ほぼリスクがなくなるため各自更新ケースよりはマンションの資産価値も高くなると言えます。 また、シミュレーション結果では、各自更新ケースでは3080万円で更新励行ケースではその約半分の費用になりますから、更新励行ケースでは修繕費用の大幅な節約になります。 築70年までに必要となるそのほかの修繕に資金を回すことができます。 総合的に比較して、更新励行ケースのほうが、安心してマンションライフをお過ごしいただけるのではないでしょうか。 今回は、あくまで給湯管が銅管のケースでの話です。他のマンションでもやみくもに更新を励行するのが正解かというと、漏水リスクが低い材質の配管に関しては、一斉に更新するのではなく、部分補修の考え方を取り入れたほうが望ましい場合もありますので、ご注意ください。 今回のシミュレーションのようなことを実行するには、冒頭にも述べましたが、管理規約の変更、更新済みの区分所有者への返金方針、一斉に更新する際の各世帯単位での費用の違いの取り扱い、内装の復旧費用の取り扱い、一斉更新の前に、リフォーム・リノベーションする世帯のチェック体制等、さまざまな課題があります。 このあたりは、また別の投稿記事で、改めてお話する予定です。