2020年11月22日
この記事のカテゴリー : 延命工法
築年数が経ったマンションでは、排水管の漏水対策としてライニング工法を検討されている場合も多いと思います。 単にライニング工法といっても、研磨の仕方や塗布の仕方で、その後の配管保全費用に大きな差が出てきます。 ライニング工法でしっかりと研磨や塗布ができていれば、将来的に高額な配管の取替えを行う必要がなくなる場合もあります。 見過ごされがちですが、費用面で大きな差を生みますので、この投稿では、ライニング工法の研磨と塗布について、お話します。
まず配管の研磨では、配管内の錆びがどれだけ除外できたかが重要なポイントになります。残ってしまった錆が、配管の寿命に大きな影響を与えるからです。
図のように「研磨 1方向のみ」の場合、研磨後も配管に錆がかなり残ってしまう場合が多いといえます(図上右側)。配管の表面は残った錆びで凸凹になっているので、上から樹脂を塗布しても、樹脂は剥がれやすく、更生工事をした意味がなくなります。
工法によっては、研磨は1方向からのみしか行いません。配管の劣化状態にもよりますが、通常は2方向実施するほうが望ましいと言えます。せっかく更新工事をするのですから、錆の研磨方法は事前にしっかりチェックすることが必要といえます。
また、研磨する方法として、珪砂やセラミックス、天然石を用いますが、研磨材がもろいと、錆びの硬さに負けて十分に研磨できない場合もあります。 研磨材として何を使用しているのかについても、しっかりとチェックすべきです。工法によっては、研磨を十分に行うために専用の研磨用ノズルを使用する場合もあります。
研磨終了後の検査ですが、配管の状態を内視鏡で検査する工程が入っているのかどうかも重要なチェックポイントといえます。 どの工法でもたいていは10年間の保証がついていますが、実質的な耐用年数は、この研磨工程をきちんと行ったか否かで大きく左右されます。時間と費用とのバランスもありますが、より耐用年数を延ばしたいと考えているマンションでは、このチェックは大切な工程といえます。
塗布回数については、主流の工法の多くは2回実施となっています。特殊継手等に対しては3回塗布する工法もあります。
圧力形式についてですが、塗料を配管内に塗布するにあたり2つの圧力の掛け方があります。 配管内に圧力を掛ける正圧(噴射)方式と、配管内の空気を吸引して負の圧力を発生させる負圧(吸引)方式です。正圧方式では、配管にピンホール等があると、塗料がピンホールから漏れ出てしまいます。その場合は、ピンホール部分の配管を取替えるといった予期せぬ費用負担が必要となります。 築年数が30年以上で、配管の劣化が進んでいるマンションでは、負圧(吸引)方式を選択するのが望ましいといえます。 なお、施工業者によっては、築30年以上の場合は、専有部の枝管のライニングは行わないといった基準を設けている会社もあります。
塗布方法については、気流、ボール、ピグ、パラシュート等の種類があります。排水管には、「ソベント継手」、「セクスチュア継手」、「コアジョイント継手」といった特殊な継手があり、ピグやパラシュートを用いるほうが、そういった特殊な継手に対応可能なケースが多いといえます。 自分のマンションにそういった特殊な継ぎ手があるのかどうか、ある場合は、その継ぎ手への塗布も問題なくできるかどうかを業者に確認する必要があります。
利用する塗料は、エポキシ樹脂のほかいくつかの種類があります。どれもふたつの液体を現場で混ぜ合わせて使うのですが、、季節や気温によって樹脂が硬化する速度が異なります。適切な工程管理をしないと、樹脂がうまく配管に塗布されない場合があるので、現場で対応する作業員はきちんと研修を受けているかどうかについても確認すべき項目といえます。 なお、工法によっては、無機抗菌剤を塗装することで、施工後数年間は高圧洗浄をほとんど実施しなくても良くなるような工法もあります。
塗布後には、通水テストだけでなく、以下のような検査も行われるかどうか、保証期間後の実質的な耐用年数に大きく影響してきますので、事前にチェックしておきましょう。
塗布後の検査項目
・塗膜の厚さと硬度が十分か ・ピンホールが出来ていないか
排水管内を樹脂で塗布するライニング工法ではなく、排水管の中に新たにパイプを作る反転工法もよく採用されています。 専有部の横引き管ではなく、共用部の立管に用いられる工法です。
共用部の立管と専有部の横引き管との接続部分については、遠隔操作のロボットによる施工や、横引き管を更新する際に、手作業で施工するといった方法が用いられます。 集合管継手では施工できないといった制約条件がありますので、このあたりは各業者にご確認いただければ、対応可否がわかります。
各工法で保証期間は5年~10年とさまざまですが、条件が合えば、施工後20年間の保証を行う工法もあります。
現在では10年間といった保証期間が標準的といえます。先ほども述べましたが、実質的な耐用年数が20年~40年と言及している工法であればなおさら、研磨や塗布後の検査については、十分に確認しておくことをお勧めします。
築40年あたりで、排水管から水漏れが始まっているが、更新工事を行うための修繕積立金がたまっていないので、どうしたらいいかとお悩みになっているマンションは多いといえます。そういったマンションでは、築何年まで住み続けるかといった将来の方向性について合意できていないことが多く、最適な保全工法を見いだすのが、難しい状況と思われます。
配管保全センターでは、共用部、専有部の給水・給湯管、排水管について、更新・更生・延命装置のうち、どの方法を選択するのが良いのか、配管保全の最適化をご提案しています。
更生工事を実施する際に、排水管用の延命装置をご提案する場合もあります。延命装置との併用で配管の実質的な耐用年数を延ばし、将来、更新工事を行う必要がなくなる可能性もあります。
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