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築20年未満の排水管立管 縦割れで水漏れ事故急増! 予防と対応策

2025年9月27日
この記事のカテゴリー : 排水管の保全

最近、築20年前後のマンションの管理組合の理事の方々から、鋳鉄管の排水管の漏水に関するご相談が増えています。

早い所だと築20年に満たないマンションからのご相談もあります。

鋳鉄管は、半永久に持つとは言われていたのに、いったいどういうことでしょうか?

今回は、なぜこのような排水管の破損が起きているのか、対応としてどのようなことが考えられるのかについてお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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急増する鋳鉄管の漏水相談

鋳鉄管排水管の劣化に関するご相談は、築50年前後の場合と、築20年前後の場合の2つの年代のマンションからが目立ちます。

まず、築50年前後のマンションでは、立管ではなく排水管の横引き管がボロボロになったというご相談がとても多いです。

一方、築20年前後のマンションでは、排水管の立管が縦にざっくりと割れてしまうケースがとても多いです。

この場合、低層階でディスポーザーを使っていないところからもありますが、タワーマンションでディスポーザーを各住戸で使っているところからの相談例が多いです。

半永久だと言われていた鋳鉄管でも、築50年を過ぎると経年劣化で漏水が始まるというのならまだわかりますが、なぜ築20年程度で漏水が発生するのでしょうか。

考えられる原因

鋳鉄管の劣化については、様々な要因が複雑に絡み合っているので、これが唯一の原因だと言い切るのは、難しいと言えます。

それでも、有力な原因の一つと考えられるのは、「微生物腐食」という現象です。

排水管の中には、日常生活で流される食べ物のカスや油分などが少しずつ蓄積されますが、これらの滞留物に、バクテリアなどの微生物が繁殖して、硫化水素などの腐食性ガスが発生します。

この硫化水素は鋳鉄を内側から腐食させます。また、硫化水素を好むバクテリアも繁殖することで、硫化水素から硫酸が生成され、さらに鋳鉄管を腐食させるのです。

これが「微生物腐食」と呼ばれる現象で、早いスピードで配管を劣化させる原因となります。

特に、タワーマンションではディスポーザーが使用されていることが多く、そのため、食材が排水管内に蓄積しやすく、排水管内が微生物の温床となりやすい傾向にあると言えます。

また、地盤沈下により屋外の排水管が逆勾配になってしまい、排水が滞留しやすくなっているケースも見られます。

これらの複合的な要因により、築20年程度のマンションでも深刻な排水管の劣化が引き起こされていると考えられます。

診断方法とその限界

排水管立管の縦割れで漏水を起こしたマンションの管理組合さんからは、「他の場所でも同じように縦割れが起きそうなのか、内視鏡で排水管の中を見て確認したい」という相談もよくいただきます。

ただ、実際には排水管内は汚れが付着しているため、内視鏡で見てもほとんど状況は把握できません。

もし内視鏡調査を行うとすれば、定期的に実施する高圧洗浄の直後に、同じ業者に依頼するのが効率的です。

ただし、それでも配管の状況を正確に把握できるかどうかは微妙なところです。

特に、排水管が各住戸のトイレの裏やキッチンの横の壁にある場合は、外から排水管の状態を確認するのは、点検口があったとしても難しいと言えます。

水道メーターやガスメーターがあるパイプシャフトの中に、排水管の立管が見える場合は、外見から縦割れしていないかを目視できる可能性はあります。

他の診断方法としては、超音波による肉厚測定があります。

これは配管の厚みを測定して劣化具合を判断する方法ですが、露出している部分しか測定できないという制約があります。

その他にも、硫化水素濃度を測定して縦割れをしていないか確かめる方法もあります。

排水管の立管の掃除口を開けて、専用測定器を使って硫化水素濃度を測定します。

縦割れを起こしている場合は、硫化水素濃度が通常より高い傾向があり、それにより、他の立管でも縦割れが起こりそうかどうかをある程度、予測できますが、あくまで予測の範囲となります。

予防策と対応方法

では、このような問題を防ぐためには、どのような対策が有効でしょうか。

まず、日常的にできる予防策として、ディスポーザーの使い方を見直すことが重要です。

何でも処理できるからといって、何でもディスポーザーに流してしまうのは避けた方が良いでしょう。

特に卵の殻は絶対に流さないようにしてください。卵の殻は通常の高圧洗浄では流れにくく、配管内に蓄積して微生物の温床となりやすいからです。

定期的な高圧洗浄も重要な予防策の一つではありますが、それだけで十分とはいえません。

また、屋外が地盤沈下して排水管が逆勾配になっているような場合は、土木作業も伴い、かなり高額な工事費用となることが多いです。

漏水事故発生時の対応と費用

実際に漏水が発生した場合の対応についてお話しします。

基本的には、一斉更新と部分補修の2つの選択肢があります。

どうせいずれは更新が必要になるのであれば、思い切って耐火VPなどの新しい配管材料で一斉更新してしまうという考え方もあります。

一方で、当面は漏水発生のたびに、部分補修で対応していくという方法もあります。通常はこちらになることが多いです。

特定の階の見えている範囲で縦割れをしているのであれば、その部分だけ取替えればいいので、取替え費用としては、10万円前後となると思われます。

漏水が起きるたびに部分補修するのは、必要最低限の補修費用で済むとも言えますが、緊急で対応する必要があり、ボリュームメリットも得られないので、工事費用は最終的には割高になります。

また、部分補修するたびに、同系統の上の階の住戸は断水となるので、生活上の不便さが増します。

一方、一斉更新をする場合はボリュームメリットも得られ、複数業者から相見積もりを取り、業者選定の時間も十分とることができます。

断水も一斉更新の期間のみとなります。

ただし、一度に高額な工事費用が必要となるので、他の大規模修繕をできなくなったりと、悩ましいところではあります。

ここ3年程度は、年間10%ずつ程度、工事費用の値上がりが続いており、今後もこの傾向は続くと思われるので、資金的な余裕があれば、早めに一斉更新をするほうが長期的には工事費用を抑えられる可能性はあります。

よくお問合せで、「マンションの開発を行った業者に、瑕疵対応として配管取替えを無料で行わせることはできないか?」とご質問いただくことがあります。

瑕疵対応というのは、施行業者が行った工事に不具合があり、その問題に対応するということですが、築20年前後で発生するトラブルのため、そこを掘り起こすのはなかなか難しい状況のようです。

 

 

今回は築20年前後のマンションで発生している鋳鉄管の縦割れ問題について解説しました。

重要なポイントをまとめると、第一に微生物腐食という劣化要因が従来の予想を超える速度で配管を劣化させていること。

第二に完璧な診断方法は存在しないということ。第三に予防策として日常的なディスポーザーの使い方の見直しと排水管の定期メンテナンスが重要であること。

そして最後に、問題が発生した場合は早期対応が費用面でも有利であることとなります。

理事会の皆様には、これらの情報を参考に、お住まいのマンションの状況に応じた適切な判断をしていただければと思います。

配管保全センターでは、今後もマンションの配管に関する最新情報をお届けしてまいります。ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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