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資材・人件費 値上げラッシュ!! マンションの修繕費用 賢い見積りの取り方
2023年4月7日
この記事のカテゴリー :
給排水設備の更新費用
昨年2022年の3月に、配管保全チャンネルでは、下の2つの投稿記事を公開いたしました。 ◆原材料乱高下 半導体不足 マンションの配管材料の値上げ事情 2022年3月20日公開 ◆給水ポンプ不足‼ 今すぐしておくべきこと 2022年3月27日公開 あれから、1年経過しても、給水ポンプ不足、資材や人件費の値上げラッシュは続いています。
マンションの修繕の中でも放っておくと生活に支障をきたすことになるのが給排水設備の不具合ですが、これらの修繕費用も、さらに値上がりしていくことが予想されます。 問題となるのは、理事会で給排水設備の修繕を検討するにあたり、業者から見積りを取得しても、実施までに1年以上かかるといったようにタイムラグがあることです。 総会で実施が確定するまでに値上がりしそうということであれば、見積りを出す業者としては、値上がりをある程度、想定した高めの見積り額で提示せざるをえないですね。 管理組合としては、予想できない値上がり分を上乗せされた見積りを提示されても、困ってしまいます。 今回の投稿記事では、どのように見積りを取れば、今後も続くであろう給排水設備の修繕費用の値上げに対応していけるのかということについてお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。
動画
資材と人件費の値上がり状況
それでは、まず給排水設備の修繕費用の値上がり状況について、わかりやすい例を見ていきましょう。
材料費の値上がり状況
最近では、給排水管の取替え工事では、錆びやすい鉄管系でなく、錆びない樹脂系の配管に取替えることが多いのですが、樹脂系の配管の中でもよく使われる塩ビ管の値上がり状況はどのようになっているでしょうか。 塩ビ管は、原油から作られた塩ビ樹脂を原料に製品化されますが、塩ビ樹脂がどれくらい値上がりされたか、「塩ビ樹脂の値上がり推移」というわかりやすいグラフが日本経済新聞の記事に掲載されていたのでそちらをご覧ください。 左側のグラフは、塩ビ樹脂の価格が1980年以来41年半ぶりに最高値を更新したという内容です。右側のグラフは、2021年からも値上がりが何度も行われており、21年初めに比べてさらに5割値上がりしたことが示されています。 短期間のうちに、何度も値上げが行われているというのがよくわかります。
分譲マンションでは、工事業者から配管の取替え工事の見積りが提示されてから、理事会で他社との比較を行い、そこから総会で可決されるまで数カ月から場合によっては1年以上かかる場合もあります。 業者の立場からみると、その間にどんどん資材が値上がりしていくので、気が気じゃないわけです。 従来は、どの業者も、見積り期限を3カ月に設定するところが多かったのですが、今は、1カ月以内にしている業者が多いです。 給水ポンプの値上がりも、いまだに数カ月に一度といった頻度で続いており、業者としては、値上がりが怖くて、何カ月も先の工事の見積りをお客さんに出せないと思っているところが多い状況です。 塩ビ管や給水ポンプ以外でも、程度の差はありますが、給排水設備関連の資材はどれも値上がり傾向にあると言えます。 今後も、値上がりが続くかどうかは、何とも言えませんが、なかなか値上がりはおさまらないと思っている関係者が多いようです。
人手不足による人件費の値上がり状況
それでは、次に、人手不足による給排水設備工事の人件費の値上がり状況についてお話します。 配管工事の人件費の推移のグラフは見つけられなかったのですが、別の視点で今後の人件費の値上がりを推測できるわかりやすいグラフがありましたので、そちらをご覧ください。 下は、大工さんの人口の年推移を示しています。マンションの専有部の給水管、給湯管、排水管を取替える際には、壊した床や壁を内装復旧する必要がありますが、その際に、大工さんに頼むことになります。専有部内でかかる人件費は、配管工の人件費もありますが、内装復旧を行う大工さんの人件費の割合のほうが多いと言えます。 グラフの2015年までの実績は総務省の国勢調査に基づいた数値です。2020年以降は、野村総研の予測ですが、総務省の最新データでは、2020年の大工さんの人口は29万7900人ということで、ほぼ予測通りという感じです。 1985年の81万からは6割以上の減少となっており、若手のなり手不足、ベテランの引退が主要因で、これらの人手不足により人件費が上がってきています。また大工さんの高齢化に伴い作業スピードが遅くなり、工事の必要日数も以前より多くなってきているということも、工事費が値上がりする要因となっているといえます。
人件費の値上がりには別の要因もあります。 それは、海外の技能実習生が日本ではなく、より雇用条件のいい韓国、オーストラリアといったところで職につくことが多くなってきていることです。今後、マンションの給排水設備の修繕工事はますます需要が高まる傾向にありますが、そのマンパワーとして技能実習生の必要性も高まっています。 技能実習生が他の国ではなく日本で働くようにするには、雇用条件の見直しが必要となり、人件費が上がる要因につながっていくと思われます。 どこの現場でも人手不足で、人件費を2、3年前よりも3~5割上げても、なかなか職人が集まらないという状況が顕著になってきています。 資材や人件費が例えば5割上がると、工事費全体では2割程度の値上がりとなり、無視できない値上がり幅だと言えますね。
見積り取得のタイミング
数カ月単位で、無視できない値上がりが続いてる状況で、管理組合としては、どのような見積りの取り方をすればいいでしょうか。 見積り提示から受注まで、数カ月から1年以上かかる現状で、仮に、管理組合が「最初の見積り額から一切、値上げは認めません」と言ったとしたら、業者はどう反応するでしょうか。 ひとつは、怖くて見積りを提示できないので、辞退するということですね。 もうひとつは、今後、どれだけ値上がりするかわからないので、大幅な値上がり幅を見込んで、上乗せして見積りを提示するということです。 ということで、管理組合としては、業者に最初に見積りを提示してもらってから、下の図のようなタイミングで、その都度、見積りを再提示してもらうほうが、よりその時点の実情にあった見積りを取得できるといえます。 業者には、「決定まで時間がかかりますが、必要に応じて値上がり分を反映するための再見積りを提示することが可能ですので、値上がりを見込んだ見積もりにしないでください」と伝えておけば、より適正な見積りをとることができます。 手順として、まずは、複数の業者に声をかけて、最初の見積りを取ります。その後、1次選定を行って業者を2、3社に絞り、見積り期限が過ぎていたら、値上げ分を反映した再見積りを依頼します。
総会までに時間がかかった場合は、再再見積りの依頼をしたほうがいいときもあります。 総会直前の理事会で、総会に議案として挙げる見積り額が確定されますが、総会から発注までにさらに時間を要する可能性がある場合は、若干の予備費を確保しておいたほうがいいかもしれません。 部材や人件費等の値上がり分は、その予備費の中で賄われるとなれば、業者は安心して適正価格での見積りを提示できるようになります。
見積り額を適正にするいくつかのポイント
なお、見積りを取り直すだけではなく、その他にも見積り額を適正にするいくつかのポイントがあります。 まず、管理会社から紹介された業者の見積りだけはでなく、理事や住民自ら他社に見積り依頼をすることが望ましいです。 また、何度かお伝えしてきましたが、給排水設備の修繕工事は、大規模でも単純なケースが多いので、ほとんどの場合は、余計なコストとなる設計コンサルは不要だと考えています。
それから、最近は、工事会社が倒産した場合でも不具合対応の費用を保険でカバーできる瑕疵保険がありますので、業者選定時に、業者が瑕疵保険に加入しているかどうかの確認は必要ですが、資本金が5千万円以上であるといった選定条件は不要になってきています。 また、すでに漏水が始まっているマンションでは、融資を受けてでも早めに工事を実施したほうが良い場合もあります。融資の金利よりも値上がり率のほうが高い可能性もあるからです。このあたりは、最終的には管理組合での総合的な判断になるでしょう。
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