2019年7月27日
この記事のカテゴリー : 配管に関する知識
著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大
国交省の調査結果から「築年数ごとの水漏れ事故発生確率」と「大規模計画修繕工事の実施割合」を抜粋して表にすると、興味深い対比がありましたので、以下の表を基に見ていきたいと思います。
築年数ごとの水漏れ事故発生確率と大規模計画修繕工事の実施割合
出典:平成30年度マンション総合調査結果「分譲マンション内でのトラブルの発生状況」(302ページ目・337ページ目)を抜粋
表の左側が「築年数ごとの水漏れ事故発生確率」です。築24年では23.1%ですが、築年数が経つに従い年々水漏れトラブルの割合は増え、築44年までで、なんと50%以上のマンションで水漏れが発生しています(赤色部分)。
表の右側には同じく築年数ごとに行われた「大規模計画修繕工事の実施割合」として、給水設備工事・排水設備工事・外装塗装等工事が行われた割合が示されています。これによると、外壁塗装などの工事は築年数に関わらず80%以上で行われており、築49年まででほぼ90%以上のマンションで行われていることが示されています(青色部分)。
それに比べて、給水設備工事・排水設備工事は築39年~49年で20%台と低い数字に留まっています(灰色部分)。給水設備工事・排水設備工事とは給水管・排水管の取り換え工事などを指しますが、これらが行われている割合は、外装工事などに比べるとたいへん低いことがわかります。
このことから、年ごとに増える水漏れの発生確率は、給排水設備の修繕工事の実施率が極端に低いことが一因とも考えられるのではないでしょうか。水漏れ事故を防ぐためには、給排水管の取り換え工事や代替手段となる延命保全工事の実施が急務といえるのではないでしょうか。
この調査結果では、「水漏れ」とひとくくりにされていますが、特に専有部といわれる住居内の給水管・排水管は肉厚が薄くて細く、共用部の給排水管よりも水漏れトラブルの発生頻度は高くなっています。
また、配管の劣化ということをイメージしていただくために、下のイラストで錆びによる配管の腐食のスピードを例として8年ごとに表わしました。腐食により配管の肉厚が薄くなり、貫通してしまうと水漏れが発生してしまいます。
さらに、認識を新たにしていただきたいのは、修繕積立金は共用部のみ適用されるのが原則であるということです。管理規約に「専有部の配管の保全にも適用される」といった記載があれば専有部にも修繕積立金を使うことができますが、専有部の横引き管で水漏れが起きた場合、区分所有者は専有部を自腹で改修する必要があり、その金額は思ったよりもずっと高額になるケースが多いといえます。給水管・排水管の設置状況にもよりますが、50万円から100万円以上(自社調べ)を個人で改修しなければならない場合もあります。
また、水漏れを起こした部分の配管の交換費用は、原則としてマンションの火災保険は適用されないということも知っておいていただきたいと思います。ほとんどの場合は事故を起こした住民が高額の出費を強いられることになります。
修繕積立金が不足している管理組合さんが多いなか、水漏れ対策として延命工法による給水設備工事・排水設備工事が検討されています。延命工法では専有部の給水管・排水管を含めた配管の保全が行うことができます。また、コストも抑えられるため、修繕積立金の節約にもなると注目されています。