2026年2月3日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

しかし、ここに来て、マンションを取り巻く環境は激変しています。かつてない「三つの向かい風」が吹いています。
一つ目は、「建物と住民の老い」です。住民の皆さんが高齢になり、年金生活世帯が増え、管理組合の資金力は細っていくー方です。
また、先週の投稿記事でも速報でお話しましたが、1月22日の最高裁の判断で、外壁や屋上からの経年劣化が原因の雨漏り等による被害は、今までは賠償責任の所在が曖昧でしたが、占有者である管理組合が賠償責任を負うということが明確にされました。
雨漏りは保険適用も原則的には難しいため、管理組合にとっては頭の痛い話がまた増えたこととなります。
それから、二つ目の向かい風としては、「インフレ時代の到来」です。
工事費も材料費も高騰し、「直すお金はないのに、直す費用は激増する」という苦しい状況です。
そして、三つ目。これが、まだあまり認識されていない問題で「2025年、2030年問題による『大相続時代』の到来」です。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年を皮切りに、2030年にかけて相続の発生件数は激増していきます。
相続するお子さん世代は、すでに別の場所に自宅を持っていることが多く、もし、相続したマンションが、配管も古く、漏水リスクがあり、カビ臭いというような状態だったらどうでしょうか?
「住む気もないし、売ろうにも売れない。貸すにしてもリフォーム代がかかる」そうなると、相続放棄されたり、所有者不明のまま放置されたりして、「空室」になります。
空室が増えれば、管理費や修繕積立金が入ってきません。
管理組合は資金不足で管理ができなくなり、さらに環境が悪化し、退去者は増える一方。これが、マンションが「スラム化」していく負のスパイラルです。
このスパイラルを断ち切り、「安心して住み続けられるマンション」「新たな入居者に選ばれるマンション」になるためには、「配管の保全」は最重要課題といえます。
「配管は見えないし、そこまで気が回らなかった」と、手付かずのまま放置するわけにはいかないです。
それは、「このマンションに、あと何年住み続けるのか?」を住民間で議論することです。
もちろん、「あと20年で解体する」とか「築60年で更地にする」といった結論を、住民全員の合意で決めるのは非常に難しいです。
「あと、20年やそこらで更地にするなんてとんでもない!」という反対意見も出るでしょう。
かといって、「建替え」ができるかといえば、昨今の建築費高騰や容積率の問題で、現実的にそれはめちゃくちゃ難しいことといえます。
ということで、あと何年住み続けるのかという結論は出せないことが多いと思います。
でも出なくてもいいんです。この議論をすること自体がたいせつで、この議論をすることで一つの「現実」が見えてくるからです。
「更地にする合意も取れない、建替えも難しい。……ということは、なんだかんだで、私たちはこのマンションにあと30年、築70年を超えるくらいまでは住み続けることになるんじゃないか?」
このように何年も先の未来を想定することがとても大切なのです。
「あと数年」ではなく、「あと30年住む」と想定した瞬間、景色が変わります。
「築40年の今でも漏水が始まっているのに、あと30年も専有部の配管を放置して、漏水だらけにならないの?」「そんな状態で、本当に安心して暮らせるの?」
この課題を住民間でシェアすること。「この先も住み続けるなら、対策を打たないと、大変なことになる」という共通認識を持つこと。
これがあって初めて、次の「2つの意思決定」の重要性が、住民の皆さんの心に刺さるようになります。
漏水リスクだけで見れば、共用部よりも、各家庭の「専有部配管」のほうが圧倒的に高いのです。
しかし、専有部の配管は原則、個人に管理責任があります。
ここで、「個人の責任だから組合は一切、関知しない」と突き放すとどうなるでしょうか。
先ほどお話しした通り、漏水事故が多発し、新たな入居者は期待できなくなり、スラム化に向かう可能性が高くなります。
ということで、組合としては、少なくとも以下のどちらかの方針を決めることをお勧めします。
築40年ともなれば、そのあとの30年間で、直さなければならないのは配管だけではありません。
1月22日の最高裁の判断で、特段の事由がないかぎり、外壁や屋上からの雨漏りは、管理組合が賠償責任を負うことになり、保険適用も難しいので、この修繕対応が必要です。
また、エレベーターの取替え、窓やサッシの取替え、さらに、住民の高齢化に伴って「バリアフリー化」も出てきます。
これら全てをやろうとしているのに、時代は「インフレ」です。工事費は右肩上がりで高騰しています。
修繕積立金は、これら全ての工事を賄えるほど、本当に余裕があるでしょうか?
毎月の積立金の金額を値上げしようとしても、猛反対されることが多いです。
そんなギリギリの状態の中で、これまで通り、管理会社や設計コンサルタントに全て任せきりにしていて、本当にいいのでしょうか?
彼らは立場上、どうしても「自分たちが責任を負わないで済む安全側」の提案、つまり高額な仕様の工事を提案しがちです。
「プロに任せておけば安心」と思考停止していると、本当に必要な時にお金がない、ということになりかねません。
今こそ、住民自身が賢くなり、「無駄な費用はー銭も使わない」という強い意思を持つ必要があります。
その上で、お金がない中でどう戦うか? 配管の保全に使うお金が潤沢ではないという場合は、「配管の延命装置」の活用による部分補修といった選択肢も視野に入ってきます。
延命装置の導入により、配管の漏水リスクをできるだけ下げて、本当に危険な箇所から優先順位をつけて、部分的に配管を取り替えたりといった柔軟な対応が可能になります。
ただ、世の中の延命装置は効果が疑わしいものも普及してしまっていますので、装置の選定は慎重に行う必要があります。
いずれにしろ、「お金がないから諦める」のではなく、「お金がないからこそ、管理会社やコンサル任せにせず、リスクをコントロールしながら、部分更新をしていく」。
あるいは、「他の修繕を削ってでも、借金をして今すぐ全更新する」。
このどちらでいくのか。「あと何年も住み続ける」と決めたのなら、どちらかの対策を必ず検討すべきです。これが意思決定②です。
最近は、危機感を持った理事が一人で頑張って方策を提案しても、他の理事や住民は「笛吹けど踊らず」で、危機感を持った理事が疲弊し、あきらめてマンションを売却して脱出してしまうケースがかなり増えています。
意識の高い人がいなくなれば、残されたマンションのスラム化は加速するだけです。
そうなる前に、まずはこの投稿記事の内容を理事会で共有し、議論のテーブルに乗せてください。
「決められない」からこそ、「話し合う」ことが必要です。話し合えば、「放置はヤバイ!!」ということに、多くの住民が気づくはずです。
