勉強部屋

「超高額な配管工事の議案書」が出された際の対応マニュアル
第1部 総会前編 「証拠集め」と「意見書」で応酬!

2025年11月26日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

先日、配管保全チャンネルで、「【実録】排水管工事で2.5億円の水増し請求!? 相見積もりを拒否する管理会社の手口とは?」という投稿記事を公開しました。

この投稿記事をご覧になった多くの管理組合の方から、切実なお問い合わせをいただきました。

「仕組みはわかった。でも、まさに今、うちのマンションがその状態なんです」 「相見積もりもなく、説明会もろくにないまま、来週の総会で2億円の配管工事が決まろうとしています。どうすればいいですか?」

今日は、そんな「まさに今、危機に直面している」住民の皆さんのために、投稿記事を作成しました。

テーマは、総会直前に「超高額な配管工事の議案書」を出された場合に、住民の皆さまがとるべき「理事会・管理会社・設計コンサルの暴走を止める、具体的なアクション」です。

ある日突然、ポストに入っていた議案書。そこには「配管取替工事 一式 2億円」の決議が次の総会でされることが決まっていました。

「おかしいな」と思っても、「もう2週間後が総会だから間に合わない」「素人の私には何もできない」と諦めていませんか?

たとえ総会まで時間がなくても、あるいは総会で決まってしまっても、さらには業者と契約してしまった後でも、まだその工事を止められる可能性はあります。

皆さんの大切な修繕積立金、一戸あたり百万円単位のお金が無駄に消えていくのを、食い止める方法は残されています。

今回からの3回シリーズで、不当に高い工事費から皆さんの資産を守るための方法を、「総会前」「総会当日」「総会可決後・契約後」という3つのフェーズに分けて、お話します。

億単位の金額ではなく、千万円単位の工事であっても、同様のことはできます。ほとんどの管理組合さんに有益な情報となりますので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜ、いきなり高額な議案が出てくるのか

具体的な対策に入る前に、相場よりも倍近く高いといえる高額な見積もりが、なぜ説明もなくいきなり出てくるのでしょうか?

多くの場合、それは「理事会」が「管理会社」や「設計コンサルタント」「施工会社」と癒着しているからといえます。

本来、皆さんの味方であるはずの理事会や設計コンサルタントが、裏で施工業者と手を組んで、出来レースを行っているからです。

その場合、「説明会」すら開かれずに、総会での決議が押し切られることも多いです。

例えば、100世帯のマンションで、相場なら1戸あたり100万円、合計1億円で済む工事が、1戸あたり200万円、合計2億円になっていたらどうしますか?

差額の1億円は、ある意味、皆さんの財布から不当に抜き取られているのと同じです。

この1億円を取り戻すために、今からお伝えするアクションを実践してください。

第1フェーズ:総会開催「前」のアクション(前半)

まず、議案書が届いてから総会当日までの期間です。

標準管理規約上は2週間しかありません。

ここでやるべきことは、「証拠集め」と「情報拡散」の2つです。

アクション1:独自の「証拠」を手に入れる

単に「高い気がする」と総会で声を上げても、「素人の意見だ」「専門家であるコンサルが決めたことだ」と一蹴されてしまいます。

相手を黙らせるには、客観的な数字が必要です。

可能であれば、今の議案書にある見積もりのなかで、工事項目や数量はそのまま残し、「金額」の欄だけを空白にしたものを作ってください。

これを専門用語で「金抜き見積書」と呼びます。これを、知り合いの業者や、ネットで見つけた地元の業者に見せて、「これと同じ条件なら、いくらでできますか?」と聞いてみてください。

「相場より明らかに高い」という事実を、数字で手に入れることが重要です。

区分所有者は管理組合の運営状況について関心を持ち、調査する権利があります。

理事でなくても、独自に見積もりを取ることを禁止する法律はありません。

ただ、ここで厳しい現実があります。総会までは、標準管理規約上はたったの2週間しかありません。

優良な施工業者ほど現場が忙しく、そんな短期間では見積もりを出してくれない、あるいは「現場を見ないと出せない」と断られる可能性が高いでしょう。

もし、総会当日までに見積もりが間に合わなかったら、そこで終わりでしょうか?

いいえ、諦める必要はありません。

その場合は、「価格」ではなく「プロセス(手続き)」を攻める戦法に切り替えてください。

証拠が出せないなら、無理に「高いはずだ」と主張しなくてもいいんです。

その代わりに、こう主張してください。

「私個人でも何社か当たりましたが、2週間では短すぎて見積もりが出せないと言われました。

プロの業者でも時間が足りない検討を、素人の私たちがたった2週間で判断できるといえるでしょうか?

比較検討の時間も材料も足りていません。

この状態で数億円の決議をするのは無責任です」

つまり、「高い」ことを証明するのではなく、「比較できていない(から決められない)」という事実を突きつけるのです。

これなら、見積書が手元になくても、正論として戦えます。

アクション2:「意見書」を全戸に配布する

次に、その事実を住民全員に知らせます。 ここで、「意見書」や「質問状」を作成し、全戸のポストに投函します。

ここで、非常に重要な注意点があります。

いくら正しいと思えても、「理事長は業者と癒着している!」「詐欺だ!」といった、感情的な言葉は絶対に書かないでください。

逆に「名誉毀損」で訴えられるリスクがあります。書くべきは「事実」と「疑問」のみです。

もし見積もりが間に合わなかった場合は、こう書きます。

「議案書の工事費は2億円ですが、これはたった1社の言い値です。

もし、時間をかけて相見積もりを取れば1億円で済むとしたら、私たちは『比較検討しなかった』というだけで、一戸あたり100万円をドブに捨てることになります。

わずか2週間の検討期間で、このリスクを受け入れていいのでしょうか?」 このように、「損すると決まった」のではなく、「みすみす損するリスクを放置していいのか?」と問いかける内容にしてください。

これなら嘘にはなりません。

ここで、強くお勧めしたいポイントとして作成した意見書を配布する前に、必ず一度、弁護士のチェックを受けてください。

「弁護士なんて頼んだら何十万円も取られるんじゃないか」と心配される方もいるでしょうが5,000円から1万円程度で済ませる方法があります。

具体的な依頼先は、

•「弁護士ドットコム」などの検索サイトで探す

•お住まいの地域の「弁護士会の法律相談センター」に電話する

このどちらかがお勧めです。

相場はだいたい30分5千円程度です。

予約の電話やメールで、「A4一枚の意見書を作りました。

これを正式な添削依頼として出すのではなく、30分の法律相談の時間内で、その場で先生に読んでいただき、口頭でアドバイスをいただきたいです」こう言えば、高額な手数料はかからず、単なる「タイムチャージの相談料」だけで済みます。

また、「この数千円は自腹なの?」とモヤモヤする方もいるかもしれません。

結論から言うと、後日あなたが理事になってから、総会の承認を得れば、管理組合から返金してもらうことは法的に可能です。

ですが、「数千万円、あるいは億単位の損害を防ぐために、私が身銭を切って1万円の相談料を払いました」こう言ってみてください。

数千円を請求するよりも、「この人は自分の身を削ってまでマンションを守ってくれた」という圧倒的な信頼を得るほうが、今後の改革を進める上で、お金には代えられない強力な武器になるかと思います。

この数千円は、あなた自身を守り、そして住民の信頼を勝ち取るための、安い「必要経費」という考え方ができると考えます。

さらに、意見書の中に「本意見書の内容は、弁護士のリーガルチェックを受けて作成しています」という一文を入れることができれば、理事会側も迂闊に手出しができなくなります。

次回予告

さて、意見書をポストに入れたからといって、安心してはいけません。

むしろ、ここからが本当の勝負です。ポストに入れただけでは、多くの人は「ふーん、何か揉めてるな」程度で捨ててしまうか、そもそも読みません。

次回の投稿記事では、配布した意見書を武器に、具体的にどのようにして仲間を増やし、そして、総会当日には、どのように理事長や管理会社の策略を封じるのか? 

その具体的な「会話術」と「キラー質問」の仕方についてお話しします。

あなたの勇気が、マンションを救う第一歩です。 それでは、次回の投稿記事でお会いしましょう。  
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