2019年7月27日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い
著者:配管保全センター㈱ 代表取締役 藤田崇大
国交省が報道発表した平成30年度のマンション総合調査によると、修繕積立金が不足しているマンションの割合は34.8%で、長期修繕計画に対して20%超の不足となっているマンションの割合は15.5%となっています。
また、同調査で管理費・修繕費の滞納戸数の割合は、築9年を超えてくると2割以上、築29年を超えると3割以上となっています。
更に以下のような要因で修繕積立金が不足していくと考えられます。
修繕積立金は共用部に対する積立が原則であり、専有部の費用はほとんどの管理組合では含まれていません。ただし昨今のマンションで水漏れが多発しているのは、共用部よりも配管の肉厚が薄く細い専有部であり、専有部の配管保全をいかに行うかが喫緊の課題となっております。配管の保全費用は高額であり個別に行うよりも共用部と一括して修繕したほうが、費用も抑えられるということもあり、場合によっては規約を変更してでも修繕積立金で対応するケースが増えてきています。
築50年、60年と長期間にわたり住み続けるには、より長期的な「修繕」を行っていく必要があります。さらに社会の変化等により向上していく水準に合わせて「改良」をしていく必要があり、「改良」をせず「修繕」のみを行っていると、新たな入居者が入りづらくなりスラム化していく恐れがあります。第3回、第4回、第5回の大規模修繕では「修繕」でなく「改良」の費用がより必要となってくると考えられます。
国交省の平成28年度の調査で「連絡不通等または所在不明者が存在するマンション」は全体の13.6%を占め、平成30年度の調査でさらに、全体の2.2%のマンションで20%以上の住戸が連絡不通等または所在不明者が存在している状態となっています。高齢化・相続放棄等に伴い今後はますますこの割合は増えていくと予想されます。
「専有部の配管の修繕費用」と「改良」費用が増えていく中で、修繕積立金を徴収できない住戸が増えるリスクが高まり、居住している住民ひとりひとりの負担額が、更に増加することが予想されます。しかしながらマンションが高経年化するにつれ、住民の高齢化が進み、年金生活の方も増え、修繕積立金をこれ以上上げられないといった状況になる可能性もあり、貴重な修繕積立金をなるべく効果的に今のうちから活用してくことが望まれます。