2026年3月13日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

今回の投稿記事では、新法で実際に何が変わるのかという現実をお伝えした上で、どうすれば住民全員の合意を得て一斉更新を実現できるか、管理組合が今からできる具体的な取り組みをお話ししますので、ぜひ最後までご覧ください。
今回の改正では、「他の住民の部屋の配管などを修繕するよう求めることができる」ということが、明記されます。
ただ、相手が応じなければ、最終的には裁判で争うことになります。
新法は追い風ではあります。
でもいつでも強制できるという魔法の杖ではない。まずこの現実をご理解いただいた上で、話を進めていきます。
この表は、強制力の強いと思う順に並べており、強制力が強く働くのは、すでに漏水被害が出ているケースです。
今後を見据えて予防保全しておきたいというマンションは、ほとんどが△以下に当てはまるのではないでしょうか。
でも、強制できないから、絶望的と捉える必要はないと考えます。
そもそも裁判にまでなってしまうというのは好ましくないですし、「法律があるから従え」ではなく、「このマンションに住む全員にとってメリットがある」と理解してもらった上で一斉更新を進める。
それが最もスムーズで、後腐れのない形です。
だからこそ、「強制できるかどうか」という発想より、「どうすれば全員に納得してもらえるか」という発想で、一斉更新への準備を積み上げることが、実は最も大事な話になってきます。
管理会社の記録には「漏水あり・対応済み」とだけ書かれているケースが非常に多いです。
これでは、一斉更新が必要なんだという根拠にも、総会での説明材料にも、全くなりません。大事なのは、原因を正確に切り分けて記録することです。
給湯管のピンホールによる漏水なのか、給湯器の接続部なのか、住民の人的ミスなのか、給水管なのか、排水管なのか。この切り分けができていない記録は、配管の劣化を示す証拠にはなりません。
また、記録を残しておかないと、うっかり事故ばかりが起きていて、経年劣化によるトラブルは何も起きていないのに、「共用部の配管からの漏水が多発しているので一斉更新が必要です」と緊急性がないにも関わらず、あまりよくない管理会社から、提案されても、状況を把握できていないので、言われるがままに一斉更新するといったことも起きてしまいます。記録をしておけば、こういったことも防ぐことができます。
ここで少し、給湯管の話を掘り下げさせてください。
マンションの漏水事故で最も多いのは、共用部ではなく専有部の給湯管です。
給湯管に使われている銅管は、腐食によるもの等、他にもいろいろ漏水の原因はありますが、下の二つの原因も多いと言えます。
一つは「潰食(かいしょく)」と呼ばれる現象です。お湯の中の気泡が配管の曲がり角にぶつかり、少しずつ削られていきます。
気づいたときにはピンホールができている、という状態です。
もう一つは、継ぎ目のはんだ付けの劣化です。
職人が銅管と銅管をはんだ付けした箇所が劣化して、そこから水が滲み出るというケースです。
これらは、内視鏡や超音波測定である程度の状況をつかめる可能性はあります。
ただ、給湯管はコンクリートの中に埋まっていることが多く、埋まっていなくとも床や壁を壊さないとアクセスできないことがほとんどで、簡単に調べられません。
また、銅管にはビニールの被膜が巻かれていて、被膜をはがさないと外部から状態を把握することはできません。
そして給湯管は口径が細いため、内視鏡が奥まで十分に入っていかないといった問題や、配管内に炭酸カルシウム等のスケールが蓄積しやすくピンホールの状態を把握するのが難しいという問題もあります。
潰食の進み具合もはんだ付けの品質も、施工した職人の腕に大きく左右するため、場所ごとに全く状況が異なることが多いです。
ということで給湯管は「一部を調べることはできても、全体の状態を正確に把握することが構造的に難しい配管」と言えます。
だからこそ、診断結果よりも「漏水の記録の積み重ね」の方が、実際には強い根拠になるといえます。
ただし、漏水の記録はあくまで合意を得るための材料の一つです。
記録だけが頼りとすると、漏水事故がある程度発生しないと、一斉更新できないということになりますしね。
まだ漏水が発生していないマンションでも、この後お話しする②〜④の取り組みを進めることで、合意への道は十分に開けると考えます。
「みなさんのためです」「マンション全体のためです」という呼びかけでは、なかなか動いてもらえません。
人はどうしても、自分の損得で判断するものです。
そこで有効なのが、「動かないことでいくら損をするか」を、数字で見せることです。
漏水が繰り返されているマンションは、売却額が下がるのではありません。
そもそも売れなくなります。漏水の多発しているマンションをわざわざ買って住みたいという人は、あまりいませんよね。
不動産屋さんも、「あのマンションは漏水が多いからやめておいた方がいい」と購入検討者にアドバイスし始めるでしょうし、購入検討者自身が、漏水に敏感になっていて、重要事項説明書に載っていなくても、総会の議事録や理事会の議事録を見たら漏水が多そうかどうかの見分けが付けられます。
ということで、仮に売れたとしても、大幅な値引きを求められ、損失は数千万円規模になることも珍しくありません。
一方で、専有部の給湯管を全部屋で交換する費用は、専有部内の構造や内装復旧の仕様で大きく変わりますが1部屋あたり30万~90万円程度です。
「数十万の投資で、数千万円の損失を防げる」のです。
「急に老人ホームに行くことになったけど、売るに売れない」といったことも防げる可能性が高くなります。
この視点を提示することが、「自分には関係ない」と思っていた住民を動かす説得材料になります。
実は、漏水が一定の件数を超えると、管理組合がマンション全体の火災保険に入れなくなる、または更新を断られるという事態が実際に起きています。
保険に入れないマンションは、さらに資産価値が下がります。売るときの評価も一段と低くなる。これは②と連動した、ダブルのリスクです。
売るときも、住み続けるときも、一斉更新に同意しない人がいることで全員が損をする構図になっています。
これを数字と一緒に総会で全員に共有することが、合意を得るための大きな一歩になります。
まず、長期修繕計画の問題です。
多くのマンションで、専有部の配管交換費用は長期修繕計画に入っていません。
計画に載っていなければ、費用の根拠もなく、積立金の手当てもできません。
どこからこの費用を捻出するのか、共用部の配管、他の大規模修繕、耐震補強等、改修の優先順位を整理することが重要となります。
ただし、規約の改正には住民の4分の3以上の賛成が必要となり、かなり高いハードルです。
そして、ここが大事なポイントです。規約を変えなくても、一斉更新を円満に実現できているマンションは実際にたくさんあります。
配管保全センターのお客様でも、規約を変えずに全住戸の給湯管交換を問題なく進められたケースは多いです。
①〜④の取り組みを丁寧に積み上げ、住民一人ひとりに「やって当然だ」と納得してもらえれば、規約という形式的な枠組みがなくても合意は十分に得られます。
①~④により規約改正への合意も得やすくなるとも言えますが。
規約の整備に時間とエネルギーをかけることより、①〜④で住民の理解を深めることの方が先決だということです。
