勉強部屋

リフォーム時における専有部の配管取替えガイドライン 理事交代後も確実に運用される仕組み作りのコツ

2025年1月19日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い

マンションの理事をされている方なら、こんな経験はありませんか?

「以前の総会で、この件について何か決議があったような。でも具体的にどうしていいのかよくわからないな」

管理組合の理事長や理事が交代すると、引継ぎがうまくなされず、決議された内容がうやむやになり、マンション管理上での弊害となることが往々にしてあります。

特に専有部配管の取替えルールは、理事が交代しても必ず引き継いでいきたい案件といえます。

築25年以上のマンションでは、専有部配管からの漏水が増えてきて、築40年を超えると漏水事故が頻発してくるため、専有部の配管の取替えは資産価値に直結する重大な案件といえるからです。

そのため、管理組合では各区分所有者がリフォームを行う際には、漏水しやすい給水管や給湯管を所定の材質の配管に全て取り替えるようにガイドラインを作成するところが増えてきています。

とはいえ、理事会メンバーが変わったあと、徹底されなくなってしまうのでは、せっかくガイドラインを作成してもまったく意味がありませんね。

今回の投稿記事では、理事会メンバーが入れ替わっても、作成したガイドラインが確実に運用される仕組み作りのコツについてお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。

動画

 

専有部配管の現状と課題

まず、配管の現状についてお話しします。

築25年以上の分譲マンションでは、専有部の給湯管に銅管、給水管にライニング鋼管が使われていることが多いです。これらは経年劣化により漏水のリスクが高まります。

マンションの漏水事故のほとんどが専有部の配管が原因となっています。

こうした問題を解決すべく、多くの管理組合さんでは、専有部配管の一斉更新を管理組合主導で実施しようと試みていますが、住民の理解を得て全世帯で実施されるには、かなりハードルが高いというのが現状です。

では、なぜ管理組合による一斉更新が難しいのでしょうか。

主な理由は3つです。

1つ目は、専有部は管理組合の管轄外という点。

2つ目は、修繕積立金が使えない場合が多いこと。

3つ目は、長期修繕計画に組み込まれていないということです。

その解決策として、配管保全センターでは、「リフォーム時の配管交換」をお勧めしています。

各区分所有者が専有部である自宅のリフォームをする際であれば、床などをはがしますから低コストで配管の取替えができるからです。

これを各戸で実施していただくためには、管理組合で「リフォーム時における専有部の配管の取替えのガイドライン」を作成することが必要になるといえます。

リフォーム時の配管取替ガイドラインの重要性

管理組合で作成するガイドラインには、以下の3つを必ず盛り込むことを推奨しています。

1つ目は、給水管についてです。水道メーター以降の専有部の給水管のライニング鋼管を樹脂管に交換することです。

2つ目は、給湯管です。給湯器以降の専有部の給湯管の銅管を同じく樹脂管に交換します。

3つ目は、排水管です。立管との接続部から1m以内の専有部の排水管が鉄管であれば、不燃の材質に交換することです。

なお、専有部の配管が立管から1m以上先も鉄管であれば、そこも全て不燃の材質に交換します。

ガイドラインを作成するメリット

これらを踏まえて、「リフォーム時における専有部の配管取替えのガイドライン」を作成することで、どんなメリットがあるでしょうか。

区分所有者にとってのメリット

「リフォーム時における専有部の配管取替えのガイドライン」があることで、区分所有者にとっては、以下のようなメリットがあります。

・パイプシャフト内の配管は取り替えてはいけないといった勘違いや、もしくは立管の1m以内の配管も取替えなくてはいけないといったことを知らずに、取替え残しをすることがなくなります。

・仮に将来的に管理組合主導で、強制的に一斉更新をすることになっても、リフォーム時に既に配管を割安な形で取替え済みの区分所有者は、一斉更新の際の費用を追加で負担する必要がありません

・その結果、出費を極力抑えて資産価値を維持することができます

管理組合にとってのメリット

管理組合にとっては、

・リフォームで多くの区分所有者が配管を取替えてくれるので、修繕積立金からの拠出を最低限に抑えることができます

・その結果、出費を極力抑えて資産価値を維持することができます

・また、漏水の頻度が少なくなり、「漏水マンション」という烙印から逃れ、スラム化を回避することができます

理事交代後も確実に運用される仕組み作りのコツ

ここからが本日の本題です。どうすれば理事が変わっても、このガイドラインを確実に運用できるのでしょうか。

具体的な仕組み作りのコツをご紹介します。

1. リフォーム申請書の活用

リフォームを行う区分所有者が管理組合の理事長に提出するリフォーム申請書にガイドラインの内容を明確に記載し、チェックリストを設けます。

例えば「水道メーター以降の給水管のライニング鋼管を全て架橋ポリエチレン管に交換」という項目に、チェックボックスを付けます。

これにより、理事長は技術的な知識がなくても、簡単に確認ができますし、リフォームを実施する施工会社も、その部分も更新する必要があると、更新範囲を確実に認識できます。

なお、リフォーム申請書を変更するにあたっては、総会での普通決議で十分です。特別決議は必要ありません。

ただ、総会でいきなり議案にあげても、ほとんどの住民にとっては、なじみのないことですので、議案書を読んだだけで理解するのは、かなり難しいと思われます。

申請書を変更する議案を上程する総会の前に、きちんと、「こういうふうにリフォーム申請書を変更します」という住民説明会を開催することをお勧めします。

2. 管理会社との連携

管理会社の技術担当者もリフォーム申請のチェックを行うこととします。

これにより、理事長の不安と作業上の負担が大幅に軽減されます。

よって、リフォーム申請書には、管理会社の技術担当者もチェックを入れるチェック欄を設けておくことをお勧めします。

ちなみに「申請書をどうやって作成していいのかわからない」といった方は、配管保全センターで申請書の作成支援サービスも行っていますので、お問合せください。

周知徹底のために

通常の管理組合の管理規約では、リフォームを行う際には理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなくてはいけないと記載されています。

ただ、せっかくリフォーム申請書の変更を総会で可決させたとしても、ルールを守らず、理事長に申請せずに勝手にリフォームしてしまうケースも少なくありません。

全ての住民にきちんとルールを守ってもらうためには、これまでお話ししてきたように以下のことを周知していくことが必要といえます。

1. 経年劣化による漏水は専有部からが最も多く、漏水してからでは多大な費用が掛かるため、早めの配管取替えが必要であること

2. 専有部の配管取替えは管理組合の管轄外であるため、基本的には修繕積立金が使えないこと

3. リフォーム時に各自で配管取替えも実施することで割安で取替えられること

4. 適切で結果的に割安な配管取替えをするためにリフォーム時にはリフォーム申請書を提出すること

5. 配管の取替えで支払う費用よりも維持できる資産価値の金額のほうが高いこと

常日頃から、専有部の配管取替えの必要性とリフォーム申請の提出を周知徹底することが重要となります。

周知徹底のためには、定例総会で、ルールを説明して質疑応答の時間を設けたり、定期的に発行している会報誌にもルールや申請の手続き、違反した場合の罰則などを毎回掲載するといった発信もとても重要です。

また、1階の掲示板にリフォーム申請のことを掲載することで、理事メンバーが入れ替わったとしても、住民の意識が高くなり徹底されていくことに繋がります。

なお、洗面台だけであったり、キッチンだけ交換して床や壁は剥がさないような場合も、このルールに従って、全ての配管を取替えるために床や壁も剥がさなくてはいけないのかといったことから、「そんな余計な工事費用なんて用意していないよ」ともめ事に発展する可能性もあり得ます。

管理組合全体で考えると、漏水しやすい専有部配管は、どこかのタイミングで樹脂管に全世帯取り替えておいた方が、マンションとしても、各世帯にとっても資産価値の維持につながり、取替えで支払う費用よりも維持できる資産価値が上回るとも考えられます。

このあたりは、例えば、今は管理組合としても修繕積立金の余力がないが、10年後には、管理組合主導で、一斉に全世帯の配管を取替えることとし、それまでに各世帯でリフォーム時に取り替えておいた方が、各区分所有者にとっても得になるといったルールを作って総会で可決させていくという考え方もあります。

このあたりは、また、改めて別の投稿記事を作成してお話いたします。

いかがでしたでしょうか? 本日の内容が、皆さんのマンション管理や資産価値の維持に少しでも役立てていただければ幸いです。

とはいえ、実際に配管の保全方針を決め、理事会での決議を経て、住民の皆さまに周知徹底していくとなると、さまざまな課題や疑問が出てくるかもしれません。

「どこから手をつければよいのか分からない」「住民全員を納得させるのは難しいのでは?』といったお悩みもあるでしょう。

そこで、配管保全センターでは、管理組合の皆さまと一緒に最適な配管の保全方針を策定し、住民の皆さまに納得していただける形での説明会のサポートも行っています。

そして、さらに重要なのが、具体的な専有部配管の取替え工事についても、妥当な金額での施工をご提案し、実行までを一貫してサポートできる体制を整えています。

専有部配管の取替え工事は、住民一人ひとりの理解と協力が不可欠です。

私たちは、中立的な立場で管理組合の皆さまと住民の皆さま双方に寄り添い、配管工事をトラブルなく進めるためのサポートを徹底いたします。

「うちのマンションにもこの仕組みを取り入れたい』「具体的にどう進めるべきか相談したい」とお考えの方は、ぜひお気軽に配管保全センターまでご連絡ください。

関連キーワード

キーワードから関連記事をご覧になれます。

関連記事

勉強部屋動画記事一覧をみる