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国交省の給排水設備工事への補助金制度について

2023年1月26日
この記事のカテゴリー : 修繕積立金・専有部の取り扱い 勉強部屋おすすめ記事

マンションの給排水設備の工事を行う際に、公的機関からの補助金を活用出来たら嬉しいですよね。実は、2020年度から5年間の予定で、国交省管轄で「マンションストック長寿命化等モデル事業」という補助金制度があるのをご存知でしょうか。

審査が通れば、給排水設備工事や、エレベータ設備、配電設備といった各種改修工事の最大1/3の費用補助が得られる可能性があります。

今回の投稿記事では、2020年度から2022年までの過去3年間で、実際に採択された給排水設備関連の事例を簡単にご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。なお、正式名称は長いので、この投稿記事では、「長寿命化モデル事業」と呼びますのでご了承ください。

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長寿命化モデル事業の補助金制度の概要

それでは、まず、長寿命化モデル事業の補助金制度の概要について、簡単にご紹介します。

詳細については国交省のホームページに掲載されていますので、こちらをご覧ください。概要欄にリンクを貼っておきます。

ホームページの公募概要の冒頭に、長寿命化モデル事業についての概要が下のように描かれています。

「改修や建替えによるマンションの円滑な再生を図る取組を促進するため、 老朽化マンションの再生検討から長寿命化に資する改修や建替え等にあたって、「政策目的に適合した取組であって、独自性・創意工夫、合理性、合意形成、工程計画、維持管理の点で総合的に優れた先導的な再生プロジェクト」を公募し、国が事業の実施に要する費用の一部を補助することにより、 優良事例・ノウハウを収集し、マンションの再生に向けた全国への普及展開を図ります。」

ざっくりと言えば、マンションの長寿命化の改修工事で、独創性といった点で総合的に先導的な事例を集めて、そのノウハウを他の全国のマンションに普及展開していくのが目的で、公募した中で先導的と評価された事例に、先導的と認められる部分の工事費の1/3が補助されるということです。

工事そのものではなく、計画段階や、建替えの事例でも評価対象となっています。

2020年度から2022年度までの3年が経過し、2023年度、2024年度も、予算がつけば実施される予定のようです。

2023年度も実施されるかどうかは、例年だと3月末あたり、少なくとも4月にはわかる予定のようで、予算としては、おそらく17億円程度と思われます。

補助金を得るには、年間3回行われる評価委員会で、先導的であると認められる必要があります。

また、工事費用全額に対して、1/3の補助が出るのではなく、先導的と認められた部分の費用のみが補助対象となっています。

採択された各事例で、全体の工事費の何割程度が、「先導的」だと評価されたのかは現時点では非公開ということで、応募して評価委員会に評価されるまでは、何割認められるかはわからないとのことです。

関係者に確認したところによると、給排水設備関連の採択事例では最大でも工事費の4割程度が補助対象となるようです。通常は工事費の2割から3割が補助対象というのが目安と思われます。

仮に全体の工事費用が1億円として、先導的と認められた部分が3割とすると3千万の1/3の約1000万円が補助されるので、全体の工事費用の1割を節約できると考えられます。何割認められるかは、あくまで、評価委員会の判断ですが。

なお、旧耐震マンションの場合は、耐震診断の結果次第で、今回の補助金をもらうには、耐震工事と合わせて実施する必要があったりと、諸条件がありますので、このあたりも国交省のホームページの募集要領をご確認ください。

過去3年間の給排水設備関連の改修工事での採択事例

それでは、2020年度から2022年度までの過去3年間の給排水設備関連の改修工事での採択事例としては、どのようなものがあったのかを簡単にご紹介します。

詳しい内容は、やはり国交省のホームページに掲載されていますので、そちらをご覧ください。

ご参考までに、配管保全センターでは、今回ご紹介するような内容の工事や、合意形成の仕方は、正直、いつも提案させていただいているような内容です。お客様からは「配管保全センターさんの見積もりは、他の施工業者と比較して、2~3割は割安だった」と教えていただくことが多いので、今回の国交省の補助制度よりも、場合によっては配管保全センターに見積もりを依頼していただくほうが、工事費用を抑えられる可能性もあると考えております。

いずれにしろ、初年度の2020年度から2022年度までの3年間で補助対象として認められた事例についてこれからお話します。

まず、2020年度は、2件の事例が補助対象として認められました。

2020年度

年度築年数管理組合
戸数
評価概要
2020年度第1回築約50年210戸★排水管立管を更新工事と更生工事の合わせ技で再生
第2回築約40年90戸★管種の異なる共用部排水管を樹脂管に一斉に更新
★大規模修繕の実施時期との調整も行った
第3回該当なし

第1回の採択事例は、排水管の立管の再生を更新工事と更生工事の合わせ技で実施したことが評価されました。

第2回目の採択事例は、管種の異なる共用部排水管を樹脂管に一斉に更新し、大規模修繕の実施時期との調整も行ったことが評価されました。

第3回目は評価できる該当事例がないという結果となりました。

2021年度

年度築年数管理組合
戸数
評価概要
2021年度第1回該当なし
第2回築約40年807戸★スラブ下配管の解消と専有部給排水管の全面更新
★工事中の騒音・振動・粉塵の低減
★UB化に向けた排水枝管口の事前設置等の将来の維持管理に向けた工夫
築約30年419戸★専有部を含む給排水管・給湯管の同時オール樹脂化、直結増圧化
★合意形成のためのきめ細かい対応
築約30年36戸★床スラブに埋設された専有部分の給水管・給湯管管路を天井配管に変更する改修工事
★更生工事を実施済みの給水管は先行配管を天井裏に敷設し点検口を設けて将来のニーズに対応
第3回築約25年298戸★台所排水管立管の樹脂管への更新と点検口の設置
★合意形成に向けた積極的な取り組み
★腐食状況を記録し同様の課題を抱えるマンションに情報提供

次に2021年度の採択事例を見てみましょう。

第1回の評価では、給排水設備系の案件では採択されませんでした。

第2回目では、3件採択されました。

1件目は、スラブ下配管を解消し、専有部の給排水管を全面更新し、工事中の騒音・振動・粉塵の低減の工夫をしたこと。また、ユニットバス化に向けて排水枝管口の事前設置といった将来の維持管理に向けた工夫が評価されました。

2件目は、専有部を含む給排水管・給湯管を同時に全て樹脂化し、直結増圧化も行い、また、合意形成のためのきめ細かい対応を行ったことが評価されました。

3件目は、床スラブに埋設された専有部分の給水・給湯管を天井配管に変更する改修工事を行い、更生工事を既に実施した給水管に対しては天井裏に先行して配管を敷設し点検口を設けて将来のニーズに対応したことが評価されました。

第3回目では、台所の排水管立管の樹脂管への更新と点検口を設置し、合意形成に向けた積極的な取り組みを行い、また、腐食状況を記録して同様の課題を抱えるマンションに情報提供したことが評価されました。

2022年度

年度築年数管理組合
戸数
評価概要
2022年度第1回築約35年356戸★共用部給水・排水、専有部の給水・給湯・排水管の一斉更新
★専有部給水・給湯管はスラブに埋設されているので排水管経路に沿わせて新経路で配管
★専有部更新済みの住戸には一定額を補償
第2回築約50年688戸★共用部分・専有部分給排水管の樹脂管への一体改修
★スラブ下配管のスラブ上化
★水廻りに露出している排水立管の外部化
★給水方式の変更
★住戸内洗濯機パンの設置
★洗濯機パンの設置により狭くなる収納スペースについては、オプション工事で設置可能な収納ユニットをあわせて提案
★各戸のユニットバス化の促進
築約40年175戸★共用給排水管を樹脂管に更新するにあたり1階住戸床スラブ下ピット内の専用単独排水管が専有部分と位置付けられていたが、管理規約を改正の上、当該部分工事を共用部分の工事とした

次に、2022年度の採択事例を見てみましょう。

第1回目は、共用部給水・排水と専有部の給水・給湯・排水管の一斉更新を実施し、専有部給水・給湯管はスラブに埋設されていたので排水管経路に沿わせて新経路で配管したこと、それと専有部更新済みの住戸には一定額を補償したことが評価されました。

第2回目は2件採択されました。

1件目は、共用部分・専有部分給排水管の樹脂管への一体改修を行い、スラブ下配管のスラブ上化、それから水廻りに露出している排水立管を外部化し、給水方式の変更も行いました。また、住戸内洗濯機パンの設置と、洗濯機パンの設置により狭くなる収納スペースについては、オプション工事で設置可能な収納ユニットをあわせて提案したこと、それと各戸のユニットバス化を促進したことが評価されました。

2件目は、共用給排水管を樹脂管に更新するにあたって1階住戸床スラブ下ピット内の専用単独排水管が専有部分と位置付けられていたため、管理規約を改正し、この部分の工事を共用部分の工事としたことが評価されました。

年度築年数管理組合
戸数
評価概要
2022年度第3回築約40年300戸★地中埋設部を含む共用部分給水管の樹脂管への更新
★給水方式の変更
★共用給水立管の更新に伴い、その近傍の雑排水立管(洗濯系統)及び横枝管も同時に更新
★管理組合が共用排水立管を改修する際に専有部分の横枝管の一部も含め改修することについて管理規約を改正済
★過去2回の給排水管調査で劣化等の状況を確認し、説明会等も複数回実施
築約50年210戸★住棟 1 階床下排水横引き管の更新・更生工事に際して、令和2年度採択事業で取り付けた共用排水立管のメンテナンス用接続継手を活用し仮設排水管に接続し外部排水桝等に直接放流することで、2階以上の給排水制限時間を短縮
★1階各戸に仮設便器と仮設排水管を設置し、工事期間中のトイレ使用の負担を軽減

第3回目も2件採択されました。

1件目は、地中埋設部を含む共用部分給水管の樹脂管への更新、それと給水方式の変更を行いました。また共用給水立管の更新に伴って、その近くの洗濯系統の雑排水立管と横枝管も同時に更新しました。管理組合が共用排水立管を改修する際に専有部分の横枝管の一部も含め改修することについて管理規約を改正済であったこと、過去2回の給排水管調査で劣化等の状況を確認し、説明会等も複数回実施したことが評価されました。

2件目は、 1 階床下排水横引き管の更新・更生工事を行うにあたり、以前取り付けていた共用排水立管のメンテナンス用の接続継手を活用して仮設排水管に接続し外部の排水桝に直接放流することで、2階以上の給排水制限時間を短縮したこと、また、1階各戸に仮設便器と仮設排水管を設置し、工事期間中のトイレ使用の負担を軽減したことが評価されました。

いかがでしたでしょうか、参考になりましたでしょうか。

今回ご紹介した長寿命化モデルの申請を配管保全センターでも実施することは可能ですが、申請にはそれなりの労力と時間が必要であり、年間で採用されるのは全国で数件です。配管保全センターでは、常に、今回ご紹介させていただいたような内容をご提案させていただいており、見積もり額も他社よりも安かったというお声をいただくことが多いので、ご興味のある方は、配管保全センターのホームページのメールや電話にてお気軽にご連絡ください。

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